
先日、ソニーがワーナーとの争いに勝って、コロムビアに続いてMGMも買収してしまった。MGMとはメトロ・ゴールドウィン・メイヤーの略。そしてメトロとは、マーカス・ロウのメトロ・ピクチャーズのこと。ゴールドウィンとは、サミュエル・ゴールドウィンのこと。メイヤーとは、ルイス・B・メイヤーのこと。
ハリウッドの黎明期には、なんとも我の強い、押しの強い撮影所経営者がゴロゴロしていた。サミュエル・ゴールドウィンやルイス・B・メイヤーの他にも、ワーナー・ブラザースのジャック&ハリー&アルバート&サム・ワーナー、コロムビアのハリー&ジャック・コーン、ユニヴァーサルのカール・レムリ、パラマウントのアドルフ・ズーカー、そして20世紀フォックスのダリル・フランシス・ザナック。
こんな強者どもが築いた映画会社は、当初にはそれぞれにカラーがあった。ギャング映画のワーナー、ミュージカルのMGM、軽妙で洒落た感じのパラマウント、フランク・キャプラのコロムビア、怪奇もののユニバーサルなど。君臨する独裁者がいたからこそ、一様なカラーが決定していたのかもしれない。しかし、強引なワンマンな経営者も時代には逆らえず、独裁者ではいられなくなっていく。時代は一極集中から、分かち合う時代に。最後に残ったタイクーン、ザナックも1971年に退く。
「ザナック ハリウッド最後のタイクーン」の中で、ザナックは腹心のエルモ・ウィリアムズにこう言う。「自分は(アーネスト・)ヘミングウェイと違い、忘れ去られてしまう存在かもしれない。『史上最大の作戦』が私の名を後世に残してくれるだろうか?」
悲しいかな、ジョン・フォードやエリア・カザンは後世に名が残っても、ダリル・フランシス・ザナックの名を知っているのはだいぶマニアックな映画ファンだけになってしまった。
そして今の時代、20世紀フォックスもユニヴァーサルもパラマウントも、その映画会社としての個性はまったくなく、映画の最初にサーチライトが照らされても、地球がくるくる回っても、山の周りに星が並んでも、何の感慨も湧かなくなってしまった。しかも、そのロゴに続いてすぐに映画が始まるのではなく、その後には「いったい幾つあるんだ?」と思うほど独立映画会社のロゴが続く。ミラマックスとかキャッスルロックとかドリームワークスとか。
そしてさらに、そのゴールドウィンやメイヤーのビッグ・ネームを会社名に仰いでいるMGMも舞台から消えていく。ジャックとハリーの兄弟喧嘩が名物だったワーナー・ブラザースの名もいつまで残っていられるんだろう?