
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:ヘイリー・スタインフェルド、ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパー
原題:True Grit
制作:アメリカ/2010
URL:http://www.truegritmovie.com/intl/jp/
場所:新宿武蔵野館
映画を観に行く時、なるべくその映画の事前情報を得ないようにしている。もちろんこの情報化時代に完全な遮断は無理なので来るものは拒まないけど積極的な情報詮索はしないようにしている。そのほうがストーリーの設定ひとつひとつにも新鮮な驚きがあって、映画をより楽しめるとおもうからだ。この『トゥルー・グリット』もアカデミー賞授賞式の時に得た情報、女の子が主人公の西部劇、ジェフ・ブリッジスが女の子を助ける、くらいのことしか頭に入れないで映画を観に行った。
映画を観始めてから1/3を過ぎたあたりで、あれ? とおもいはじめた。これって、ヘンリー・ハサウェイ監督が1969年に撮った『勇気ある追跡』とそっくりじゃないか、と。そっくりどころじゃない、ジェフ・ブリッジスのアイパッチを着けた保安官なんて、ジョン・ウェインのそれと何一つ変わらないじゃないか、と。細かいことは忘れていたけど、考えてみたらストーリーや舞台設定もまるっきり同じじゃないか、と。
家に帰ってからネットで調べてみると、ああやっぱり! 『トゥルー・グリット』は『勇気ある追跡』のリメイクであると大々的に謳っていた。それ以前に『勇気ある追跡』の原題は“True Grit”だったのだ。だから、その知識さえあれば映画の題名を聞いただけでリメイクとわかるくらいの公明正大な事前情報だったのだ。でも、事前にリメイクであるという情報を得てから観るよりも、知らないで観た方が絶対に楽しめたとおもう。映画を観て行くうちに、ジェフ・ブリッジスの顔が知らず知らずにジョン・ウェインとオーヴァーラップして行くさまなんて映画を観る上での興奮以外のなにものでもなかった。
この『トゥルー・グリット』はよくある復讐を描く西部劇なわけだけど、男二人と女一人の三角関係を描く西部劇は数あれど、大人の女性の部分を少女に置き換えることで不思議な三角関係を形成している部分は面白い。ヘイリー・スタインフェルドに対するジェフ・ブリッジスに父性的な意味合いを持たせているのかと云うとそれほどでもなく、じゃあ、少女の成長物語をサポートする大人たちの話しなのかと云うとそうでもない。どちらかと云うとジェフ・ブリッジスとマット・デイモンのほうに少年を見たりする。ヘイリー・スタインフェルドに母性的な大人の女性を見たりする。この関係性が複雑に絡み合っている。
そして、目的が同じの三人が緩い関係で結ばれたまま進んで行くストーリーは、少女が復讐を果たすことによってドラマのクライマックスを迎えるのかとおもえば、その結果起こるハプニングで突然に三人の関係性が密接に結びつく。ここの、微妙にメインのストーリーラインからクライマックスを“外し”てくる部分がコーエン兄弟っぽい。
ただ、ラストのジョン・フォードの『リバティバランスを射った男』のような西部の伝説話でしめくくるのはちょっとセンチメンタルな『タイタニック』系映画と同列に並んでしまったようでコーエン兄弟っぽくはなかったかな。