小さな出版社の日々
« 誤植百物語 第二話 | メイン | 『インターネット図書館 青空文庫』主な取扱書店 »
 2005年09月12日
 「あぶらかす」と食育
Posted by みやこ at 20:48 / カテゴリー: 食・農・村

消費者と生産者の距離を縮めるとか、伝統的な食生活を大切にするとか、ちゃら〜っと言ってのける。食の本質は、生存するためにあるという当たり前のことを忘れがち。手に入るものを有効に食べるという食生活のあり方にも無自覚だ。それが“都会人”?

カロリー摂取の件はたぶんほぼクリアした国に住み、“食の安全・安心”とか軽く言っている私。死語になりつつある「グルメ」の代わりに、「スローフード」の流れに乗ろうとしているだけなのかもしれない。
お調子者の私に、「ちょっと待ちなさい」と言ってくれた本がある。上原善広さんの『被差別の食卓』(2005年6月、新潮新書)。出たときに買って少し読んだのだけれど、その淡々とした記述がなんとなく面白さが欠けるようで、放っておいたが、昨日読了した。じわ〜っと来る面白さがあった。
「あぶらかす」というのは〈牛の腸をカリカリに炒り揚げたもの〉。〈差別と貧困、迫害と団結の中で生れた食文化。一般の民が食べずに捨てたり、見向きもしなかった食材を工夫して作った、被差別民たちの「抵抗的余り物料理」〉のひとつだという。著者は「被差別の食卓」を求めて旅に出る。アメリカ、ブラジル、ブルガリア、イラク、ネパール、日本。自分の子ども時代の経験を土台に、経験を重ねていく。そうして、経験しない者にメッセージを送る。
「あぶらかすを原点に食を考えていく」といった学び方・教え方は、いま農水省などが推進している食育に、果たしてあるのかなあ。田植えして稲刈りしてオニギリつくって食べておしまい、お百姓さんは偉い、自然は素晴らしい、ばかりではないとは思うけれど。