監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、ディオゴ・ドリア、ミゲル・ギレルメ、ルイス・リュカ、ローラ・フォルネル、レオノール・シルベイラ
原題:’Non’, ou A Vã Glória de Mandar
制作:ポルトガル、スペイン、フランス/1990
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場所:アテネ・フランセ文化センター

2015年に106歳で亡くなったポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督のアテネ・フランセ文化センターでの追悼特集にやっと行くことができた。

マノエル・ド・オリヴェイラが1990年に撮った『ノン、あるいは支配の空しい栄光』は、アフリカにあるポルトガルの植民地(雰囲気として島国には見えないからアンゴラかモザンビークと云う設定か?)に派遣されたポルトガルの兵士の中に歴史の詳しい人物がいて、主にその彼によるポルトガルの戦争の歴史についての講釈によってストーリーが進行して行く。

以下、この映画で語られたポルトガルの歴史。

・紀元前2世紀、ローマ帝国軍は「ルシタニア」と呼ばれていた現在のポルトガルを侵略するが、この地の族長であったヴィリアトを中心としたルシタニア人たちに激しく抵抗に遭う。力では勝てないと考えたローマ軍はヴィリアトの部下を買収し彼を暗殺させる。

・1143年、アフォンソ1世を創始者とするブルゴーニュ(ボルゴーニャ)王朝ポルトガル王国が創始される。

・15世紀後半、カスティーリャ(今のスペイン中部を占める王国)の王位継承者の娘であるフアナ・ラ・ベルトラネーハと共謀したアフォンソ5世はカスティーリャのイサベル1世を支持する軍と戦い1476年3月にトロの戦いで敗れる。

・1490年4月、ジョアン2世(アフォンソ5世の子)は息子アフォンソ王子とカスティーリャのイサベラ王女を政略結婚させる。しかし8月、王子が落馬して死去したためイベリア半島の平和的統一の夢は潰える。

・ポルトガルは植民地主義へ向かい、海洋帝国を目指す。ヴァスコ・ダ・ガマはインド航路を確立し、新世界への道を開いた。

・1578年、セバスチャン王はモロッコ遠征を強行し、アルカセル・キビルで壊滅的な敗北を喫する。国王も戦死し、ポルトガルの歴史上、最大のダメージを被る。

以上、このような歴史が、ちょっとチープな寸劇で挿入される。このチープさはなんなんだろう? 戦争の歴史がまるっきり馬鹿らしく見えてくる。

ペドロ・コスタの『ホース・マネー』でポルトガルの近代史を勉強させてもらったけど、マノエル・ド・オリヴェイラの『ノン、あるいは支配の空しい栄光』ではさらにポルトガルの負の歴史を勉強させてもらった。ポルトガルって、日本人にとってはちょっと中途半端なイメージがあるけど、国の歴史としては奥深いところがあって面白すぎる。

→マノエル・デ・オリベイラ→ルイス・ミゲル・シントラ→ポルトガル、スペイン、フランス/1990→アテネ・フランセ文化センター→★★★