◆12月1日◆
小説を書くうへに於ては、寧ろ夏よりは十一月十二月もつと寒くなつても冬の方がいいやうだ。また書く上ばかりでなく、書くまでの段取を火鉢にあたりながら漫然と考へてゐるには今頃が一番いいやうだ。(中略)それにその時分は襖だの障子だのがたて切つてあるものだから、自分の思想や情緒とかいふものが、部屋の中から遁出してゆかないやうな安心した処があつてよく書ける。
(「一番気乗のする時」芥川龍之介)小説家もいろいろですね。
「水牛のように」を2010年12月号に更新しました。
璃葉さん、ようこそ! これまで出来るかぎり画像を使わないでやってきたのですが、ほんの少し、こういうのもあるといいかなと思い始めた2010年の初冬。
「クレイジー・ハート」に心を奪われたのは若松恵子さんだけでなく、ツイッター情報では植松眞人さんも。ふたりとも飯田橋ギンレイホールで観たのでしょうから、隣り合わせにすわっていたこともあり得ますね。世界はそんなにも、狭い、というのか、広い、というのか。
ジャワ島のムラピ山が噴火したニュースは、あの911の二日後に行ったインドネシアのことを思い出させてくれました。出国も入国もさしてきびしくなく、イスラムの国は落ち着いたものでした。ムラピ山の麓をバスで通ると、噴煙をあげている活火山の中腹あたりまでたくさんの家がはりついていて、赤茶色の瓦と山とが調和して美しかったけれど、噴火したら危ないなと感じたのもたしかです。あの旅のときいっしょだった高田和子さんと西沢幸彦さんはすでにこの世の人ではないのだなあと思ったりしていると、ツイッターの窓にKrishnamurtbotがあらわれてこう言われました。「あなたが知っているのはすでに終わったもの、完了したものである。あなたが知っているのは昨日だけであって、我々が問題にしているのは、あなたが知らないものからはじめて、そこから生きたらどうか、ということである。」大晦日は「冬の旅」ですよ。
イワトでの公演はことしでおしまいです。訳者のひとりである山元清多さんが亡くなった、その追悼の公演でもある、と個人的にはとらえています。「冬の旅」の詩を日本語に訳そうということになって、みんながそれぞれ訳したい詩を選んだのちに、残ったものすべてを引き受けたのが山元さんでした。プロだなあと思ったものです。大晦日ですから、予定のつかないことも多いと思います。予約なしでも、当日、その気になったら、迷わずいらしてください。●杉山洋一さん関連の情報三つ
ポック#4平義久×杉山洋一「平義久歿後5周年追悼公演」
2010年12月15日(水)19:00開演 門仲天井ホール 前売 学生2000円 一般2500円 当日学生2500円 一般3000円
平義久「ソノモルフィー I」「鐘楼」「ピアノロジー」 杉山洋一「君が微笑めば、それはより一層澄んでゆく」「間奏曲Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・V」「ビオンディネッタ」「翔る」
出演:大井浩明(pf)
お問い合わせ:合同会社opus55 tel 03(3377)4706東京混声合唱団223回定期演奏会
2010年12月17日(金)19:00開演 東京文化会館小ホール 学生2000円 一般4000円
ジェラール・ペッソン「いかなるドイツの空も」杉山洋一「ひかりの子」フランシス・プーランク「人間の顔」
出演 : 東京混声合唱団 杉山洋一(指揮)
お問い合わせ:(財)合唱音楽振興会 tel 03(3226)9755 ticket@tokyo-concerts.co.jpSylvano Bussotti 「Autotono」 STR 33884
2年前にブソッティ訪日した折のライブ録音CDが発売になりました。日本の店頭に並ぶのはもう少し先かも知れませんので、アマゾンmp3のリンクを添付します。図形楽譜が美しい「Autotono」やブソッティ自身がアンコールで歌った「そして小鳥さんが」などを収録しています。
出演 シルヴァーノ・ブソッティ、安江佐和子、太田真紀、吉川真澄、尾崎かをり、柿本竜二郎、大貫浩史、松平敬、藤井大輔、新垣隆、mdi
Ensemble、杉山洋一その他
http://bit.ly/hMMaHY http://amzn.to/dYhcFf●江村夏樹さんのコンサート
書かれた即興〜 江村夏樹ピアノ独奏+2人の管楽器奏者たち 〜
2010年12月22日(水)19:00 門仲天井ホール 前売り 2800円 当日 3300円 当日学割 1000円(学生証をご用意ください)
シェーンベルク:6つのピアノ小品、江村夏樹:4つの、書かれた即興、シューマン:アラベスク、ケージ:オフェリア、など。
出演 江村夏樹(ピアノ) 日高和子(クラリネット) 山本ヤマ(トランペット)
詳しくは太鼓堂次の更新は2011年の最初の日。これから師走が始まるいまは、まだ実感のないひと月後ですが、良い年をお迎えください!(八巻美恵)
◆11月1日◆
十一月十日
冬になる。空は拡がり、山々はいよいよ近くなる。その山々の上方だけ、雪雲らしいのがいつまでも動かずにじっとしているようなことがある。そんな朝には山から雪に追われて来るのか、バルコンの上までがいつもはあんまり見かけたことのない小鳥で一ぱいになる。そんな雪雲の消え去ったあとは、一日ぐらいその山々の上方だけが薄白くなっていることがある。そしてこの頃はそんないくつかの山の頂きにはそういう雪がそのまま目立つほど残っているようになった。
(「風立ちぬ」堀辰雄)風立ちぬ、いざ生きめやも。昔は愛読しましたが、いま、もっとも遠くに感じられる堀辰雄の「私達の生の幸福を主題にした物語」です。節子さんはサナトリウムで死んでしまうけれど、主題は生の幸福なのですね。
「水牛のように」を2010年11月号に更新しました。
しもた屋の杉山洋一さんの曲が初演されます。
●アンサンブルPLUS第5回公演「松原千振コレクション」
2010年11月7日(日)13:00開演 日本赤十字看護大学広尾ホール 全席自由 前売3500円・当日4000円
ジェズアルド「めでたし、柔和なマリア」「めでたし、天の元后」、シューマン「流浪の民」R.シュトラウス「7つの歌」より、ミヨー「神の約束」、ラウタバーラ「言葉の遊戯」、ヌンミ「5つのマドリガル」よりAve Maria、杉山洋一 尾形亀之助による新作《色ガラス歌集》初演 出演: 松原千振(cond) 太田真紀-松崎ささら(sop)三宮美穂(alt)大貫浩史(ten)宮田圭一(bs)新垣隆(pf) お問い合わせ:ensembleplus@gmail.comことしも大晦日は「冬の旅」で。
このちらしはいつものように平野甲賀さんのデザインです。去年の大晦日の「冬の旅」のチラシを再利用しているのが新たなこころみで、おかしい。老眼鏡のレンズの端でゆがんだ文字はわたしには慣れ親しんだもののはずですが、こうしてデザインに取り入れられると、はじめて見るような気もします。今月はお休みの四釜裕子さんと八巻との4+8コンビによる製本ワークショップは11月21日(日)におこないます。いつものイワトの2階で、午後1時から5時までの予定です。自作の本を手にしている自分を想像してください。けっこう楽しいのです。
きのうは坂本龍一さんのピアノソロをシアトルからのUstで見ました。ぜんたいに静かなピアノで、ステージも静か。それをリアルタイムで見ている、というのが録音されたものを聞くのとは違ってとてもいい。音も映像もときどき途切れたりするのにね。iTune収録用のPA卓からダイレクトに配信したとのことでした。そのうち水牛でもやってみよう。来年の課題です。
それではまた!(八巻美恵)
◆10月1日◆
秋は雨とともにやってきました。東京はほぼ毎日どんより。あのぎらぎらの猛暑がちょっぴり懐かしくなったりしませんか?
「水牛のように」を2010年10月号に更新しました。
ニューフェイスが二人。植松眞人さんはコピーライターであり小説家でもあります。作品のいくつかは青空文庫に登録されています。毎年青空文庫のオフ会で顔をあわせてはいたものの、つい最近になって彼が藤井貞和さんの愛読者だということをツイッターを通じて知り、あれこれつぶやきあっているうちに書いてもらうことに成功しました。この夏には『ネコのマロン、参院選に立つ』も出版されているのに、ネコが怖いとは。。。この先どうなるのか、楽しみです。
藤山敦子さんは「水牛通信」1984年6月号を入力してくださいました。ファイルといっしょに送られてきたメールがおもしろくて、転載をお願いしたのです。トップページの「水牛」のロゴが喚起する個人的な思い出にはいろんなものがあるものです。というわけで、「水牛通信電子化計画」では1984年6月号を公開しました。藤山さん、ありがとう。あのときからもう26年ですね。
秋の風とともに管啓次郎さんの第一詩集『Agend'Ars アジャンダルス』が届きました。ざらっとした紙に16行詩が64篇。詩集の軽快なたたずまいは「詩の読み書きは私たちを絶えずエレメントの力にさらし、そのまま次の行動へと駆り立てる」ことを意図しているかのよう。
そしてきょうの便でサウダージ・ブックスの新刊『マイケル・ハートネット+川満信一』がやってきました。これは「非営利出版プロジェクト」叢書群島詩人の十字路の2冊目です。これも薄いちいさなかたちの詩集であるところが、少なくとも私にとっては好もしい。
知らぬ間に藤井貞和さん(今月はサダリ・フジイックという名のようです)に舵をとられて、水牛は詩の方向へぐっと傾いているような気がしてきました。それでは、また!(八巻美恵)
◆9月1日◆
ほんとに暑い夏、9月といえども終わりそうな気配がありません。
きょういちにち暑いのはキビシい残暑としてやり過ごしてしまえばいいけれど、天気予報を見ると一週間先まで33度とか34度とかいう最高気温の数字が並んでいて、がっくり。いやはや。。。「水牛のように」を2010年9月号に更新しました。
このごろ藤井貞和さんの原稿は毎月ちがう名前で送られてきます。今月はフージー・ジョーワ。本名よりもご本人にぴったりな気がするのはなぜでしょうか。
管啓次郎さんの「犬狼詩集」は今月で14篇になりました。しかし16行詩はすでに書き溜められていて、今月には詩集としてまとめられるそうです。『Agend’Ars』というタイトルで左右社から発売の予定です。
くぼたのぞみさんは今月も詩作は夏休み状態です。翻訳したチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『半分のぼった黄色い太陽』が無事に出版され、しかも「国際ペン東京大会」のためにアディーチェが来日することもあって、忙しそう。『半分のぼった黄色い太陽』は2段組500ページとみっしりと詰まっています。こういう本に出会うと、読んでも読んでも終わらないのがとてもうれしかった若い頃を思い出します。
杉山洋一さんとは近くにいながら会えなかったこの夏。次の東京は12月らしいので、それにあわせて水牛のオフ会をしてみようかと思いつきました。実現できたら楽しそう。「水牛通信」電子化計画にも出来上がっている一冊があるのですが、諸般の事情により来月更新とします。入力してくださった藤山さん、お待たせしてごめんなさい。
それではまた!(八巻美恵)
◆8月1日◆
夏になにかをやろうと決めるのはその前の冬か春のはじめなので、たいてい暑さそのもののことを忘れています。「影の反オペラ」も例外ではありませんでした。リハーサルのころから暑さがやってきて、本番では梅雨もあけて、ことしの夏のきびしさが始まったのでした。なぜわざわざこの暑いときに、と我が身の考えの浅いことにがっくり。体調を崩したひとや、友人や身内の突然の不幸で来られない人などのキャンセルの連絡がいつになく多かったのも心に残ります。見られなかったひとたちのためにも、いつかどこかで再演されることを望みます。
「水牛のように」を2010年8月号に更新しました。
影の反オペラの記憶が新しいので、冨岡さんの苦労は身にしみてよくわかる。困難だけでなく喜びの大きなことも含めて、わかりすぎです。
大久保ゆうさんが著作権についての本『Think C×C』を出しました。電子本とオンデマンド本があるらしいのですが、販売サイトの理想書店でもヒットしません。まだ登録されていないのでしょうか。。。
手製本に求めるのは〈平明直截な美〉。四釜さんと八巻との4+8コンビの理想です。「影の反オペラ」に、演奏された三つの曲の詩(歌詞)を載せました。
少し時間がたってから、あらためて歌われた詩を読んでみるのもいいと思います。波多野さんの声が記憶から立ちあらわれてくるところがあったり、はじめてお目にかかると感じるところがあったり。楽しんでください。●佐藤真紀さんから
8月7日NHK総合の海外ネットワークという番組で、ワークショップの様子が紹介されます。時間は6時10−6時42分。
お時間ありましたら見てください!●杉山洋一さんが指揮します。
サントリー芸術財団サマーフェスティバル2010<MUSIC TODAY21>音楽の現在「管弦楽」8月25日(水)19:00開演
イエルク・ヴィットマン:コン・ブリオ(2008) <日本初演>
エンノ・ポッペ:市場(2008/09) <日本初演> マルティン・スモルカ:テューバのある静物画又は隠れた沈黙(2007-08)<日本初演>
ブリス・ポゼ:バレリーナ、交響曲第5番(2008) <日本初演>
指揮 杉山洋一 出演 橋本晋哉、佐藤潔(Tub) 演奏
東京都交響楽団 料金 S4,000 A3,000 B2,000 問合せ 東京コンサーツ03-3226-9755●片岡義男さんの最新短編小説集『階段を駆け上がる』のトークイベントがあります。片岡さんのトークのお相手は翻訳家の鴻巣友季子さん。
9月11日(土)15時〜17時、東京神保町の東京堂書店で。詳細
『階段を駆け上がる』には神保町が主人公のひとりとも言えるストーリーがあり、東京堂も出てきます。それではまた!(八巻美恵)
◆7月1日◆
東京はあまり雨の降らない梅雨、きょうも朝から晴天です。
朝起きるとすぐにPCのパワーボタンを押し、ツイッター用のソフト「夜フクロウ」をアクティブにして、そしてチェックするのはいしいゆかりさんが毎朝短く書いているきょうの星について。今朝の天秤座にはこんなことが書いてありました。
「実務的な忙しさがある。いろんなスイッチやレバーを引いて引っ張り起こしたりする。あと、新しいやり方を覚える、っていう感じもある。手法を盗むような感じ。すぐに試せて、効果があったりする。」
実務的な忙しさとは「影の反オペラ」のことだと勝手に決めて、勝手になるほど、などと思うわけです。せっかくの機会なので美しいステージを作ろうと相談したり、波多野さんの衣装を選んだり。順調に予約をいただき、16日(金)は満席となりました。17日(18時開演)、18日(15時開演)はまだ少し残席があります。お早めに予約を!「水牛のように」を2010年7月号に更新しました。
今月の巻頭は藤井さんの「美(ちゅ)ら、二」です。反ツイッター的テキストだなあ、としみじみ。
水牛の側に「実務的な忙しさ」があるように、書き手のみなさんにもいろんな忙しさがあるはずです。それでも月末になると、思い出したように原稿やイラストが届くのです。こうしたつながりかたはお金がまったくかかわっていない仕事だから出来ることなのでしょう、きっと。片岡義男さんの新しい短編小説集『階段を駆け上がる』(左右社)は来週には本屋さんに並ぶようです。表紙の絵は本山賢司さん、そしてデザインは片岡さんご自身です。楽しい仕事でした。でも実はすでに次のプロジェクトにとりかかっています。働きものの私たち。
コンサートのお知らせふたつ。
●安江佐和子マリンバ・パーカッションリサイタル 2010
2010年7月17日(土)18:00開演/18日(日)14:00開演
東京オペラシティリサイタルホール 5000円 学生2000円
共演:東京パイプバンド
杉山洋一:Don't forget Saro Wiwa (委嘱新作初演)
G.マニャネンシ:Tamas
Jacob TV:The Body of your Dream
杉山洋一:Tree-nation
バグパイプと共に:スコットランド トラディショナル音楽
I.Xenakis:Psappha
お問い合わせ:東京コンサーツ 03-3226-9755●うたって 〜 太鼓堂 江村夏樹作品コンサート
2010年7月20日(火)19:30開演
公園通りクラシックス tel 03(3464)2701
3000円(予約2500円)学生1000円(学生証提示)
江村夏樹:うたって(2010) 女声
:四角い4つの楽章(2010) 4つの楽器
アラム・ハチャトゥリアン:トッカータ(1932)
松村禎三:巡礼 I、II(2000) 以上2曲ピアノソロ
出演 日高和子(クラリネット)/松本健一(ソプラノサックス)/山本ヤマ(トランペット)/柴田暦(声)/江村夏樹(ピアノ)
ご予約・お問い合わせ 太鼓堂 taikodo@taikodo.orgそれではまた!(八巻美恵)
◆6月1日◆
心のうちに落ちてゐるとのみ思つてゐた雨は、外にも同じやうに降りしきつてゐるのでした。薄暗い庭の片隅に、紫陽花が花も葉もぐしよ濡れに濡れそぼつて立つてゐるのが見えます。幽界の夢でも見てゐるやうな、青白い微笑を眼尻にもつてゐるこの花は、梅雨時になくてならないものの一つです。くちなしの花、合歓の花——どちらも昼日なか夢をみる花ですが、紫陽花のやうに寂しい陰鬱な夢をみる花はほかにはありません。
(「雨の日に香を燻く」薄田泣菫)
「水牛のように」を2010年6月号に更新しました。
東京にはまだ梅雨はやってきません。きょうはからりとよく晴れた気持ちのいい日ですが、気持ちがいいとばかりは言っていられない世界をどうするのか。それぞれの「わたし」がさまざまにためされていることを実感する今月の水牛です。
先月、完結ですと報告した「メキシコ便り」ですが、この通り、最後の原稿を以前にもらっていたのでした。金野さんの2年5か月のまとめを楽しんでください。今月でほんとうに完結です。
オトメンの「本ガール」はゆかいな構想ですね。ファッションは本の批評にもなると思います。写真もいいけど、ショーにしてやってみたらどうかしら。「メントール・ユーカリプト」を更新しました。
「赤いスカートの一昨日」を追加。片岡さんはこれから発売になる短編小説集の次の小説集もほぼ書き上げたそうで、その中のひとつの短編の主人公の女性が作中で作る詩だそうです。
きょう、6月1日は青空文庫でも『頬よせてホノルル』を公開しました。もっとどんどんやりましょう、と片岡さんはわたしを煽ってくれます。入力や校正のためにはある程度の時間は必要なので、どんどん、と音のするような具合にはいきませんが、継続します。「影の反オペラ」は曲も完成して、そろそろ練習もはじまります。なにもないところからの出発がどのように着地するのか、ぜひ目撃してください。そのときそんなふうにあらわれる夢みたいなものなのかもしれませんから。
波多野睦美さんのブログもどうぞ。
メールでご予約いただいた場合には必ずお返事をさしあげています。返信が届かなかったらご一報ください。それではまた!(八巻美恵)
◆5月1日◆
「日本も東京辺では四月末から五月初めへかけて色々な花が一と通り咲いてしまって次の季節の花のシーズンに移るまでの間にちょっとした中休みの期間があるような気がする。少なくも自分の家の植物界ではそういうことになっているようである。(……)不連続線の狂風が雨を呼んで干からびたむせっぽい風が収まると共に、穏やかにしめやかな雨がおとずれて来ると花も若葉も急に蘇生したように光彩を増して、人間の頭の中までも一時に洗われたように清々(すがすが)しくなる。そういう時に軒の雨垂れを聞きながら静かに浴槽に浸(ひた)っている心持は、およそ他に比較するもののない閑寂で爽快なものである。そういう日が年のうちに一日あることもあり、ないこともあるような気がする。そうだとすると生命のあるうちにそういう稀有な日を出来るだけしみじみと味わっておかなければならない訳である。」
(「五月の唯物観」寺田寅彦)いつもの年よりずっと荒々しい春が去って、きょうからはうるわしい五月。それもほんとうに五月らしいはじまりの日です。コンピュータに向かっているよりは陽ざしを感じながら浴槽にひたっているほうがふさわしい。希有な日はしみじみと味わっておかなくてはいけませんね。
「水牛のように」を2010年5月号に更新しました。
今月で金野広美さんのメキシコ便りは完結です。短いあいだにこんなにもあちこち旅行して、さらにそれについての原稿をちゃんと書き、しかもメキシコから帰ってきてからも、オーロラを観に出かけたりしている金野さん。バイタリティのある人だとは思っていましたが、これほどとは……。
片岡義男さんのインタビューは無事復活です。今回は夏に発売になる新しい短編小説集のあとがきを書くためのものでしたので、どんなふうになって原稿が届くのか、楽しみです。「影の反オペラ」についての情報を公開しました。平野甲賀さんのデザインはいつだって特徴のあるものですが、今回のちらしはそれにしても斬新なので、表と裏とをそのまま画像でアップしました。まずは、一つの声に潜むたくさんの声 よみがえる反権力の野の夢 という内容をちらしで読んでみてください。そう、これは「読む」ちらしなのです。2010年7月16、17、18日。出演は波多野睦美(声)、高橋悠治(ピアノ)、AYUO(ブズーキ)。会場のシアターイワトは「反オペラ」にはぴったりの小さな劇場です
公演はチケットレスです。予約をいただき、当日受付で清算していただきます。
ご予約は info@suigyu.com へ。それではまた!(八巻美恵)
◆4月1日◆
この 豚だって
かわいいよ
こんな 春だもの
いいけしきをすって
むちゅうで あるいてきたんだもの
(「豚」八木重吉)春は豚や水牛にも乗ったりして、ようやくやってきた気配です。
「水牛のように」を2010年4月号に更新しました。
柴田純子さんがモロッコから送ってくださった絵葉書を読んだとたん、ああ、これは水牛に書いてもらわなくては、と思ったのでした。文中にある「作曲家だった夫」とは柴田南雄さんです。もう明日にせまりましたが、こんなコンサートがあります。
管啓次郎さんからは「犬狼詩集」は管さん(か水牛)が死ぬまでは続くのである、という決意表明をいただいています。すごいなあ。そして杉山洋一さんの連載は今月で100回目を迎えました。すごいです。。。
先月片岡義男さんの『ラハイナまで来た理由』を青空文庫で公開しました。片岡さん自身の選択です。なぜそのように望んだのか公開の記念に書いていただいたものの転載です。インタビューのために待ち合わせていた日、通りをへだてた別々の喫茶店でお互いを待っていて、すっかりすれ違ってしまいました。どっちもどっち、ですね。来月はきっと。
笹久保伸さんのギターを聴いてみたくありませんか?4月17日(土)19時、近江楽堂でソロリサイタルがあります。詳細はこちら。7月には水牛主催で高橋悠治「影の反オペラ」を上演します。いままで見たことのないような斬新(すぎる)ちらしがすでに出来上がっているので、コンサート会場などで手にされることがあるかもしれません。近々、このサイトでも詳しい情報を公開しますので、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
それではまた!(八巻美恵)
◆3月1日◆
「春の野といえば、すぐにスミレが連想せられる。(中略)/スミレは今、いろいろのスミレの種類を総称するような名ともなっていれど、その中で特にスミレというのは、スミレ品類中一等優品で、濃紫色(のうししょく)の花を開く無茎性叢生種(むけいせいそうせいしゅ)の名であって、これを学名では、Viola mandshurica W. Beck. といっている。満州〔中国の東北地方一帯〕にも産するので、それで mandshurica(「満州の」という意味)の種名がついている。/そして日本にはスミレの品種が実に百種ほど(変種を入れるとこれ以上)もあって、これがみなスミレ属 Viola に属する。これによってこれを観(み)れば、日本は実にスミレ品種では世界の一等国といってよい。」(「植物知識」牧野富太郎)
友人にひとり、親類にひとり、すみれさんがいます。そういえば、また大地震に見舞われたチリにもビオレッタ・パラというすみれさんがいました。可憐というよりは野の花の強さを感じさせてくれる人たちです。「水牛のように」を2010年3月号に更新しました。
今月からいよいよ管啓次郎さんの詩が登場です。いよいよ、というのは、水牛のためにいつかきっと書く、と言われてその言葉を信じて待っていたから。詩は2編とも16行です。16行詩のシリーズが進行中だと管さんからのメールにありました。16行詩とはなにかと思っていたら、ほどなくアップされたスタンフォード大学での管さんを含む詩の朗読会のビデオで、ギモンは解消。16は4×4であり、4は四であり詩であり死である。
久しぶりに片岡義男さんからも詩が何編か届きました。メントール・ユーカリプトに加えるとともに、「水牛のように」にもひとつだけ載せてみました。置かれるところによって、詩の表情がかわるのは興味深いことですね。
というわけで、詩がにぎやかな春となりました。先月もお知らせしましたが、いわとひょうげん塾での製本ワークショップ4回めは3月14日(日)午後1時からです。ワークショップを始めることになった一年前には、終わったあとには各回ごとにきちんとマニュアルが出来上がっているといいなあと思っていたのですが、もちろん、そんなことはありませんでした。4(四釜)+8(八巻)の愉快派製本にはがっちりとしたマニュアルは必要ないこともわかってきました。必要だとすれば、おさえなくてはいけないところだけをメモしたもの、ほら、よくできている簡単なレシピのように。ワークショップは継続することになったので、愉快派でなくてはできないことを考えていこう、と春らしい決意を。。。
それではまた!(八巻美恵)
◆2月1日◆
「今はちょうど二月で如月でありますが、木更衣とも書きます。木が衣物を着換えるというような意味で、木の芽立ちのことをいったのかも知れない。「キサライ」というのは梵語でそのまま「木の芽立ち」という語であります。これは月の名ではないが、この言葉が移ったのだと思います。」(「東洋文化史における仏教の地位」高楠順次郎@青空文庫)
"A poet looks at the world as a man looks at a woman." Wallace Stevens というのはツイッターでのジョナサン・キャロルのつぶやきです。短い引用はもとの文脈からは離れてしまうかもしれないけれど、おもしろいと思います。
「水牛のように」を2010年2月号に更新しました。
片岡義男さんのインタビューのときに、当時何を食べていたのか聞かなかったと思い、別の機会にそれだけ訊ねてみたら、「餃子ライスです。餃子ライスとタンメンは労働者の食べ物でした。一日三食餃子ライスという日もあったなあ」と。1960年の餃子は2010年の餃子とは違って、ちゃんとした食べ物だったはずです。
佐藤真紀さんのJIM-NET「限りなき義理の愛大作戦」チョコレートはもうすぐ10万個を売りつくすらしい。すごいなあ。サブリーンが助けてくれた結果です。
笹久保さんのリサイタルは4月17日だそうです。来月には詳しくお知らせできるでしょう。
「意味に遊ぶな、いつかは暁ける」!!シリーズこの人に会いたかった第3巻 高橋悠治『ピアノは、ここにいらない 祖父と父とぼくの時代』(編集グループSURE)を水牛でも販売します。昨年の雛の節句の日、京都の工房SUREでの「高橋悠治を囲む会」の記録です。座談会には黒川創さんをはじめ、杉本秀太郎さん、山田慶兒さん、細川周平さんなどもいらして、長い時間「話に花が咲いた」のでした。
ご希望のかたはinfo@suigyu.comまでメールで申し込んでください。振替用紙同封でお送りします。1200円+送料です。
この全5巻シリーズは、書店では手に入りません。第1巻『人生に退屈しない知恵』(森毅・鶴見俊輔)、第2巻『「国」って何だろうか?』(室謙二)、第4巻『バーリンという名の思想家がいた』(那須耕介)、第5巻『アイヌ語のむこうに広がる世界』(中川裕)と全巻そろえたければ、SUREに申し込むとサービスがあります。SUREのサイトに詳しい内容がありますので、じっくりとご検討ください。管啓次郎『斜線の旅』(インスクリプト)が届きました。読んでいると、口を閉じて静かにしていたくなります。ひとり静かに遠くにいける。そういう本です。
いわとひょうげん塾での製本ワークショップ4回めは3月14日(日)午後1時からです。リクエストの多かった交差式と和綴じをやってみたいと思っています。ふたつとも応用のきく綴じかたです。はじめてでもだいじょうぶですよ、ご心配なく。申し込みなどはこちらを参照してください。水牛宛てのメールでも受け付けています。
それではまた!(八巻美恵)
◆1月1日◆
松の戸や春を薫るは宿の妻
正岡子規の一句、回文です。あけましておめでとうございます。ことしもどうか水牛をごひいきに。
「水牛のように」を2010年1月号に更新しました。
今月から若松恵子さんによる片岡義男さんのインタビューが始まります。リアルタイムで片岡さんのたくさんの小説にひたりながらおとなになったという若松さんなら、ゆかいなインタビュアーになるかもしれないと思い、片岡さんにお願いしました。今回はその序章。次からは私もインタビューに加わって(今回も同席はしていました)、1960年代のことを「日めくりのように」積極的に聞いてみたいと思います。片岡さんにとってもはじめての試み、どんなお話が出てくるか、楽しみです。さて、1月1日はハッピー・パブリック・ドメイン・デイです。パブリック・ドメインとはなんだろう、と思うかたは青空文庫の1月1日のそらもようをごらんください。ことしはここしばらくの私的懸案だった青空文庫の計画を実行できそうな動きになってきました。春にはきちんとお知らせできるよう、準備を始めています。待っていてください。
ここでこうしたお知らせを書き、ブログもたまには書き、ツイッターでも少しつぶやく。それぞれにメディアとしての特徴があり、おもしろいとは思うものの、どれも自分のものではないような気がするのも事実です。そのくらいの態度でほそぼそとつきあっていくのがいいのかもしれません。それしかできないのだ、と心を決めて。
それではまた!(八巻美恵)
e-mail info@suigyu.com
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