
映画の中の、主役なり脇役なり誰なり、歌を口ずさむシーンがことのほか“私のお気に入り”だったりする。
例をあげると、まずはアラン・パーカー監督の映画『シュート・ザ・ムーン』(1982)。夫の浮気を知ったダイアン・キートンが、バスタブの中でビートルズの“If I Fell(恋に落ちたら)”を唄う。この映画、もうすでに忘れ去られていて、DVDになる予定もまったくなさそうなのだが、このダイアン・キートンだけでももう一度観させて欲しい。このシーンを思い浮かべるだけでも鳥肌が立つくらいだから。
フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982)のラストでは、フレデリック・フォレストがテリー・ガーのために空港のターミナルで“You Are My Sunshine”を唄う。コッポラのゾエトロープ・スタジオを倒産させてしまった曰く付きの映画だけど、自分としてはそんなに嫌いな映画じゃない。
マイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』(1978)では、みんなで“Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)”を合唱する。一人でしんみり唄う歌も好いが、群衆(モブ)シーンに合唱が加わると観ているこちら側も昂揚してくる。
歌を唄うシーンではないが、ローレンス・カスダン監督の『再会の時』(1983)では、葬式に故人が好きだったローリング・ストーンズの“You Can't Always Get What You Want(無情の世界)”が流れる。その曲に共通した体験を持つ友人たちは、流れる曲に静かに微笑む。観ている自分もなぜか微笑んでくる。
最後に、フランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』(1934)。バスに乗り合わせた人達が“ブランコ乗りの歌”を大合唱する。本当にみんな楽しそう。観ているこっちも楽しくなる。この時のクラーク・ゲイブルの歌声も好い。この映画、ヒッチハイクで車を拾う有名なシーン(クラーク・ゲイブルがどんなにやっても拾えなかった車が、クローデット・コルベールが足をちょっと見せただけで瞬時に車が止まる)や、同じ部屋に泊まった男女を隔てる“ジェリコの壁”がファンファーレとともに崩壊するシーンなど、どのシーンも、今見てもまったく色褪せない。
ずらずらと単純に列べてきたけど、あげればまだまだ出て来る。きりがない。そうそう日本映画もあげなきゃ。でも、外国映画に比べたら絶対的に少ない。自分が映画撮るんだったら、絶対に歌唄うシーンを入れるんだけど。