
著者:コーマック・マッカシー
訳者:黒原敏行
出版社:扶桑社ミステリー、扶桑社
購入場所:紀伊国屋書店新宿南店
「血と暴力の国」は、コーエン兄弟の映画『ノーカントリー』の原作本。
おもったより映画は原作に忠実だった。いや、忠実というより、コーマック・マッカシーの文体がとても映像的なので、それをそのままなぞらえてる感じ。これほど原作とイメージがぴったり一致する映画も珍しい。
会話に引用符(日本語翻訳の場合、かぎかっこ)を付けず、コンマ(日本語翻訳の場合、読点)を最小限にするコーマック・マッカシーの文体も、まるで映画のフィルムのように1秒間24コマで流れているようだ。
それに、シーンのつなぎも、映画のような省略方法を使っている。例えば、モスと行きずりの少女の会話のシーンから、二人が射殺された直後の警察の現場検証のシーンにつなぐところなんて、ふつうの小説なら絶対にモスがメキシコ人と撃ち合うシーンを描写するだろうとおもう。そこをスパッと省略しているのが、なんだか西部劇を見ているようだ。開拓地に向かう穏やかな親子の会話から、次のシーンでは幌馬車隊がインディアンに襲撃されて全滅してしまっているような感じ。
その代わり、モスの妻のカーラ・ジーンがシュガーに射殺されるシーンの描写はとても丁寧。サイコキラーに殺害されるような時、単純に残忍さが際立つだけの場合が多いけど、なんだろう? 二人のやり取りに得も言われぬ切ない情感が漂う。
この「血と暴力の国」が面白かったので、ピューリツァー賞を取った「ザ・ロード」も読みたい気もするけど、どうやらオーストラリア人の監督の手で映画化されるらしい。“Blood Meridian”も『リトル・チルドレン 』のトッド・フィールド監督で映画化されるらしい。これらの映画が日本で上映されるかどうかわからないけど、それを観たら原作を読んでみようとおもう。