水牛だより

2006年12月1日

東京には空がない、と言ったのは智恵子サンですが、それと同じようなことを友だちが言うのを聞いて、そんなことはないヨ、と反論しました。空は見上げるひとには等しく開かれていて、見ようと思えば、ビルの窓からだって見える。窓のサイズでちいさくて色も冴えない空だけど、宇宙を感じることはできます。

「水牛のように」を2006年12月号に更新しました。
インドネシアで師を亡くした冨岡さん。もう助からないとどんなにきちんとわかっているつもりでも、残されるものにとって、死はやはり突然やってくるものです。死にゆくひとにとってはどうなのでしょうか。わたしの叔父は何年か前のある月の月末に入院し、病院のベッドで「5日に帰るぞ」と言って、次の月の5日に死にました。できることなら真意(?)を詳しくきいてみたいものです。

さて、お知らせを三つ。
まずは自前のコンサート、日本語で歌うシューベルト『冬の旅』(歌:斎藤晴彦、ピアノ:高橋悠治)から。ことし最後の二日間、12月30日と31日に神楽坂のシアターイワトで。二日とも19時開演、入場料は3500円、100人限定です。「美しい」ということばさえ地におちて、日に日にひどくなる日本の冬に、日本語のシューベルトはどう聞こえるでしょうか。ご予約はinfo@suigyu.com(メール)か、03-5228-6403(電話)で受け付けています。年末は予定があることが多いとは思いますが、年越しの一環として予定に組み込んで、おでかけください!

西麻布の「Rainy Day Bookstore & Cafe」では『片岡義男商店』が期間限定でオープンしています。12月9日(土)には午後3時から6時まで、店長の片岡さんがRainy Day Bookstore & Cafeに出勤し、みずからコーヒーをいれるそうです。ぼくは給仕はうまいのです、とご自分でおっしゃっていますが、ほんとです。片岡さんブレンドのコーヒーを片岡さんにいれてもらい、片岡さんの蔵書や被写体や文房具を観察して、限定販売のポストカード・ストーリー『Coffee Table Reading』を手に入れる。夢のような12月の土曜日の午後、ぜひ片岡さんに会いにいってください。

2007年1月20日(土)午後2時からは大阪の阿倍野区民センターで辺見庸講演会があります。「状況の変調と『私』という個体について――いまたたかうことの意味――」。定員650人、1000円です。12月25日までに往復葉書で申し込みが必要です。宛先など詳しくはこちらをごらんください。

それでは、よい年を!(八巻美恵)




2006年11月1日

東京の11月は晩秋という名がふさわしい季節のはずですが、晴れた日に歩いていると暑くなって、つい半袖のTシャツになってしまいます。これで気持がいいなんて、11月なのになんだかヘンですね。
この「水牛だより(新しいサイトはこちらです)」と「メントール・ユーカリプト」は新しいサイトに引っ越しました。しばらく前からコメントができないというメールをいくつかいただいていましたが、これで解消です。

「水牛のように」を2006年11月号に更新しました。
「しもた屋之噺」が59回目をむかえた杉山洋一さんは、かつて水牛通信の最年少の読者でした。中学生だったと思います。大きくなってミラノに渡り、作曲家として活躍しているのはご存じの通りです。1997年から98年にかけて、ミラノでの生活が始まって間もないころの日録『ミラノ日記』が浜野智さんの編集によって、電子本オンデマンド印刷本になりました。わたしは注文して届くのを待っているところです。
「水牛のように」に載せたテキストを書いた人ごとにまとめて、この『ミラノ日記』のように出版したらおもしろいだろうと思い始めています。水牛叢書を来年の課題にしよう!
一方、青空文庫で最年少の工作員だった大久保ゆうさんはいつの間にか大学院生となり、翻訳文化を研究しています。これも青空文庫に関心を寄せてくださる方にはご存じの通りです。そしてあの『星の王子さま』を『あのときの王子くん』というタイトルで翻訳し、公開までこぎつけました。読みだすとひきこまれておしまいまで読んでしまう、すばらしい訳です。「あとがき」を読むと、翻訳のすばらしさのナゾが少しだけ解けます。今という時にふさわしい新訳をどうぞ楽しんでください。
こどもはこのようにちゃんとおとなになるのだな、と彼らがこどものころにすでに年齢だけはおとなの部類だったわたしは思うのでした。

きょうは半袖のTシャツでいても、冬はあやまたずやってくるでしょう。冬とともに斎藤晴彦と高橋悠治による「日本語で歌う『冬の旅』」も帰ってきます。再演はことしのおわりの2日間、12月30日と31日に神楽坂のシアターイワトで。二日とも19時開演、入場料は3500円、100人限定です。今回はチラシもチケットも作りません。info@suigyu.comまでメールでご予約ください。「冬の旅」を聞いてから初詣というのもおもむきがありそうですね。ご家族や友人を説得して、ぜひおでかけください。

11月8日、9日には「透明迷宮――高橋悠治piano×笠井叡coreography」があります。今回は笠井さんは振付のみで、踊るのは若いダンサーたち。西国分寺駅前いずみホールで19時30分から。前売り2500円、当日2800円。こちらもご予約はinfo@suigyu.comまでメールで、あるいは042-301-2510(天使館)へ電話でどうぞ。
2007年1月9日に仙台市青年文化センターでも公演します。19時開演。ご予約は022-224-6946まで。

それではまた!(八巻美恵)




2006年10月1日

10月はたそがれの国、と言ったのはレイ・ブラッドベリです。10月生まれのわたしの体内に最初に取り込まれたこの世の空気がたそがれの国のものだったことは、きっと何らかの影響を及ぼしているに違いない、と毎年10月になると思い出します。10月生まれのひとは賛成してくれるのではないでしょうか。

スリランカのスマナサーラ長老の説法の記録をときどき読みます。特におもしろいと思うのは「仏陀の智慧で答えます」というQ & A。小学3年生の女のこの質問「私は何のために生まれてきたのですか?」の答(の一部)は「もしも何か生まれてきた目的があるならば、それはだれよりも生まれてきた「わたし」が知っているはずです。もし「わたし」が何のために生まれたかとわからないならば二つのことが言えます。1.生まれてきた目的はない。2.もしあったとしても、それを知らなくても問題はない。(中略)何のためかと聞いても答えがありません。ただ、そのとき、そのときやらなくてはならないことをして生きているのです。」
こんなにむつかしい質問でなくても、答までの筋道はいつも冴えています。
「リラックスとは「のんびり、ゆっくり」という意味ではありません。「諦めず、めげず、イライラせず、明るく」ということです」というところを読んで、水牛はこれでいこう! と秘かに決めたのでした。

「水牛のように」を2006年10月号に更新しました。
タイでクーデターが起きたとき、森下ヒバリさんはタイにいるのかなと思いましたが、帰ってきた直後だったのですね。タイではクーデターがあり、ヨルダンとイラクの国境の難民キャンプは年末には閉鎖するようです。杉山洋一さんはモンツァからミラノへ、冨岡三智さんは奈良からソロへ引っ越し。移り変わりのときは新しいおはなしをもたらしてくれるときでもあります。

●恒例、江村夏樹さんのコンサートのお知らせです。
「江村夏樹のピアノコンサートに甲斐史子と西陽子が来る」
2006年11月4日(土)7時半開演
公園通りクラシックス(東京渋谷) tel 03(3464)2701
主催 太鼓堂 http://www.taikodo.info/
予約 太鼓堂 tel/fax 048(688)1102 mail taikodo@taikodo.org
詳しい内容は↓へ
http://taikodo.hp.infoseek.co.jp/emura.kai.nishi.2006.html

それではまた!(八巻美恵)




2006年9月1日

必要があって手にした雑誌「コヨーテ」の最新号が「フィンランドのみじかい夏」という特集をしていました。トーベ・ヤンソンが夏をすごしたクルーブ島の小屋の写真を見ているうちに、こころ動かされて短篇集のはじめにある「夏について」を読み返しました。
「わたしの記憶はどうしようもなく頼りなくて、日付やできごとはするすると抜けおちて、何年もあったはずの子ども時代は、ただひとつの長い夏として思いだされてしまいます。」トーベ・ヤンソンが言うように、わたしの子ども時代もひとつの長い夏のよう。寒冷地に住んでいたこともあったのに、ぜったいに夏であるのは、夏休みというもののせいかもしれません。

水牛の9枚目のCD『記号説/う・む――高橋悠治による北園克衛と足立智美による新國誠一』を発売しました。高橋悠治と足立智美が自分の声とコンピュータなどを使って、北園克衛と新國誠一を音楽にしました。ぜひ聞いてください。
9月23日(秋分の日)にはCDの発売を記念して二人のライブを予定しています。午後3時から渋谷のアプリンクファクトリーで。詳しくはこちらをごらんください。
9枚目を無事に発売して、適当に、いい加減に、をモットーに、CDはまだ何枚かの企画がゆっくりと進行中です。世の中からはあまり評価されないモットーかもしれませんが、ほんもののインディーズとしては欠かせない大事なこと。ピシリとかたにはまっては何のいいこともないと思うのです。

「水牛のように」を2006年9月号に更新しました。
夏のおわりは忙しいひとも多く、今月は少ないかなと思ったのですが、それでも9人が書いています。少なくはありませんね。
「製本、かい摘まみましては」の四釜裕子さんには『記号説/う・む』のデザインをお願いしました。原稿を書いたりデザインをしたり、こき使われているというわけです。
今月は水牛のひとたちのブログをまとめてご紹介します。
佐藤真紀さんのブログ「クロヨン平和主義」
四釜裕子さんのブログ「bookbar5」
御喜美江さんのブログ「道の途中で」
片岡義男さんのブログ「ペーパーバックの数が増えていく」

それではまた!(八巻美恵)




2006年8月1日

時期が来て羽化したせみが、長びいた梅雨の終わりに、力なく鳴く声。土の中からやっとっ出てきたのに、ほんとの夏を知らないまま寿命がつきたのもいるのかもしれません。

「冬の旅」以来になりますが、9月1日に新しいCD『記号説/う・む』を発売します。?(ハテナ)という感じのタイトルですが、「高橋悠治による北園克衛と足立智美による」というサブタイトルがちゃんとついています。「記号説」は北園克衛の、「う・む」は新國誠一の詩のタイトル。松井茂さん企画のライブから、ほぼ3年がかりで世に出ることになったのはナヤ・コレクティブの協力のおかげです。まるでせみの羽化のよう、と思いつつ、寿命はできるだけ長くあってほしいものだと願います。詳しい内容は発売のときにお知らせします。楽しみにしていてください!

「水牛のように」を2006年8月号に更新しました。
スラチャイのシーブラパー賞に乾杯! 「生き方がすぐれていて人びとの手本になっていること」も条件のようで、荘司和子さんのように、まずわっはっはと笑えてくるものの、でもよく考えてみると、いつも旅に暮らすその生き方には感服もしているのです。お手本にするのならば、ああいう生き方がいいな。1986年にスラチャイの『メイド・イン・ジャパン――タイ・カラワン楽団の日本旅行記』が新宿書房から出ていて、日本のこと、詩、そして短篇などが収録されています。訳したのは荘司和子さん。アマゾンにはないので、古本屋さんで探してみてください。

それではまた!(八巻美恵)




2006年7月1日

中国武術の老師の演舞を何度か見たことがあります。ゴム底のごくふつうの運動靴をはき、体育館の床の上で演舞する老師の足音はほとんど聞こえません。ふしぎに静かな激しいうごきは強さを実感させてくれるものでした。「高橋悠治piano×笠井叡dance『透明迷宮――色を纏って』」、バッハのフーガの技法の演奏とともに踊る笠井叡さんの足音も、意識的にたてるとき以外はほとんど聞こえません。強い武術家と共通するからだなのだと思います。セッションハウスでの公演はまだ2回あります。7月7日(金)、21日(金)の20時から。第1夜の写真がすでに公開されています。

「水牛のように」を2006年7月号に更新しました。
いつも感じてはいることですが、水牛の書き手には世の中のメインストリームを歩いているひとはひとりもいないといっていいと思います。でもね、それがいいのです。
「いま収穫したばかりのたくさんの魚を長く保存するにはどうしたらいいと思う? それは、たくさん収穫できた魚を自分一人で食べてしまうのでなく、まわりの人たちにおすそ分けすることだよ。自分が魚を獲れなかったときは、今度はまわりの人たちが分けてくれるだろう」(『イサーンの百姓たち―NGO東北タイ活動記』より)
東北タイのおじいちゃんが孫にいいきかせたという、こういう考えかたに寄りそうには、自分のいる場所や歩く道を選ばなくてはなりませんからね。

それではまた!(八巻美恵)




2006年6月1日

5月28日の午後、港大尋さんとがやがやの公演「がやがやremix ちょっと名前を食べてみると」を見ました。いっしょになにかをしながらそれぞれがそのひとそのものであるとしか言いようのない魅力。「がやがや」というグループの名前はその魅力をすっきりと伝えていて、その証拠にがやがや度は客席にもしだいにまんえん、盛大な笑い声や話し声もきこえてきました。「悩ましい 狂おしい わたしはわたしをもてあます」と歌う「てぃだ」は恋の歌のようですが、がやがやのひとたちの歌は、21世紀を生きていれば、恋にかぎらずいろんなところで「悩ましい 狂おしい わたしはわたしをもてあます」のだよなあと、しみじみ感じさせてくれるのでした。

がやがやの楽しさがまだ体に残っている帰り道、この春に知り合いになった女性のことを思いだしました。彼女はずっと入院暮らしをしています。入院暮らしということばがあるのかどうか疑問ですが、1月に手術をしてからずっと退院することができないままなのですから、やはり入院暮らしというのがふさわしいと思います。半年たっても退院の見込みが立たないため、彼女は借りていた部屋を追い出されました。家具などは処分してしまい、着替えや身の回りのものだけは紙の袋に入れて、ベッドの脇に置いてあります。そして郊外にあるホスピスのベッドがあくのを待っています。スタバじゃなくてドトールが好き、という彼女のために、病院の中にある喫茶店でいれたてのコーヒーをテイクアウトして、彼女の部屋に持っていき、それを飲みながらちょっとおしゃべりをします。

もうだいぶ前のことですが、『弱くある自由へ』という本を読みました。例によって、内容はほとんど忘れてしまったけれど、タイトルは忘れられません。28日は、弱くある自由というのがよくわかった、そんな一日でした。

「水牛のように」を2006年6月号に更新しました。
インドネシアのソロ(スラカルタ)に滞在中の冨岡三智さんから地震の報告が届きました。神々の怒りがおさまりますように。
スラチャイは文学賞を受賞したようです。すごい!
がやがやの当事者がわの報告を小島希里さんが書いています。がやがや的ですね。

最後にお知らせを2つ。
●高橋悠治piano×笠井叡dance「透明迷宮――色を纏って」
(音楽はバッハ「フーガの技法」初期本全曲)
 くねりのたうつ色 と ちぎれとぶメロディー(高橋悠治)
 色と音とカタチのブラックホール(笠井叡)
6月25日(日)17.00
6月30日(金)、7月7日(金)、21日(金)20.00 
前売・予約3,000円 当日3,500円
4回連続券(10席限定、要予約)10,000円
セッションハウス
mail@session-house.net
tel. 03-3266-0461 fax 03-3266-0772

●辺見庸講演会「憲法改悪にどこまでも反対する」
6月24日(土)開演午後6時30分
大阪市中央公会堂(中之島公会堂)当日1200円(前売り1000円)
詳細やメッセージは主催の辺見庸講演会実行委員会をごらんください。

それではまた!(八巻美恵)




2006年5月1日

自分のペースで歩きながら、4歩で口から息を吐き、次の4歩で鼻から息を吸う。かんたんな歩く気功です。5分も歩いているうちに、いろいろな若い緑のかおりのする大気がからだ中に満ちてきます。そうやって歩いて郵便局へ行ったついでに、少し足をのばして、BOOK OFFにも寄ってみます。目的は100円コーナーをくまなく見ること。新刊とはちがうおもしろいものを見つけやすいコーナーだと思うからです。最近のヒットは田辺聖子『人生の甘美なしたたり』。二百数十冊もある著書から作者じしんがあつめたアフォリズムのようなものです。いちばんみじかいのは「良心は悪。」というもの。う〜む、賛成です。「人生は非常時の連続である。」はともかく、そのとなりに並んでいる「人生は非常識の連続である。」には笑ってしまいました。ほんとにその通り。「アフォリズムを〈ある発見〉と訳したらどうだろう。」というのもちゃんとあります。カンペキ!

「水牛のように」を2006年5月号に更新しました。
小島希里さんの連載に登場するグループ「がやがや」の公演があります。Yちゃん、Tさん、K君やI画伯に会えるかな。イワトプロデユース「港大尋の3日間」の3日め、5月28日(日)「がやがやremix ちょっと名前を食べてみると」。出演は港大尋、がやがや(ヴォーカル&ダンス)、花崎攝(うた)。15時開演です。あとの2日は、5月26日港大尋「弾き語りの日 アリストテレスをくすぐってみたい」、27日「ソシエテ・コントル・レタ こんにちわ、シドニー・ベシェ!」。ともに20時開演。会場および詳細は神楽坂のシアターイワトのスケジュールをごらんください。楽しみです。
御喜美江さんはしばらく充電中。そのあいだは彼女のブログを楽しんでください。
佐藤真紀さんのあたらしい著書は『戦火の爪あとに生きる』といいます。これから読みます。

それではまた!(八巻美恵)




2006年4月1日

花冷えの夜は冬よりもさむい感じがしますね。

本屋で文庫本をみていて、『君あり、故に我あり(YOU ARE THEREFORE I AM)』という魅力的なタイトルを見つけました。デカルトの「我思う、故に我あり」の反対です。「その本なら家にあるぜ」と隣にいた家の者がいうので、買わずに帰り、家にあったその本を読んでいます。サブタイトルに「依存の宣言(A Declaration of Dependence)」とあるように、自立や分離や対立ではなく関係や共感をみる哲学。著者サティシュ・クマールはインド生まれで、この本はみずからの記憶を娘に語ったものだそうです。娘による父親の聞き書きです。貧しさが問題なのではない、問題なのは富だというみかたは世界を裏返すと思います。バナナを一本しか持っていないひとはその半分をくれる、でもトラック一杯持っているひとは一本もくれない、と言ったのはインディオのアユトンだったかな。

「水牛のように」を2006年4月号に更新しました。
「大切なわたしのともだち」と「リカちゃんイラクへいく」と「身体と「社会的なるもの」の変化」とが並んでいること、これが水牛です。
四釜さんが紹介している『手で作る本』(山崎曜)はわたしも発売と同時に買いました。よくできた実用書はまず見て美しく、そして自分でもできると思わせてくれるところがすてき。オンデマンド本というのは最近あまり話題になりませんが、技術は進歩しているようなので、そういう最新技術と手作りの部分を組み合わせて、「水牛のように」のあれこれをきれいでちいさなブックレットにしてみたいなあと水牛出版の夢もふくらむのでありました。

●江村夏樹さんのピアノコンサート「春の挽歌」のお知らせです。
 4月15日(土)公演通りクラシックスで19:30から。
 フィリップ・グラス、ショパン、江村夏樹、ストラヴインスキーなど。
 詳しくは太鼓堂をごらんください。

それではまた!(八巻美恵)




2006年3月1日

わが家の居間の壁には「姉妹たちよ 女の暦2006」というカレンダーがかかっています。2月はずっと大沢豊子さんを見ながらすごしました。さきほどめくった3月は松本恵子さん(1891〜1976)、翻訳家であり、日本ではじめて創作探偵小説を発表した女性です。「8人の姉妹兄弟と、動物好きの母が飼う猫、犬、小鳥、猿、兎と共に育つ。子どもの頃から客の靴に蛙を入れるなどは朝飯前のいらずら好きで、思ったままを口にし行動するので「ケイスケ」と呼ばれた。」と解説にあります。じっさいに中野圭介という筆名でもミステリを書きました。ははは。断髪・洋装の写真のとなりにおかれた「目の前に猫がいれば、自分たちだけが魚を食べるわけにはいかない。」ということばにもユーモアがただよっていて、3月にふさわしい。こどものころ読んだ『あしながおじさん』や『若草物語』はこのひとの訳だったのかもしれません。『松本恵子探偵小説選』や猫の随筆も読んでみようと思います。

「水牛のように」を2006年3月号に更新しました。
今月は御喜美江さんのコンサート「「アコーディオンワークス2006」があり、杉山洋一さんの合唱曲「「ひかりの子」の初演(東京混声合唱団第204回定期演奏会)があります。水牛に載せているテキストはいつでも何度でも読むことができますが、コンサートはそのとき一度限りのものです。ぜひお出かけください。かれらの音はかれらのテキストにどこか似ているようにも思えます。ふだんは遠くにいるふたりが東京にいるあいだに、水牛のオフ会をやってみようかしら。青空文庫オフ会の幹事役で鍛えた技(笑)が活かせます。
「テントの中のバレンタイン」はJIM-Net(日本イラク医療支援ネットワーク)で公開されているものです。「限りなき義理の愛作戦」はホワイトデーに向けて続行中。

それではまた!(八巻美恵)




2006年2月1日

この冬の「冬の旅」の旅公演はすべて終了しました。各地でこのコンサートを引き受けてくださった主催者のみなさん、そして聞きにきてくださったみなさん、ありがとうございました。
自分の部屋にいて、コンピュータや電話で事前にあれこれ打ち合わせをしていると、まだ見ぬ会場やピアノに一抹の不安を感じることもありました。会場はコンサートホールから喫茶店まで、いろいろでしたから。でも、実際に出かけていった先では、不安を感じることは何ひとつありませんでした。出演者とスタッフと観客とを包みこむ「冬の旅」というコンサートのぜんたいは、約1時間だけ咲く大輪の花のようなもので、そのときそこにいるひとだけが見ることのできるものです。かすかな不安はその種子の一部だったのかもしれません。
全部で15ステージ、リハーサルもいれると少なくとも40回くらいは聴いたことになりますが、まだ飽きるということがありません。「冬の旅」は日本ではこう歌われるのを待っていたのだという気もします。次の冬にもまたどこかで。
歌うひとに徹していた斎藤晴彦さんがNHK教育テレビのN響アワーに出演します。コンサートでは一言も話さなかった斎藤さん、番組ではゲストで「冬の旅」について語るそうです。楽しみですね。放送は2月26日(日)の予定です。

「水牛のように」を2006年2月号に更新しました。
こちらでは高橋悠治さんが「冬の旅」について書いています。「歴史を知らなくても、「冬の旅」によって今の時代を語ることができる」と。コンサートを聞き逃してもCDは手に入りますよ。
アジアのごはんの森下ヒバリさんは京都に住んでいます。そして夏は京都の暑さを逃れてタイに行き、冬は寒さを逃れてタイに行ってしまうのです。暖房のためにお金を使うよりいいかも。イエンタフォーの謎はとけたのでしょうか。
2月はチョコレートの月。JIM-Netの佐藤真紀さんたちは「限りなき義理の愛作戦」を展開しています。いつもながら、アイデアに乾杯! そもそもプレゼントにはアイデアがなくてはつまらない。こういうチョコレートをもらって喜ばない相手なら、その場で見限りましょう。

1月には「透明迷宮」(高橋悠治piano×笠井叡dance)もありました。天使館と水牛との主催というかたちで、あまり宣伝もしなかったのに若いひとがたくさん来てくれて、ほぼ満席。出演者の力は別にして、あまり宣伝しないという宣伝方法があるのかもしれないと、ちょっとかんがえさせられた夜でした。

それではまた!(八巻美恵)




2006年1月1日

あけましておめでとうございます。
前の年におなじあいさつをしてから、ほんとうに365日もあったのかしらと思うほど、過ぎてしまった1年はあっという間のように感じられますね。

この冬がこんなに寒いのは「冬の旅」ツアーのせいではないのか、あれが寒さと雪を運んできたにちがいないという噂があるそうで、噂としてはロマンティックすぎるけれど、なんだかすてき。たぶん出所は北海道でしょう。着いたその日に深川あたりで吹雪に迎えられ、それからは行く先々で雪に歓迎されましたから。舞い降りてくる雪のひとひらは小さく固く凍っていて、顔にあたると痛いほど。そのひとひらひとひらが積み重なった状態は美しいものでした。しかしその後はちょっと限度をこえて降り過ぎで、美しかった雪景色はおそろしいものに変貌しているのではないかと思います。
「芸術新潮」2006年1年号に冬の旅のふたりのインタビューが載っています。インタビュアーは津野海太郎さん。東京での公演当日のふたりの写真もあり。斎藤さんはコンサートでは歌うのみでひとこともしゃべりませんから、コンサートにいらした方もこれからの方も楽しめるインタビューだと思います。今月は山形、遠野、花巻、盛岡、葉山に行きます。北海道より寒そうでどんな旅になるのか楽しみです。

「水牛のように」を2006年1月号に更新しました。
新しい年のはじめにふさわしくにぎやかになりました。北海道で見た雪という結晶のようにそれぞれきらきらと降ってくるようです。笑わないアヤちゃんとけらけら笑う満月。この世にやってくるちいさなひとたちが満月のように笑える日があるようにと願わずにはいられません。
初登場の小島希里さんは翻訳家です。最近出た『象がおどるとき』はおもしろそう。作者のテス・ウリザ・ホルスはサンフランシスコで生まれたフィリピン人二世で、日本軍に占領されたフィリピンが舞台のこのストーリーを、フィリピンには一度も行かずに書いたということです。希里さんのおとうさんは木島始さん。それで彼女とも昔から知り合いなのですが、「がやがや」のことはつい最近知りました。海外公演までしている「がやがや」とはなになのか、続けて書いてほしいと思っています。

ことし最初の水牛の仕事はきょうの更新ですが、次は1月26日(木)の「透明迷宮」(高橋悠治piano×笠井叡dance)です。国分寺いずみホール(JR西国分寺駅前)で、19時30分から。入場料は1500円です。ふたりのこころみを天使館と水牛が支援します。ご予約はお名前と枚数を明記してinfo@suigyu.comまで。

ATAKから新作CD発売の予定です。
ATAK007 yuji takahashi + keiichiro shibuya + maria
1月25日発売、2200円(税込み)、全20曲55分58秒、distributed by art union/u-pop records。「高橋悠治+渋谷慶一郎+mariaによる演奏と作曲、即興とテクノロジーの交差する究極のライブ盤です。」とのこと。

それではまた!(八巻美恵)





e-mail info@suigyu.com

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