モード家の一夜

監督:エリック・ロメール
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、フランソワーズ・ファビアン、マリー=クリスティーヌ・バロー、アントワーヌ・ヴィテーズ、マリー・ベッカー
原題:Ma Nuit Chez Maud
制作:フランス/1968
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場所:角川シネマ有楽町

エリック・ロメールの映画をあまり見ていないので、今回の角川シネマ有楽町でのエリック・ロメール特集で何本かを見てみようかとおもう。

まずはエリック・ロメールの代表作とも云われている『モード家の一夜』。

冒頭から教会での司祭の説教からはじまることからもわかるとおり、主人公の「カトリックを信仰していること」が色濃く反映されている映画だった。宗教的な価値観のまったくない日本人にとってはちょっと厳しい映画になるんじゃないかと構えて見はじめたところ、おもったよりも会話を中心とした軽快なテンポの映画で、会話の内容に宗教的な価値観や哲学的な言及があるものの、会話劇が大好きな自分にとってはとても楽しめる映画になっていた。

映画は三つのパートに分かれている。久しぶりに再会した古い友人ヴィダルとのカフェでの会話、その友人の女友達モードとのその女性の部屋での会話、教会で一目惚れした女性フランソワーズとの会話。

最初のヴィダルとのカフェでの会話には、パスカルの「パスカルの賭け」を持ち出した人生観や結婚観の哲学的なやりとりが延々と続くので若干辟易する部分はあるものの、その次のヴィダルの女友達モードとの会話には、カトリックの貞操観念に縛られた女好きな男の一歩踏み出したくても踏み出せない微妙な距離感を保ったままの女性とのやりとりに、まるで自分の不甲斐なさをそこに見るようですっかり感情移入してしまった。貞操観念の希薄な男女のストレートなやり取りばかりが氾濫する日本のテレビドラマや映画が多いなか、これこそが自分にとってのリアルだとおもってしまった。ああ、なんだろう、オレはカトリック教徒だったのか。

ネットで検索すると、露な男女関係や過剰な自意識を描く他のエリック・ロメール作品とは毛色が違う、と云うのがあった。ふーん、『モード家の一夜』はエリック・ロメール作品の中でも特殊なんだろうか。

次は『友だちの恋人』を観ようとおもう。

→エリック・ロメール→ジャン=ルイ・トランティニャン→フランス/1968→角川シネマ有楽町→★★★☆