
監督:ニキータ・ミハルコフ
出演:セルゲイ・マコヴェツキイ、ニキータ・ハミルコフ、セルゲイ・ガルマッシュ、ヴァレンティン・ガフト、アレクセイ・ペトレンコ、ユーリ・ストヤノフ、セルゲイ・ガザロフ、ミハイル・イェフレモフ、アレクセイ・ゴルブノフ、セルゲイ・アルツィバシェフ、ヴィクトル・ヴェルジビツキイ、ロマン・マディアノフ
原題:12
制作:ロシア/2007
URL:http://www.12-movie.com/
場所:シャンテシネ2
どうしても、大好きなシドニー・ルメット版と比べてしまうのはしょうがないところ。
だれがヘンリー・フォンダの役で、どれがリー・J・コッブの役で、ジャック・ウォーデンのようなメジャーリーグ好きの、ロシアならさしずめスパルタク・モスクワあたりを好きなサッカーファンの人間も登場するんだろうか? というところが興味津々だったんだけど、のっけのシーンを観るだけで、そんな考えを持つこと自体が間違っていたことがすっかりわかってしまった。
『12人の怒れる男』と銘打ってはいるけれど、レジナルド・ローズの『12人の怒れる男』ではまったくなかった。
シドニー・ルメット版は、名前も職業もわからない人間が陪審員室という限られた空間に集まり、名前も背景も説明されない少年が無罪であるか有罪であるかを議論するという、まるで最近のネット空間における“名無し”のような得体の知れない個性の衝突が作り出す爆発、炎上が面白かった。かつ、映画的には、扱うシチュエーションが狭い空間ながら、クローズアップを多用することによって画面に奥行きを持たせ、さらに、ナイフ、眼鏡といった小道具を使うことにより、固定された空間から想像の場を広げさせるテクニックが素晴らしかった。
ところがニキータ・ミハルコフ版では、容疑者をチェチェン人と明確にしたところで、もうすでにレジナルド・ローズの脚本とは大きくかけ離れてしまった。だから、ヘンリー・フォンダの役やリー・J・コッブの役は残っていたけど、その役回りは大きく違ってしまったし、とくに、展開されるのが今のロシアの問題がベースとなった社会派ドラマになってしまったので、リー・J・コッブの「殺してやる!」のシーンがまったく無くなってしまったのにががっかり。
“強いロシア”を望む国民の後押しによって躍進をとげる今のメドヴェージェフ・ロシアにはとても興味があるので、こんな社会派ドラマでもそれはそれで面白いんだけど、だったらもうちょっと、有罪にしたほうが彼は長生きする、といった落ちだけでなく、チェチェン問題あたりを掘り下げたほうが良かったような気もしないではないなあ。