
私は映画を勝手にジャンル分けして、綺麗に頭の中のアドレスに整理、格納していたりする。その方が記憶を呼び起こすときに、一つ思い当たれば芋蔓式に他の映画を呼び起こすことができるからだ。
その中の一つが“天使モノ”。
代表作はもちろんキャプラの『素晴らしき哉、人生!』(1946)。天使役はヘンリー・トラヴァース。それから『幽霊紐育を歩く』(1941)なんてのもある。天使役はクロード・レインズ。そのリメイクが『天国から来たチャンピオン』(1978)。天使役はジェームズ・メイスンにバック・ヘンリー。ちなみにこの映画の原題が“Heaven can wait”で、ここのページのタイトルはその映画のタイトルをちょっともじっているだけ。
その『天国から来たチャンピオン』が封切られた頃に、やはり“天使モノ”である『オー!ゴッド』(1977)が公開されているのだが、ずっと見逃したままになっていた。その『オー!ゴッド』がNHK衛星で突然放映された。こういう中途半端な時期の中途半端な映画ってなかなか放映されないんだけど、NHK衛星はピーター・セラーズの古いものをやったりと、ちょっとマニアックなラインナップを用意していてくれたりする。
“天使モノ”は、時には天使が神様、悪魔になることがある。と言っても、メル・ギブソンの『パッション』やフリードキンの『エクソシスト』が“天使モノ”に分類されることはない。“天使モノ”は、その天使、神様、悪魔が主人公にだけ見える、という特徴がある。もちろん映画を見ている私達にも見えるんだけど、主人公の回りの人たちには見えない。そこからペーソスを含んだ笑いが巻き起こる。
『オー!ゴッド』に出て来るのは神様。名刺にただ単に“God”とだけ書いてある神様だ。演じるのはジョージ・バーンズ。アメリカでは有名なコメディアンらしい。そのジョージ・バーンズの神様が、スーパーマーケットの副店長であるジョン・デンバーを選び出し、世界に自分の言葉を伝えろ、と申しつける。申しつけられたところで、私は神様に会って○×△□って言われました、と言っても誰も信じやしない。しかし、実直なジョン・デンバーは一生懸命布教しようとする。最後はポール・ソルビノ演じるエセ神父と裁判で対決。それに勝利する。ただそこで、“天使モノ”としては邪道なシーンが。ジョージ・バーンズの神様がみんなの前に姿を現してしまうのだ。何かに化けるのならいいんだけど、裁判の証人として神様そのもので登場してしまうのだ。でも、“天使モノ”のジャンル分けをそこまで厳密に規定しているわけではないのでいいでしょう。
映画のラスト、ジョージ・バーンズの神様は、無事世界に自分の思想の種を撒き終えたと言って去っていくが、よ〜く考えるとジョン・デンバーと対話しただけで、彼をちょこっと変貌させただけ。結局は“個”が如何に何かを成し遂げるべきか、なんでしょう。こんなコメディ映画にこそ本質が隠れていたりする。