
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・ハットン、ジョン・バーンサル、デヴィッド・リントール、ロバート・パフ、イーライ・ウォラック、ジェームス・ベルーシ
原題:The Ghost Writer
制作:フランス、ドイツ、イギリス/2010
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場所:THOHOシネマ六本木ヒルズ(東京国際映画祭)
ロマン・ポランスキーの前作『戦場のピアニスト』は、自身の経験とオーバーラップするところがあまりにも多く、それを史実として忠実に伝えることに使命を感じたためか、映画としてはあまり凝った事はせずにストレートな描写に努めていた。その遊びの無さが物凄く不満だったのだけれども、今回の『ゴースト・ライター』は『フランティック』のようなサスペンス・ストーリーを題材としていたために、ポランスキーの遊びがまた復活していた。
まず、『フランティック』のような純粋なサスペンスではなくて、いったい何が起きているのか、その全体像がまったく掴めずにモヤモヤとした気分で映画を観なければならないところが、凝ってる。ユアン・マクレガーが演じるゴースト・ライターの命が狙われているのか、ピアース・ブロスナン扮する元イギリス首相は何をどこまで知っているのか、オリヴィア・ウィリアムズ扮する元イギリス首相夫人やキム・キャトラル扮する元イギリス首相秘書がどこまで根幹に関わっているのか、さっぱりわからない。ほとんど最後までわからない。これは下手をすると、観ていて飽きる。実際に自分の隣に座っていた人は寝ていた。でも、このモヤモヤとした気持ちを持たせながら映画への興味を持続させる工夫はいたるところにあって、そこがポランスキーならではの巧さではあるんだけど。そこを見逃さずに楽しめさえすれば飽きることはないとおもうんだけどなあ。万人向けではないのかな。
それに、映画の中の舞台設定。主に、元イギリス首相が現在住んでいるアメリカの避暑地とおもわれるところが舞台なんだけど、これがまた、モヤッとしている。フェリーを使わなければ行けないような島。その島にある寂れたホテル。ホテルのフロントにはまるでメイド喫茶のような衣装を着たねえちゃん。島の住人のじいさんは『マクベス』に出て来た占い師のように事件の核心を突いたりする。いいなあ、こんな遊び。
調べてみたら、この島のシーンのロケ地はアメリカではなくて、ドイツのズィルト島とデンマークのレム島だった。そうだよなあ、ポランスキーはまだアメリカの地を踏む事が出来ないのだ。アメリカのマサチューセッツでの撮影もあったみたいけど、たぶんそれはアシスタントディレクターに任せたのだろうな。いい加減、赦してあげてもいいんじゃないのかなあ、アメリカ。
何度も言うんだけど、ロマン・ポランスキーの映画は本当に肌が合う。観ていて楽しい。その楽しさが、すべての人にとって楽しいとは限らないのが映画の難しいところで、『戦場のピアニスト』のようなストレートな映画でない限り、人にロマン・ポランスキーの映画を勧める事はなかなかできない。今回はどなんだろう? 勧められるのかな、どうなのかな。