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 2010年01月20日
 華胥の幽夢 十二国記
Posted by ag at 01:21/ カテゴリー: BOOK_Database

華胥の幽夢 十二国記著者:小野不由美
出版社:講談社文庫、講談社
購入場所:三省堂書店本店

それでまた小野不由美。十二国記の文庫シリーズの中で唯一の短編集。「冬栄」「乗月」「書簡」「華胥」「帰山」の五編が収められている。

この中ではやっぱり「華胥」が面白い。“華胥(かしょ)”とは中国の黄帝が昼寝をしたときに夢見た理想の国のこと。悪政を布いた先の王を倒し、自分たちの理想の国を目指した王と側近たちの話しが「華胥」だった。

新王は玉座に就くと同時に先王の悪政を糺す施政を行う。しかし、それを行えば行うほど、自分たちの思い描く“理想”からどんどんと遠ざかってしまう。“理想”を希う気持ちが強ければ強いほど、それはさらに加速して自分たちから遠ざかって行ってしまう。いったい自分たちのどこに非があるのか? 自分たちのやり方のどこに間違えがあったのか? 苦悶、苦闘の内に王は自らの命を絶つ。その際の官吏の言葉が物悲しい。

「——主上が、——禅譲(ぜんじょう)でございます!」

“理想”を望んだ王の非業の死が“禅譲”という難しい文字に響いて、読んでいて鳥肌が立つほど辛いシーンだった。そしてその王の遺言。

「責難(せきなん)は成事(せいじ)にあらず」

つまり、悪政を布いた先王を非難することは容易い、しかしそれは何かを成すことではない、という意味。これも良い言葉。なんだか昨今のネット上のやり取りを思い浮かべてしまう。ネット上には「責難」しかないからね。それが「成事」ではないことをどれだけの人がわかっているんだろうか、とおもってしまう。

その他の短編も、それぞれ登場するキャラクターが素晴らしい。「冬栄」の廉王(れんおう)世卓(せいたく)、「乗月」の月渓、「書簡」には久しぶりに楽俊、そして「帰山」の奏王一家。小野不由美は本当にキャラクターの造形がうまいとおもう。

これでやっと、昨年イワトで製本した小野不由美の「丕緒の鳥」と「落照の獄」を読むことが出来る。

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