
監督:石川淳志
出演:森崎偏陸、九條今日子、宇野亜喜良、荒木経惟、浦岡敬一、J・A・シーザー、三上博史、森山大道、緒川たまき、木村威夫、若松武史、佐々木英明、松村禎三、高橋咲、新高けい子、平常、笹目浩之、萩原朔美、日野利彦、蘭好子、シルヴェット・ボドロ、弘子・ゴヴァース、山ちゃん(山下真砂雄)
制作:ワイズ出版/2009
URL:http://www.wides-web.com/henriku_index.html
場所:シアター・イメージフォーラム渋谷
ボイジャーで寺山修司のCD-ROMを作ったとき、森崎偏陸さんには大変お世話になった。CD-ROMで見る電子書籍なんて、おそらく偏陸さんにとっては訳のわからないブラックボックス以外の何ものでもなかったはずなのに、そんな不信感はおくびにも出さず、的確なアイデアを出してもらって、コンピュータ上に寺山修司の世界を構築することに多くのサポートをもらった。普通の人ならCD-ROMと聞いただけで身構えて、頭が硬直して、自由闊達な意見にバイアスがかかってしまうはずのに、偏陸さんにはまったくそんなところがなかったのには驚かされた。出されたアイデアに対して、それはコンピュータでは実現するのが難しいんですよ、と言うと、じゃあこういうのはどう? これはどう? とプランB、プランCがどんどん出てくる。固定観念に支配されない自由さに驚いたものだった。
この日は、映画の上映前に、石川淳志監督と偏陸さん、そして白夜書房編集局長の末井昭氏との簡単なトークショーあって、そこで末井氏から「森崎さんは悩みがないらしいんですよ」という話題があった。なるほど、CD-ROM制作に真正面からストレートに立ち向かった森崎偏陸という人の姿勢をつぶさに見た経験からすると、それは納得できる話だった。悩みなんて、過去に頓着したり、未来を危惧するからこそ生まれるものであって、現時点だけを捉えて、その短いスパンだけに集中して生きていれば悩みなんてそうそう生まれるものではない。でもそれは反対に“自分と向き合わない”危険性をはらんでいることは確かなんだけど、向き合ったからといってどうにかなるもんでもないから、こういう生き方こそ正解な気がする。
そしてラスト近く、たぶんこの映画のメインとなるシーンだとおもうんだけど、天井桟敷の女優だった高橋咲が酒を飲んで昔の偏陸さんとの淡い関係を話し出す。なるほどねえ、森崎偏陸という人は単純なゲイという枠に納まらない、もしかすると“両方”ではないかとおもっていた(会ったときに直感でそういう感想を持ったのか、誰かからそういう情報を得たのかは忘れた)んだけど、そのことをやんわりと仄めかすシーンだった。このシーンがあって、ラスト、パートナーである山ちゃんと列車旅行をするシーンがセンチメンタルに効いてくる。
ドキュメンタリーの手法として、この映画のようにナレーションも入れない、テロップを入れない、音楽もいれない手法は大好き。ただ、ビデオカメラが古いのか、全体的に暗い。これは狙いじゃないよなあ。最近のビデオカメラは、10万円以下でもだいぶ明るいレンズなんだけどなあ。その点がちょっと残念だった。