2010年08月29日
 借りぐらしのアリエッティ
Posted by ag at 23:52/ カテゴリー: MOVIE_Database

借りぐらしのアリエッティ監督:米林宏昌
声:志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子、三浦友和、樹木希林、藤原竜也
制作:スタジオジブリ、日本テレビ、電通、博報堂DYMP、ディズニー、三菱商事、東宝、ワイルドバンチ/2010
URL:http://www.karigurashi.jp/index.html
場所:ワーナー・マイカル・シネマズ板橋

先日、青空文庫の富田さんらとの雑談で、宮崎駿と喧嘩別れするような気骨を持つ人間でなければ平均点以上の映画を作る事は出来ない、というような話題になった。確かに、押井守は口を開けば宮崎批判ばかりだし、細田守も諸事情(表面上は細田の人望の無さから人員が確保出来なかった、うんぬん、の話しだけれども、、、)から『ハウルの動く城』を降板していたりする。宮崎駿という巨人の傘の下にいて映画制作をするのなら、その作品が宮崎駿の亜流の域を出る事はほとんど不可能だ。そして、亜流作品はあくまでも亜流で、本家を凌ぐ事はあり得ない。本当に自分の色を出す映画を作りたいのなら、巨人の傘の下から出て行かなければならない。押井守も細田守も、宮崎駿に敬意を払いつつも、巨人の傘の下から出て行ったからこそ、巨匠と肩を並べられる作品を作ることが出来たのではないかとおもう。

そんな傘の下で作られた『借りぐらしのアリエッティ』は、ジブリ印の安心保証作品ではあるけれども、まあ、亜流です。米林宏昌監督の色はどこにあるんだろう? まったく宮崎駿の真似にしか見えなかった。悪い作品ではないけれども、どこかに、ほんのちょっとでも、監督の色を出して欲しかった。

 2010年08月27日
 ぼくのエリ 200歳の少女
Posted by ag at 23:51/ カテゴリー: MOVIE_Database

ぼくのエリ 200歳の少女監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー
原題:Låt den rätte komma in
制作:スウェーデン/2008
URL:http://www.bokueli.com/
場所:銀座テアトルシネマ

長い間、クリストファー・リーが演じたような、髪をオールバックにして牙があってマントを纏っているようなイメージのドラキュラ映画をそのままヴァンパイア映画であると単純に考えていた。ところがそこに、ニール・ジョーダン監督の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)が公開された。アン・ライスの「夜明けのヴァンパイア」を原作にした、それこそホンモノのヴァンパイア映画だった。ああ、なるほど、ドラキュラ=ヴァンパイアではないんだとそこで理解した。ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」は、ヴァンパイアの一形態に過ぎないんだとやっと理解した。それからは、そのホンモノのヴァンパイア映画をとりわけ意識するようになった。でも、その後の公開映画を観ても、『ブレイド』や『アンダーワールド』のようなアクション映画ばかりで、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』ような永遠の“生”に生き疲れたヴァンパイアたちの耽美で退廃的な映画はなかなか出て来ない。まあ、『トワイライト』あたりが許せる範囲かなあ。

この『ぼくのエリ 200歳の少女』は、タイトルが示す通り、エリという名の12歳の少女のかたちをしたヴァンパイアが出て来るホンモノのヴァンパイア映画だった。舞台がスウェーデンなので、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』とはまた違った形態のヴァンパイア映画ではあるけれども、北欧の冬の透明さ、静けさが映像に生かされていて、色の薄い景色と原色である人間の血の対比や、寒さのため受動的な人間に対して人間の血を求める能動的なヴァンパイアの対比も映像としてメリハリが利いていて、ヴァンパイア映画の怖さがよく出ていた。映像的にはカナダのアトム・エゴヤンの映画をちょっと思い出したり。ただ、エリを演じるリーナ・レアンデションが、もうちょっとスウェーデン系というか、ゲルマン系の透き通った顔立ちなら良かったのに。たぶん、スラブかラテン、またはロマがちょっと入ってるんだよね。

ドラキュラ=ヴァンパイアとおもっていた、と言ったけど、考えてみたら萩尾望都の「ポーの一族」があるわけだから、たぶん意識のどこかではそんなことはなかったとおもう。「ポーの一族」が映画化されていたらもっとはっきり、ドラキュラ=ヴァンパイアとはおもわなかったんだろうけど。今からでも遅くないから映画化すればいいのに。小野不由美の「屍鬼」あたりも。

 2010年08月20日
 インセプション(2階層目)
Posted by ag at 23:36/ カテゴリー: MOVIE_Database

インセプション監督:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ、トム・ハーディ、ディリープ・ラオ、キリアン・マーフィー、トム・ベレンジャー、ピート・ポスルスウェイト、ルーカス・ハース、タルラ・ライリー、マイケル・ケイン
原題:Inception
制作:アメリカ/2010
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/
場所:ワーナー・マイカル・シネマズ板橋

前回観た時にところどころ眠ってしまったおかげで、ストーリーが不明瞭になってしまった部分を確認するためにもう一度観た。そうしたら、眠らないできっちりと観れば、これはすこぶる面白い映画だった。1回観ただけでは難解で取っつきにくく感じる人もいるかもしれないけど、じっくりと理解して行けば絶対に面白い映画になるとおもう。

以下、わからなくなってしまった部分の解題。ネタバレ。

・4階層のうち、最下層を除いた3階層の“夢”の設計をしているのはアリアドネ(エレン・ペイジ)。最下層の“夢”の設計はコブ(レオナルド・ディカプリオ)とモル(マリオン・コティヤール)なのかどうか?
・しかし設計とは別に、実際に“夢”を見ている主体は別。第1階層の“夢”はユスフ( ディリープ・ラオ)。第2階層の“夢”はアーサー(ジョゼフ・ ゴードン=レヴィット)。第3階層の“夢”はイームス(トム・ハーディー)。最下層の“夢”はコブ(レオナルド・ディカプリオ)。
・ただ、最下層の“夢”は、映画の中で言う“虚無”なのかもしれない。“虚無”というものが何なのかはよくわからないけど。ここに老いたサイトー(渡辺謙)がいる。
・最下層の“夢”にロバートが捕らわれていたのは、ロバートが“虚無”に陥ったから?
・実際に”夢”を見ている人は、その下の階層には行かない。残って、眠っている人をキックする役割を担う。
・モルがそれぞれの“夢”に登場するのは、共有しているコブの深層心理が他人の“夢”に影響を及ぼしているため。
・それ以前にこの映画は、サイトー(渡辺謙)の依頼のもと、ロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィー)に“植え付け(インセプション)”をする映画というよりも、コブ自身に“植え付け(インセプション)”をしてモルから解放させられることが出来るかを描いている。
・なので、ロバートに何を植え付け(インセプション)たかはあまり重要じゃない。
・夢を共有させるあのアタッシュケースの装置のしくみは映画の中で多くは語られない。まあ、それはいいか。

以上、重要なのは“虚無”であることがわかってきたが、その“虚無”の理解は2回観ただけでは難しい。もう一度、観るか。

 2010年08月11日
 広島国際アニメーションフェスティバル 最終日
Posted by ag at 23:56/ カテゴリー: MOVIE

広島国際アニメーションフェスティバル
広島国際アニメーションフェスティバルの最終日。グランプリは、おおかたの予想通り、ノルウェーのアニータ・キリ監督の『アングリー・マン』だった。この家庭内のDVを描いた作品のグランプリ受賞が象徴するように、全体的に暗く、閉塞感がただよう作品が多かった。短編アニメーションの制作なんて、景気が良くなければお金が回ってこない末端の文化事業なので、おそらくそのまま時勢が作品に反映されるんじゃないかと勝手に推測したりしてしまった。そんな中で、中国や台湾や韓国の短編アニメの躍進が嬉しい。特に韓国は、劇場映画の勢いそのまま、短編アニメにも波及している。それも若い女性の監督ばかり! 短編アニメの監督の女性比率は驚くほど高い。

【グランプリ】
アングリー・マン Angry Man(アニータ・キリ:ノルウェー)

【ヒロシマ賞】
ダイバーズ・イン・ザ・レイン Divers In The Rain(プリット・ピャルン、オルガ・ピャルン:エストニア)

【デビュー賞】
ファミリー・ポートレイト A Family Portrait(ジョセフ・ピアース:イギリス)

【木下蓮三賞】
ビデオゲーム・ア・ループ・エクスペリメント Videogame a Loop Experiment(ドナト・サンソーネ:イタリア)

【観客賞】
ジ・エンプロイメント The Employment(サンティアゴ・ブーグラッソ:アルゼンチン)

 2010年08月10日
 広島国際アニメーションフェスティバル 第3日目
Posted by ag at 23:52/ カテゴリー: MOVIE

広島国際アニメーションフェスティバルとしては4日目。自分にとっては3日目。今日はまず、オランダのヘリット・ファン・ダイクの特集上映&トークを観た。ダイクは鉛筆によるドローイング手法のアニメーション作家。13本上映された中で特に、歴史上の人物や映画スター、カトゥーンのキャラクターが、画面の中をくるくると回るだけの『パサドゥ』、1930年代の実在のギャングをモチーフにして、ハンフリー・ボガートやジェームズ・キャグニーの出て来る『ザ・ラスト・ワーズ・オブ・ダッチ・シュルツ』が面白かった。そして『パサドゥ』にはミッキー・マウスが堂々と登場する。案の定、上映後の観客からの監督への質問に、著作権はクリアしているのか? の問いが。それに対して監督は、権利クリアの申請はしていない、アメリカの象徴としてのミッキー・マウスを描く事になんら問題はない、というようなニュアンスの解答。

夜のコンペ作品上映は、やっと満足できるラインナップ。自信を持って、今日の良かった作品。

・ダニー・ボーイ Danny Boy(マレック・スクロベツキ:スイス、ポーランド)
顔のある人間は、もうこの世では特異な存在。というようなシニカルなところが良い。

・ウルヴズ Wolves(ラファエル・ソメルハルダー:イギリス、スイス)
アゥ〜〜〜〜〜。

・ジ・エンプロイメント The Employment(サンティアゴ・ブーグラッソ:アルゼンチン)
人口に対して仕事が不足すると、こうならざるを得ない。怖い、怖い、シニカルなアニメ。

 2010年08月09日
 広島国際アニメーションフェスティバル 第2日目
Posted by ag at 23:59/ カテゴリー: MOVIE

広島国際アニメーションフェスティバルとしては3日目。自分にとっては2日目。やっぱり今年のコンペ作品は低調だった。2年前のコンペ作品には、フランスの『オクタポディ』やオーストラリアの『グローバル・ウォーミング』やイギリスの『ジス・ウェイ・アップ』などの、テンポが良く、クールで、洒落た作品が幾つか含まれていた。イメージ重視の作品や重いテーマの作品が多い中、それらのわかりやすい作品たちは一つの救いだった。もちろん、そんな軽い作品ばかりを求めていやしない。芸術志向の作品ばかりに傾きすぎず、エンターテインメントの作品ばかりに傾きすぎないようなバランスがどうしても大切なんじゃないかとおもう。今回はそのバランスが大きく傾いている。イメージ重視の芸術性が強い作品ばかりに集中してしまっている。

で、またまた苦し紛れに選んだ今日の良かった作品。

・引き出しと鳥 The Drawer and The Crow(フレデリック・トロンブレー:カナダ)
やはり人形系のアニメーションに、ぐぐっと、惹きつけられてしまう。もうこれはしょうがない。自分の嗜好です。

・アングリー・マン Angry Man(アニータ・キリ:ノルウェー)
今回のコンペ作品には家族の重いストーリーが多い。その中でも良くできた作品。

・ダスト・キッド Dust Kid(ユミ・ジョン:韓国)
ちょっと日本のシュールなギャグ漫画に通ずる作品。今回のコンペ作品に東アジアの作品多し。

・ラテラリウス Laterarius(マリナ・ロセット:スイス)
エンディングを、スパッとばっさり切り捨てて終わる作品には2種類ある。説明不足を感じて観終る作品と、痛快さを感じて観終わる作品。この作品は後者。でも男が可哀想。

 2010年08月08日
 広島国際アニメーションフェスティバル 第1日目
Posted by ag at 23:54/ カテゴリー: MOVIE

広島国際アニメーションフェスティバルとしては2日目。自分にとっては1日目。2年前と同じように「コンピュータアニメーションメイキングワールド教室」(名称は若干変更)というものを手伝ってます。今日は日曜日も手伝って、ひきりなしに人が来て、朝の3時起きの身にとっては辛かった。これじゃ、夜のコンペティション作品の上映で寝てしまうんじゃないかと心配だったけど、かろうじてセーフ。でも、どっぷりと暗い作品が多くて心身には応えた。中に1本くらい能天気なアメリカのアニメーションが欲かったなあ。

で、苦し紛れに選んだ今日の良かった作品。

・ミックスド・バッグ Mixed Bag(イザベル・ファヴェ:スイス)
ストーリーがはっきりしていて笑える作品は観客のお気に入り。

・冬至 The Winter Solstice(シー・チェン、シー・アン:中国)
ストーリーが良くわからなかったけどイメージが素晴らしい。

・ザ・ツイン・ガールズ・オブ・サンセット・ストリート The Twin Girls of Sunset Street(マルク・リバ、アナ・ソラナス:スペイン)
暗くて残酷なパペット(CGかな?)アニメーション。今日のコンペの象徴的作品。でもここまで極端なら逆に笑える。

・二羽のヤマウズラ Two Partidges(カトリーヌ・ビュッファ、ジャン=ルック・グレコ:フランス)
映画字幕の文字が小さくて、早くて、読めなかったけど、今日は笑える作品が貴重だった。

 2010年08月05日
 インセプション
Posted by ag at 23:46/ カテゴリー: MOVIE_Database

インセプション監督:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ、トム・ハーディ、ディリープ・ラオ、キリアン・マーフィー、トム・ベレンジャー、ピート・ポスルスウェイト、ルーカス・ハース、タルラ・ライリー、マイケル・ケイン
原題:Inception
制作:アメリカ/2010
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/
場所:ワーナー・マイカル・シネマズ板橋

クリストファー・ノーラン監督の『メメント』を観た時、この長い映画史の中で、きっと誰かは考えたであろうコンセプト(ストーリーを終わりから始まりへ、時系列を逆向きにストーリが進む)の映画を、でも誰もがそんなのものを映像化しても面白い映画を作ることは無理だろうと判断してしまった内容の映画化を、果敢にトライしているクリストファー・ノーランという映画監督にえらく共感してしまった。そんな実験映画のような内容の映画にも、しっかりとしたエンターテインメントを持たせている技能の高さにえらく感動してしまった。

その『メメント』から10年、大ヒットの『ダークナイト』を挟んでの今回の『インセプション』。メジャーな監督になってしまったので、もう『メメント』の時のような気概は残っていないのかと思いきや、お金をかけた大掛かりな映画にはなっているけれど、充分にクリストファー・ノーランの映画だった。ある特定の人の“夢”を複数人数で共有させてて、さらにその“夢”の中でまた特定の“夢”を共有させる。これを繰り返して4階層まで潜るのだ。まあ、よくもこんな映画の制作にゴーを出せたものだ。

ただ、こんな複雑な映画なのに、ここ数日の熱帯夜にやられて少し睡眠不足気味で映画に望んでしまったために、途中、うとうと、してしまった。この映画のストーリー自体が“夢”の話しなので、それを引きずりながら実際に自分の“夢”の世界に入り込みそうになってしまった。つまり、まるで映画の中の“夢”を実際に自分の“夢”の中でも共有しているような感覚に陥りそうになってしまったのだ。映画と同様に、エディット・ピアフの『水に流して(Non, je ne regrette rien)』が流れると同時にハッと我に返る始末。これは一見、すごいじゃん、映画とシンクロしてるじゃん、と捉えることもできるけど、いやいや、ストーリーの細かい部分がちょっとわからなくなってしまった。いや、しっかりと起きて観てもわからないのかもしれないけれど。


以下、わからなくなってしまった部分。ネタバレ。

・夢を共有させるあのアタッシュケースの装置のしくみは何?
・夢を設計するのは誰にでもできるのか? それとも特殊な能力がいる?
・各階層の“夢”はいったい誰の“夢”が主体? すべては夢の「設計士」アリアドネ(エレン・ペイジ)の“夢”?
・でもモル(マリオン・コティヤール)が自殺するトラウマに支配されているわけだからコブ(レオナルド・ディカプリオ)の“夢”が主体でしょう。
・一番最下層の“夢”に行った時に、ロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィー)が捕らわれている意味がわからん。
・で、結局、ロバート・フィッシャーに何を植え付け(インセプション)たのか?
・映画の冒頭と最後に出てくる、年老いたサイトー(渡辺謙)にコブが会いに行く意味もわからない。

以上のことは、映画の最後のシーンに出て来るトーテムの独楽が倒れなければ説明はいらないのかもしれない。全部が夢の話しなのだから。でも、倒れるのであれば、説明して欲しい。倒れるのか倒れないのかは解答を示していないので、う〜ん、どう考えればいいのか。

 2010年07月30日
 ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
Posted by ag at 23:28/ カテゴリー: MOVIE_Database

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い監督:トッド・フィリップス
出演:ブラッドレイ・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ジャスティン・バーサ、ヘザー・グラハム、サーシャ・バレス、ジェフリー・タンバー、レイチェル・ハリス、ケン・チョン、マイク・エップス、マイク・タイソン
原題:The Hangover
制作:アメリカ/2009
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/thehangover/
場所:シネセゾン渋谷

結婚式を控えて独身最後の夜を男友達と馬鹿騒ぎをする、と言うこの映画の設定を聞いてすぐに思い出したのが、ちょっと設定が違う(結婚式を控えて、ではなくて、ベトナム徴兵を控えて、だった)けど、ケヴィン・レイノルズ監督の『ファンダンゴ』(1985)だった。でも、その『ファンダンゴ』よりも、自由奔放に生きて来た時代への郷愁、そして決別、新たな境遇への決意、と言った映画としての深みを持たせるためのストーリー仕立てが何もないのが却って良かった。なぜだろう? 普段なら、軽すぎる、奥行きがない、なんて文句をたれる映画だろうに。あまりにも下品で、馬鹿馬鹿しすぎるので、不満が出るような映画としての評価ラインを突き抜けてしまったのかな。

そうだ、どちらかと言うと、ジョン・ランディス監督の『アニマル・ハウス』(1978)に近い、この馬鹿馬鹿しさは。その『アニマル・ハウス』のラストクレジットに、『アメリカン・グラフティ』のパロディとして、それぞれの主人公のその後の経歴が流れるのがめちゃくちゃ笑えたけど、この『ハングオーバー! 』のラストクレジットのバックグランドに流れる、ラリッって記憶のない時に撮られた写真のスライドショーもそれと共通してめちゃくちゃ笑える。素晴らしい。

結婚式を控えて、と言うと、アレクサンダー・ペインの『サイドウェイ』(2004)もそうだけど、この『ハングオーバー! 』のフィルがワイナリーの話しを持ち出すのは、そんなスノッブな野郎に対する侮蔑も多少含まれてる気がする。そんなところも『アニマル・ハウス』に共通してるのかな。

 2010年07月21日
 ザ・コーヴ
Posted by ag at 23:01/ カテゴリー: MOVIE_Database

ザ・コーヴ監督:ルイ・シホヨス
出演:リック・オバリー、ルイ・シホヨス、イザベル・ルーカス、ヘイデン・パネッティーア、ポール・ワトソン
原題:The Cove
制作:アメリカ/2009
URL:http://thecove-2010.com/
場所:シアター・イメージフォーラム

ドキュメンタリー映画と一括りに言ってもいろいろなタイプのものがあって、実際に映画を観てみるまではそれがどのタイプのドキュメンタリー映画なのかわからないのが正直言ってキツイ。とは言っても、明確なジャンル分けがなされているわけではないので、どうやって観ようとしている人たちにそれを伝えるべきなのかその方法がわからない。マイケル・ムーアくらいに有名になれば、ああ、あの手の映画ね、とわかるんだけど。

自分の好きなタイプのドキュメンタリー映画は、カメラが単純に被写体を追い続けるタイプの映画。音楽もテロップもナレーションも無いのが一番良い。そこに存在している事実だけをカメラで捉えていながら、監督の意図している主張がしっかりと観客に伝わってくるような映画が一番大好き。

もちろん明確な主張があって、それを押し出し強く、観るものに訴えかけるドキュメンタリー映画があっても良いとはおもう。好きなタイプの映画ではないけれど、全面的に否定するものでもない。今回の『ザ・コーヴ』は、どちらかと言うと、この手のジャンルに属するドキュメンタリー映画だった。でも、そういったタイプのドキュメンタリー映画であったとしても、作り手側の都合の良い映像だけを羅列して、そこに自分たちの主張のみを被せてくるだけの映画では観ていてとても辛い。イルカを食用として捕獲することに不快感を持つことは理解できるし、それに反対する気持ちもわからないでもないけれど、太地町の人々を得体のしれないモンスターとしてしか描いていないのは、ドキュメンタリーとしてはいちじるしく客観性を欠いてしまっているように見えてならなかった。あまりにも一つの感情に支配されすぎて回りが見えなくなってしまっている映画にしか見えなかった。

何もイルカを食わなくてもいいじゃん、とは思うけど、その“イルカ”を“猫”や“犬”に置き換えた時と、“牛”や“豚”に置き換えた時に生ずる感情は人それぞれだなあ。自分としては動物の肉を食べる事にそんなに執着はしていないので、何も牛や豚を食わなくてもいいじゃん、にもなります。自分にとって“イルカ”と“牛”や“豚”は同義です。

 2010年07月12日
 パリ20区、僕たちのクラス
Posted by ag at 23:25/ カテゴリー: MOVIE_Database

パリ20区、僕たちのクラス監督:ローラン・カンテ
出演:フランソワ・ベゴドー、スレイマン、エスメラルダ、クンバ、ラバ、カルル、ウェイ、ナシム、ダミアン、ジュリエット、ジュスティーヌ、リュシー、アンジェリカ、ローラ、エヴァ、ブバカール、ルイーズ、チーフェイ、サマンタ、アンリエット、ダラ、シェリフ、アンチュール、ビュラク、アガム
原題:Entre les murs
制作:フランス/2008
URL:http://class.eiga.com/story.html
場所:岩波ホール

昨年のカンヌ映画祭のパルムドールを取った作品。

サッカーのフランス代表を見てもわかるように、フランス人と呼ばれる人種の内訳には、白人が占めるパーセンテージが極端に少なくなって来ているに違いない、と勝手に推測していた。それを実際に確認することが出来たのが、この映画に登場するパリ20区の公立中学校だった。マリ系、カリブ海系、モロッコ系、アルジェリア系、中国系、そして従来の白人系。生徒たちの肌の色や顔立ちは様々。そんな彼らに国語の授業を行う先生を中心に、クラスの様々な個性ある生徒たちを描いた映画が『パリ20区、僕たちのクラス』だった。

ほぼ単一民族で構成される日本の中学生を仕切るのも大変なのに、人種の違う中学生をコントロールしなければならないパリの先生の苦労は並大抵ではない。生徒のフランス語の習熟度も違うし、中には読み書きもままならない生徒もいる。聞く音楽も違うし、着るファッションも違う。応援する国のサッカー代表までもが違う。授業を進めるにあたっての生徒たちの共通項があまりにも少なすぎるのだ。これでは、授業のコントロールを失った時に避難する“よりどころ”があまりにも無さすぎる。

そのような勝手気ままな生徒を先生がコントロールする術は言葉のみ。武器は言葉だけなのだ。だから先生は、言葉の使い方を熟達していなければならない。言葉の使い方を一つ誤れば、生徒の信頼を一気に失うし、信頼がなければ授業を先に進める事は出来ない。授業というものは、生徒の言葉に対して、的確、最善の言葉を選んでリアルタイムに返さなきゃいけないし、興味を失う生徒に対して言葉で持って興味をつなぎ止めなくてはいけない。すべてが、言葉なのだ。

クラスを受け持つ先生役のフランソワ・ベゴドーは元教師でもあり、この映画の原作者でもある。そして、出演する中学生は実際のパリ20区にあるフランソワーズ・ドルト中学校の生徒たちだ。だから、まるでドキュメンタリーのような映画となってる。先生と生徒の言葉のやり取りを追いかけるカメラのまなざしは、まるでドキュメンタリー映画作家、フレデリック・ワイズマンのまなざしのよう。一つの言葉の使い方のミスから先生と生徒の関係が揺らぐ過程をしっかりと描いている。

経験からあまりにも先生役に感情移入してしまったけど、素晴らしい映画でした。ちょっと、カメラワークなど、ドキュメンタリー映画すぎるけど。

 2010年07月09日
 バード★シット
Posted by ag at 23:59/ カテゴリー: MOVIE_Database

バード★シット監督:ロバート・アルトマン
出演:バッド・コート、サリー・ケラーマン、シェリー・デュヴァル、マイケル・マーフィ、ジョン・シャック、G・ウッド、ジェニファー・ソルト、ルネ・オーベルジョノワ、ステイシー・キーチ
原題:Brewster McCloud
制作:アメリカ/1970
URL:
場所:新宿武蔵野館

ロバート・アルトマンの映画というと、『M★A★S★H マッシュ』や『ザ・プレイヤー』も好きだけど、何と言っても『ロング・グッドバイ』。レイモンド・チャンドラーの原作を読んだ多くの人々がこうあるべきだと考えていたフィリップ・マーロウ像をぶち壊して、アルトマン独自のフィリップ・マーロウをエリオット・グールドを持ってして創造してしまった映画だ。だから公開当時は、レイモンド・チャンドラーのファンから総スカンを食った映画として話題になった。

ロバート・アルトマンの魅力の一つは、この『ロング・グッドバイ』に見られるような、こうあるべきだ、に反発するところにあって、そんなところが反骨の映画作家と呼ばれる所以ではないかとおもう。つまりロバート・アルトマンの映画は、普通の映画じゃあない。それは遺作の『今宵、フィッツジェラルド劇場で』までずっと変わらなかった。

この『バード★シット』も、普通の映画じゃあない。ストーリーなんてものは、あって無いようなもの。“鳥”を象徴としているので、憧れ、自由、開放、などを単純に映画の主題として想像してしまうけど、そんなこと考えた奴には鳥の糞をかけてやる! と言われてしまう。ラスト、主人公のバッド・コートがヒューストンのアストロドームを滑空したことに何に意味があるのか? とモヤモヤしているところに、別に意味なんかねーよ! と言われてしまう。うん、スゲエ映画だ。シェリー・デュヴァルの目の下側の付け睫毛もスゴイ。ストーリーはさっぱりわからないけど。

 2010年06月30日
 アウトレイジ
Posted by ag at 23:37/ カテゴリー: MOVIE_Database

アウトレイジ監督:北野武
出演:ビートたけし、椎名桔平、北村総一朗、三浦友和、國村隼、杉本哲太、加瀬亮、森永健司、石橋蓮司、中野英雄、塚本高史、内野智、小日向文世、板谷由夏
制作:バンダイビジュアル、テレビ東京、オムニバス・ジャパン、オフィス北野/2010
URL:http://office-kitano.co.jp/outrage/main.html
場所:ワーナー・マイカル・シネマズ板橋

北野武の映画をデビュー作からすべて公開時に観てきたのに、ちょうど10作目の『Dolls』で途切れてしまった。無駄にアーティスティックに走ってしまったように見える『Dolls』という映画にまったく食指が動かなくなってしまったのだ。そして、その次の『座頭市』は観たけど、また『TAKESHIS'』で途切れてしまう。もうこの段階で完全に迷走してるのが見て取れて、『アキレスと亀』なんてものを撮るに至っては完全に北野映画を見放してしまった。認められたことによってさらに高次を目指そうとするのはわかるけど、得意とする部分を殺してしまっては何にもならない。北野武がどんどん巨匠病に冒されて行ってしまうのが見ていて辛かった。

ところが『アウトレイジ』という新作は、どうやら昔の北野映画に戻っていると言う。Twitterでもその話題で持ち切りだった。ならば、もう一度、北野映画を観てみよう。ワールドカップもベスト8が出揃って小休止に入ったので、この隙をついて観に行ってみよう。

ということで、観た。なるほど、確かに最近の混迷ぶりから脱却して初心に帰っているように見える。それプラス、笑えた。この、笑える、という部分がとても大切だ。何せ、ビートたけしというコメディアンが作るコメディ映画は今までまったく笑えなかったのだから。もちろんこの映画はコメディではないけれど、サム・ライミのホラー映画しかり、何事も突き詰めて誇張して描くと、笑える。昔ながらのビートたけしのコントの“間”も相まって、笑えた。特に、歯医者の椅子に座る石橋蓮司がビートたけしによって、あれは何て言うんだろう? キ〜ンと耳障りな音を立てて歯を削るやつ、それを使って口の中をズタズタにされるシーンなんて、めちゃくちゃおかしい。残酷で、笑える。次のシーンで、ハンニバルのレクター博士よろしく、治療のために口を固定されて、ひょこんと座ってる石橋蓮司にカットが切り替わるシーンも笑える。その石橋蓮司に対して、お前食べるか? あっ無理か、なんてセリフの“間”も。

もう、いいんじゃないかな、映画祭の賞を取る事なんて。ウディ・アレンばりに、自分の得意とする範疇の中で細かく技を磨いて行けば。

 2010年06月17日
 ブライト・スター いちばん美しい恋の詩
Posted by ag at 23:24/ カテゴリー: MOVIE_Database

ブライト・スター いちばん美しい恋の詩監督:ジェーン・カンピオン
出演:アビー・コーニッシュ、ベン・ウィショー、ポール・シュナイダー、ケリー・フォックス、トーマス・サングスター、クローディー・ブレイクリー
原題:Bright Star
制作:イギリス/2009
URL:http://www.brightstar-movie.jp/index.html
場所:新宿武蔵野館

ジェーン・カンピオンの長編映画は2003年の『イン・ザ・カット』以来。その前作の『イン・ザ・カット』は、メグ・ライアンがジェーン・カンピオンの演出のもとに、『ピアノ・レッスン』のホリー・ハンターのような魅力のある女性像として登場するものと期待して観に行ったのに、あまりにも鬱々とした映像の連続で、どちらかと言うと精神的に病んでいるように見える役柄の女性だったのにはガッカリとしてしまった。それでもまだまだジェーン・カンピオンに期待する気持ちは強く、次回作をいつかいつかと心待ちにしていた。

で、やっと6年ぶりにジェーン・カンピオンの映画がやって来た。それもひっそりと。まあ、有名な俳優が1人も出ていないからこの扱いはしょうがないのだろうけれど、もうちょっと宣伝してもいいんじゃないかなあ。

この『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』は、まったくの事前情報を入れずに観に行ったので、イギリスの詩人ジョン・キーツとその恋人ファニー・ブローンとの悲恋を描いた伝記映画であることをまったく知らなかった。ジョン・キーツというと、いろんな映画のセリフの端々に登場する詩人なんだけど、何の知識も持ち合わせていなかったので、おお、こんな人物だったんだと、それだけで映画が興味深かった。

それに、青空文庫にも登録されている日本の詩人、八木重吉はジョン・キーツに多大な影響を受けてるということなので、さらに興味深かった。

  キーツに 寄す

うつくしい 秋のゆふぐれ
恋人の 白い 横顔(プロフアイル)―キーツの 幻(まぼろし)

八木重吉「秋の瞳」より)

そして、やっぱりジェーン・カンピオの映像の美しさ。特に今回は、光の当たっている部分に見られる“白”が美しい。なぜか新宿武蔵野館での上映はフィルムではなくDLPでの上映だったんだけど、それでもその“白”の美しさは際立っていた。

ただ、ジョン・キーツの詩の翻訳を字幕で見せられるのはちょっと苦しかった。これは自分だけかもしれないけど、詩というものは、どんなものであっても、じっくりと咀嚼しないと意味がわからない。字幕で次から次へと読まされるのは相当厳しかった。

 2010年06月13日
 告白
Posted by ag at 23:06/ カテゴリー: MOVIE_Database

告白監督:中島哲也
出演:松たか子、木村佳乃、岡田将生、西井幸人、藤原薫、橋本愛、一井直樹、芦田愛菜
制作:「告白」製作委員会/2009
URL:http://kokuhaku-shimasu.jp/index.html
場所:ワーナー・マイカル・シネマズ板橋

中島哲也の映画は、この『告白』と同じように『嫌われ松子の一生』も観ていて辛かった。映画館にまで足を運んで、なんで人が転落して行く人生を見せられなきゃいけないのか、映画館ではフランク・キャプラの映画のようにハッピーな気持ちにさせてくれるのが基本だろう、なんて憤りもするんだけど、でも映画の評価として、暗い映画=ダメな映画、ハッピーな映画=良い映画、とも限らないのは至極当然で、『嫌われ松子の一生』は映画としては巧いし素晴らしかった。精神的には受け付けないダメな映画でも、技巧的には良い映画だったとなると、精神的な面の評価なんて観ているモノの主観的な評価以外のナニモノでもないから、そこはしかっかりと客観的に判断する必要があって総合的には良い映画となるわけでしょう。知人に薦められる映画かどうかは別だけど。

この『告白』は、子どもをダシに使っているぶん、『嫌われ松子の一生』よりもたちが悪かった。教壇に立った経験のある身からしても、子どものズルさが手に取るようわかったりするからなおさら精神的に響いたりしたし。でも、これがまた映画として技巧的に優れていて、特に映画全体を登場人物の告白で構成してあるところが巧かった。まるでジグソーパズルのように告白を錯綜させておきながら、全体的なストーリーの流れを乱れさせることなく起承転結を形作っているところが素晴らしい。映像も、『下妻物語』からの中島哲也トーンというか、ちょっとコントラストの強い画の作りが少年犯罪という題材にぴったり。この題材と、水飛沫をスローで取るシーンなどから、ちょっと岩井俊二の『リリシュシュのすべて』を思い出したりもするんだけど。

この精神的に辛い映画の唯一の救いは、最後のクレジットに「タンバリン指導」としてゴンゾーの名があったこと。ゴンゾーって、人に指導できるほど偉い人だったんだ。このクレジットで笑える人は、落ち込んだ気持ちを少しばかり上気させることができます。

 2010年06月10日
 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
Posted by ag at 23:59/ カテゴリー: MOVIE_Database

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を監督:ジョニー・トー
出演:ジョニー・アリディ、アンソニー・ウォン、ラム・カートン、ラム・シュー、サイモン・ヤム、シルヴィー・テステュー、チョン・シウファイ、マギー・シュー、フェリックス・ウォン、ミシェル・イェ、ン・ティンイップ、フォン・ツーファン
原題:復仇
制作:香港/2009
URL:http://judan-movie.com/
場所:新宿武蔵野館

ジョニー・トーの映画を観るのはこれで4本目。一番最初に勧められてビデオで見た『ザ・ミッション 非情の掟』があまりにも素晴らしかったので、昨年観た『エグザイル/絆 』にはガッカリだった。ガッカリどころか、自分の一番嫌いなタイプの映画、ストーリー・テリングを無視して映像スタイルだけに重きを置いてしまっている映画だった。確かにジョニー・トーはスタイルを追求するあまりストーリーを二の次にする傾向があるけど、『エグザイル/絆 』はそれがめちゃくちゃ顕著だった。ストーリー運びのリズムを壊してまで映像スタイルに走っている映画を観るのは本当に辛い。

そんな『エグザイル/絆 』のことがあったので、この『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』には一抹の不安があったんだけど、蓋を開けてみたらそのような不安は杞憂だった。もちろんジョニー・トーのことだから、ところどころにスタイリッシュな映像を撮りたいがためのシーン構成が見受けられるけど、例えば空き地での決戦シーンとか、あんなゴミを固めた四角いブロックを転がしながら、それを盾にして拳銃を撃ち合うなんてまったくリアリティに欠ける。あんなんじゃ、中央にいる奴らはすぐに皆殺しだよなあ。でも、西部劇のインディアンの駅馬車襲撃シーンを意識しているのか映像としては面白いし、全体的なストーリーの流れからしてそれほど逸脱した映像でもないし、シーンのピースとしてピタリとはまっていた。

スタイリッシュな映像をスパイスとして加味すると深みが出て素晴らしい映画になる場合があるんだけど、スパイスが利きすぎるとまったく観てられなくなる場合もある。そのバランスが微妙に難しい。この『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』は、単純な復讐劇だけど、ほど良く映像スパイスが利いていて面白い映画だった。

そうそう、飯を喰うシーンだけど、相変わらず出て来る。でも、ガツガツ喰うシーンがなかった。ガツガツ喰うシーンがいいのに。

 2010年05月25日
 クレイジー・ハート
Posted by ag at 23:25/ カテゴリー: MOVIE_Database

クレイジー・ハート監督:スコット・クーパー
出演:ジェフ・ブリッジス、マギー・ギレンホール、コリン・ファレル、ロバート・デュヴァル、トム・バウアー、ジェームズ・キーン、ウィリアム・マルケス、ライアン・ビンガム、ポール・ハーマン、リック・ダイアル、ジャック・ネイション
原題:Crazy Heart
制作:アメリカ/2009
URL:http://movies.foxjapan.com/crazyheart/
場所:よみうりホール(試写会)

今年のアカデミー賞でジェフ・ブリッジスが主演男優賞を獲った作品。

ジェフ・ブリッジスというと、映画を数多く観はじめた頃にいつも名画座にかかっていたピーター・ボグダノビッチの『ラストショー』を思い出す。テキサスの田舎町が舞台となるこの映画の乾いた空気が、何度も観た所為なのか、なぜか自分の心像風景となって記憶されていて、閉塞感や倦怠感に襲われた時にひょっこりと顔を出す。そこには田舎町から抜け出そうとして抜け出せないでいるティモシー・ボトムズとともに必ずジェフ・ブリッジスがいる。

そう、このジェフ・ブリッジス。ちょっとべた付くような口調のセリフ回しの緩い演技。それが彼の持ち味で、こうやって過去の作品をもう一度見直してみると、今回の『クレイジー・ハート』のジェフ・ブリッジスはまるで『ラストショー』のデュアンの成長した人物のようにもおもえて来る。その一貫した演技スタイルは、幅がないと言われればそれまでなんだけど、飽きられずに観客に受け入れられて、こうやって長年続けられるのであればそれは“味”になって来る。その結果が、今回のアカデミー主演男優賞なんだとおもう。

この『クレイジー・ハート』は、表面上はジェフ・ブリッジスが演じるカントリー歌手バッド・ブレイクの再起を描いていはいるんだけれど、これはもう、ジェフ・ブリッジスという演技人そのものがメインとなっているように見えてしまうほど彼の“味”に追うところの多い映画となってる。なので、それを受け入れられなけらばつまらない映画となってしまうだろうとおもう。受け入れられれば良い映画です。

 2010年05月07日
 ウディ・アレンの夢と犯罪
Posted by ag at 23:52/ カテゴリー: MOVIE_Database

ウディ・アレンの夢と犯罪監督:ウディ・アレン
出演:ユアン・マクレガー、コリン・ファレル、トム・ウィルキンソン、ヘイリー・アトウェル、サリー・ホーキンス
原題:Casandra's Dream
制作:イギリス/2007
URL:http://yume-hanzai-movie.com/pc/
場所:恵比寿ガーデンシネマ

最近のウディ・アレンの映画は、初心に立ち返って映画制作というものをじっくりと見つめ直してみよう、と言っているような映画が多いような気がする。今回の『ウディ・アレンの夢と犯罪』も、ストーリーの運び方、シーンの繋ぎ方、カメラの配置や動かし方も、まるでデビュー作のように細心の注意を払って作っているように見えてならない。ウディ・アレンという映画作家は現在、どのような境地に到達しているんだろう。このような新鮮な映画を毎年作り続けることがどうしてできるんだろう、と不思議でならない。

ただ、今回の映画の場合、劇的なシーンをいっさい排除しているところが、熟達した映画監督でなければ出来ない部分なんじゃないかとおもう。まさか、殺人シーンでカメラを生け垣の方に振っちゃうなんて。最後のコリン・ファレルの苦悩も、まさか警察の現場検証のシーンにポンと切り替えちゃうなんて。新人の監督ならば怖くてこんなことは絶対に出来ない。

ここまでドラマの抑揚を抑えて、フラットにしてしまう効果とはいったい何だろう。たぶん、『プレシャス』に感動するような人たちがこの映画を観たら絶対に物足りないだろうなあ。あまりにも淡々としすぎている。でも今回はそのフラットな部分が良かった。とおもえるのは、ウディ・アレン好きだけ。

 2010年04月30日
 プレシャス
Posted by ag at 23:55/ カテゴリー: MOVIE_Database

プレシャス監督:リー・ダニエルズ
出演:ガボレイ・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツ、シェリー・シェパード
原題:Precious: Based on the Novel Push by Sapphire
制作:アメリカ/2009
URL:http://www.precious-movie.net/
場所:109シネマズ川崎

描くべき主題が明確で、なおかつそれが刺激的ならば、それだけで感動的な映画にはなってくれる。観ていて、ほろりと涙も流れるもんです。この『プレシャス』も、父親からのレイプ、母親からの虐待、産んだ父親の子供はダウン症、HIV感染を描けば、そりゃあ、映画館内のあちこちですすり泣きが聞こえる映画にはなるでしょう。でも、映画としては稚拙だった。シーンのつなぎも悪くて、プレシャスが夢想するシーンの挿入も間が悪かった。結局自分は映画を観る上で、そんなところばかり気にしちゃう。いやいや映画としては、何度も言うようだけど、主題がストレートで明確なぶん、良い映画にはなっているとおもう。それだけで満足できる人は多いでしょう。

プレシャスの母親役を演じたモニークがアカデミー助演女優賞を取ったけど、プレシャスを涼しげな目で見守る特別学校の先生役のポーラ・パットンも素晴らしかった。『17歳の肖像』のオリヴィア・ウィリアムズといい、先生役で良い女優を発見。マライア・キャリーについては、もっと出演シーンがあるのかとおもった。

 2010年04月30日
 17歳の肖像
Posted by ag at 23:37/ カテゴリー: MOVIE_Database

17歳の肖像監督:ロネ・シェルフィグ
出演:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー、ロザムンド・パイク、エマ・トンプソン、アルフレッド・モリーナ、カーラ・セイモア、サリー・ホーキンス、オリヴィア・ウィリアムズ
原題:An Education
制作:イギリス/2009
URL:http://www.17-sai.jp/
場所:109シネマズ川崎

この映画を簡単に要約すると、昔のソフィー・マルソーとかフィービー・ケイツの映画にあったような、17歳女子高生“ジェニー”のほろ苦い成長物語、でしかない。そして、そのストーリーも簡単に先が読めてしまって驚きもない。でも、面白かった。なぜなら、脇を固める俳優たちが素晴らしかったから。

まずは、ジェニー(キャリー・マリガン)の父親役のアルフレッド・モリーナ。
アルフレッド・モリーナは巧い役者だとおもう。映画ごとにまるっきり違ったキャラクターを演じていて、それを同じ役者が演じているとは到底おもえないほどに作り込んでくる。今回の父親役も、『ショコラ』のレノ伯爵くらいに厳格な父親かと見せておきながら、ピーター・サースガードの口車に乗せられてコロッと騙される人の良い父親を半ばコミカルに演じている。この変幻自在さはロバート・デ・ニーロ以上なんじゃないのかな。

次に、オリヴィア・ウィリアムズ。
ジェニーの小論文の才能に期待を寄せるが、当人からは人生の敗北者のように蔑まれてしまう教師役。しかし、傷ついて行き場の無くなったジェニーが縋った先は、この真面目な教師の元だった。ジェニーが救いを求めるシーンは、この映画の中で一番印象に残るシーン。

そして、ピーター・サースガード。
これを詳しく書くとネタバレになってしまうんだけど、、
誠実さと胡散臭さの両方をミックスさせたような風貌が素晴らしかった。なんとなく、そのように展開するんじゃないかと想像はしていたけれど、その想像を上回る酷さに唖然とさせられるのも良かった。

もちろんキャリー・マリガンも。そのアイリッシュな風貌が可愛らしく、どんどん行為が逸脱して行っても、このままストレートにハッピエンドで終わるんだと思わせるような愛らしさが画面いっぱいに広がってた。だからこそ、物語の終盤が生きてくる。

監督は、デンマーク人で、女性のロネ・シェルフィグ。そうか、タイトルバックに流れるアニメーションや、登場人物たちのファッション、ピーター・サースガードが乗る車のブリストルなどにスタイルを感じたのは、北欧の人だったからなのか。

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