幸せをつかむ歌

監督:ジョナサン・デミ
出演:メリル・ストリープ、ケビン・クライン、メイミー・ガマー、オードラ・マクドナルド、セバスチャン・スタン、リック・スプリングフィールド
原題:Ricki and the Flash
制作:アメリカ/2015
URL:http://www.shiawase-uta.jp
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町

メリル・ストリープの演技を見るだけで、自分にとっては『ディア・ハンター』以来の彼女のすべての出演作が重々しく乗っかってきて、胃もたれを起こしてゲップが出そうになる。それは絶えず主役をはることができて、なおかつ演技の巧い俳優だからこそ起こる弊害のひとつだ。だから最近はあまりメリル・ストリープの映画を積極的に選ぶことがなくなってしまったのだけれど、今回はジョナサン・デミの映画だし、なぜか話題にもなっていないので見てみた。

ファーストシーンからやっぱりメリル・ストリープだった。実際にギターも弾いて歌も唄っているさすがのメリル・ストリープなんだけど、そう云う非の打ち所のないところが今となっては鼻に付いちゃうんだよなあとおもいながら見ていると、そこに実際の娘のメイミー・ガマーが出て来た。どことなく似ている二人の横からカメラが寄ると、そっくりな鼻筋のラインが奇麗に並んで、そこに母から娘への遺伝子の継承を見てしまった。はたしてその遺伝子には演技の巧さや俳優としての成功も含まれているのか? いや、ハリウッドの長い歴史の中でも娘が成功している例は限りなく少ないよなあ、なんて映画とは関係のないところにおもいを巡らせてしまった。娘にステップアップの機会を与えるべく奮闘する母の姿に感動しつつ、その偉大な母の存在に絶えず晒されている娘が果敢にも母との共演を選んだことによって今後も女優として生きて行く覚悟を見たりして、メリル・ストリープの唄うブルース・スプリングスティーンの「My love will not let you down(俺の愛はおまえをがっかりさせない)」に涙するのでした。

メリル・ストリープの演技の巧さにうんざりだなんて贅沢なことを云ってしまっているけど、スクリーンに老醜をさらけ出す(特に膝が汚い!)メリル・ストリープはやっぱりさすがだ。ザ・女優だ。

→ジョナサン・デミ→メリル・ストリープ→アメリカ/2015→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★☆