
今年、劇場で観た映画は全部で62本(+広島国際アニメーションフェスティバルで観た短編アニメーションが30本くらい?)だった。
で、良かった映画は以下の通り。どれが一番良いかと云うと『インセプション』かなあ。
キック・アス
人生万歳!
エリックを探して
神々の男たち
カラフル
インセプション
パリ20区、僕たちのクラス
クレイジー・ハート
マイレージ、マイライフ
アイガー北壁
監督:マシュー・ヴォーン
出演:アーロン・ジョンソン、クリストファー・ミンツ=ブラッセ、クロエ・グレース・モルツ、ニコラス・ケイジ、マーク・ストロング
原題:Kick-Ass
制作:アメリカ、イギリス/2010
URL:http://www.kick-ass.jp/index.html
場所:シネセゾン渋谷
スーパーヒーローの映画は、何をおいてもカッコ良くなければいけないんだけれども、この映画のアーロン・ジョンソンが演じている“キック・アス”は、ごくフツーの高校生が志しだけでヒーローになってしまうため、コスチュームのデザインは酷いし、格闘や武器の訓練が出来ていないから殴られっ放しだし、めちゃくちゃカッコ悪い。なるほど、またアンチヒーローの映画なのかと観ていたら、そこにクロエ・グレース・モルツの“ヒット・ガール”が登場。なんと、この11歳くらいの女の子がめちゃくちゃカッコ良い。1人で10人くらいの大人をばったばったと殺しまくる、それも残忍な手口の殺し方が物凄くカッコ良い。映画を観ていて、もうこの女の子に魅せられっぱなし。と、観るものをそうさせといて、これがラストシーンに効いてくるのも巧かった。
ちょっとグロテスクな殺人のシーンが多いけど、ここまでスッキリ楽しめる娯楽映画も久しぶりのような気がする。面白い映画が、おそらくTwitterなどの口コミで拡がって、シネセゾン渋谷の上映のどの回も満席になってるのが嬉しい。テレビ局主導の映画に客が入るのは当たり前だけど、あまり宣伝費をかけることができない良質な映画に客が入ることがどんなに大切なことか。
監督:ウディ・アレン
出演:ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド、パトリシア・クラークソン、ヘンリー・カヴィル、エド・ベグリー・Jr、コンリース・ヒル、マイケル・マッキーン
原題:Whatever Works
制作:アメリカ/2009
URL:http://jinsei-banzai.com/pc/
場所:恵比寿ガーデンシネマ
ウディ・アレンの監督作品もこれでちょうど40作品となって今回はどんな映画を撮るのかとおもったら、まるでウディ・アレンの分身ではないかと見間違えるほど自分自身を投影した人物(コメディアンのラリー・デヴィッドが演じてる)が主人公の映画だった。もちろん今までの映画の主人公も、特に『アニー・ホール』や『マンハッタン』など、ウディ・アレンの内面が反映された人物が出て来たわけだけれども、ここまでストレートに自身の嫌味な部分をさらけ出した映画もなかったような気がする。だったら自分自身が演じれば良いんじゃないかとおもえるけど、別の俳優に演じさせることによってより客観性が増しているのか、繰り出されるセリフはさらに強烈になってる。厭世的で、傲慢で、自殺願望が強い。おそらくこれが本当のウディ・アレンなのだ。
もしまったくウディ・アレンのことを知らない人がこの映画を観たとしたら、ただ嫌味な人物が毒づいているだけの映画にしか見えないんじゃないのかなあ。どちらかと云うとこの映画は、長い間ウディ・アレンの映画に付き合ってくれた人に対して、今後もまだ付き合ってくれるのか? と問われているような映画に見えてしまった。まあ、そんなことをおもうのは、ウディ・アレンの映画を一見さんが楽しめるわけじゃないじゃないか! と云うような、よくある映画ファンの驕りなんだろうけど。でも、この映画の主人公ボリスだったらそのように毒づくでしょう。
そんなウディ・アレンの次回作はどの映画館で観られるのだろう? シャンテかヒューマントラストあたりなのだろうか。本当に恵比寿ガーデンシネマが閉館されるのは残念。
監督:ケン・ローチ
出演:スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、ステファニー・ビショップ、ジェラルド・カーンズ、ジョン・ヘンショウ、ルーシー=ジョー・ハドソン、ジャスティン・ムーアハウス、マシュー・マクナルティ、ローラ・エインズワース
原題:Looking for Eric
制作:イギリス、フランス、イタリア、ベルギー、スペイン/2009
URL:http://www.kingeric.jp/
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町
『エリックを探して』の“エリック”とは、この映画の主人公である中年郵便配達員エリック・ビショップのことでもあるし、その彼が永遠に憧れるサッカー選手エリック・カントナのことでもある。
エリック・カントナは、1992年から1997年にかけてイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドのFWとして活躍し、ユニフォームの襟を立てる着こなしから“キング”の愛称で親しまれた。その“キング”を崇拝してやまない郵便配達員エリックは、落ちぶれた自分の生活を建て直すための相談相手としていつしかエリック・カントナの幻影を見るようになる。
この郵便配達員エリックとカントナの幻影との対話は、結果、自己啓発と同じことになるのだけれど、そこにフットボール・プレーヤーとしてのエリック・カントナを浮かび上がらせているところがプレミア・ファンにとってはたまらない。郵便配達員エリックがカントナに聞く。生涯で一番のプレーは? サンダーランド戦のゴールか? ウィンブルドン戦のゴールか? カントナは云う。いやゴールじゃない、パスだ。トッテナム戦のデニス・アーウィンへのパスだ!
フットボールではゴールこそ最大の喜びではないかと想像するところに、他のプレーヤーに脚光を当てるための裏方的役割を担う、パス、を持ってくるのは、もちろん郵便配達員エリックの内なる叫びにほかならない。そして、この映画のラストのフランク・キャプラ的ヒューマニズムに繋がって行く。
自分がイングランドのプレミアリーグをテレビで観はじめたのは、ちょうどエリック・カントナが引退した後くらいからだった。だから、スポーツニュースの映像ではカントナを見たことがあるけれども、ライブでのカントナの試合を見たことがない。この映画を観る上ではそこが残念なんだけれども、でも、この映画に出て来る記録映像にはデニス・アーウィンやアンディ・コール、そして若かりし頃のベッカムやスコールズも出て来る。その後の彼らのプレーは見ているので、なんとなくカントナの時代のマンチェスター・ユナイテッドを見ていた気にさせてくれるのが嬉しい。
映画のエンド・クレジットにエリック・カントナの記者会見の映像が出て来る。彼は記者たちの前で云う。「カモメが漁船を追いかけるのは、エサのサバが海にまかれると思っているからだ」。野次を飛ばしたクリスタルパレスのサポーターにキックを喰らわせて、24時間の勾留を受けた後の記者会見だ! 最後までフットボール愛に満ちあふれた映画だった。
監督:リドリー・スコット
出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、マーク・ストロング、オスカー・アイザック、ウィリアム・ハート、ダニー・ヒューストン、マーク・アディ、アイリーン・アトキンス、マックス・フォン・シドー
原題:Robin Hood
制作:アメリカ/2010
URL:http://robinhood-movie.jp/
場所:ワーナー・マイカル・シネマズ板橋
ロビン・フッドと云うと、ディズニーのアニメやショーン・コネリーの『ロビンとマリアン』などの映画があるけれど、やっぱりエロール・フリンの1938年の映画『ロビンフッドの冒険』になってしまう。どんなに時を経ようとも、あの、総天然色カラーのシャーウッドの森で展開される活劇が映画の原点なんじゃないかとおもえてしまう。だから、エロール・フリンの演じたロビン・フッドがそのままロビン・フッドのイメージとして自分の中で定着してしまっている。まさにハリウッド映画が頂点を極めていた頃の剣戟スターのイメージをそのままに。
そのエロール・フリンが脳裏にあるので、今回のラッセル・クロウのロビン・フッドがまったく酷く見えてしまう。あんなロビン・フッドは無いなあ。架空の人物をどう作り込もうと勝手だし、他の映画と同じキャラクター造形をしたくないのはわかるけど、動きに軽快さのないロビン・フッドはやっぱりダメでしょう。それに、あのラッセル・クロウのしかめっ面を2時間半もされたんじゃ、観ていて辛い。あれじゃ『グラディエーター』のキャラクターのままじゃん。ダグラス・フェアバンクスやエロール・フリンやフレッド・アステアのようなしなやかなスタアをシネコンのスクリーンで観ることは一生ないのかなあ。
史実にロビン・フッドを嵌め込んだストーリーは面白いとおもうので、出来たらラッセル・クロウ以外のロビン・フッドで見たかった。