監督:チャン・イーモウ
出演:マット・デイモン、ジン・ティエン、ペドロ・パスカル、ウィレム・デフォー、アンディ・ラウ、ルハン、チャン・ハンユー、ジュンカイ
原題:The Great Wall / 長城 / 长城
制作:中国、アメリカ/2016
URL:http://greatwall-movie.jp
場所:109シネマズ木場

チャン・イーモウ監督が撮る映画なわけだから、てっきり万里の長城を舞台にした中世の史劇ではないかと勝手におもい込んで観に行ったら、なんとこれが怪獣映画だった。万里の長城は、中国神話の怪物「饕餮(とうてつ)」の攻撃から守るために作られたのだった。

「饕餮」と聞いて、たしか、小野不由美の「十二国記」のシリーズのどれかに出て来たんじゃないかとネットで調べたら、「風の海 迷宮の岸」の中で戴極国(たいきょくこく)の麒麟「泰麒(たいき)」が伝説の妖魔「饕餮」を自分の使令にするくだり(P243あたりから)があることがわかった。さらに「魔性の子」(こっちは読んでいない)にも出てくるらしい。で、その「十二国記」では「饕餮」を「すでに伝説の一部だとさえ信じられている妖(あやかし)」と表現していて、その姿は千変万化する、としていた。

ところが『グレートウォール』ではその「饕餮」を「十二国記」のような妖魔ではなくて、どちらかと云えば恐竜のような怪獣として描いていた。それが大量に押し寄せてくる様子はいかにもハリウッド的で、チャン・イーモウなんだからもっと東洋的な「妖(あやかし)」のほうが良かったんじゃないかとおもわざるを得なかった。

でも、それにひきかえ「饕餮」を迎え撃つ禁軍側のカラフルさは、まさにチャン・イーモウが得意とするところの原色を基調とした鮮やかな色使いだった。特に女性ばかりの軍隊「鶴軍」の目の覚めるような青が美しく、ジン・ティエンをリーダーとした彼女らが万里の長城から飛び降りるさまはカッコよくて、「饕餮」と死闘を繰り広げるシーンにはちょっと鳥肌が立つくらいだった。

チャン・イーモウにしては単純なアクション映画だったけれども、こちらで勝手に勘違いしていた映画のイメージとは良い方向にズレていたので、そこのギャップで充分に楽しめてしまった。やはり映画は事前に情報を入れなければ入れないほど楽しめる。

→チャン・イーモウ→マット・デイモン→中国、アメリカ/2016→109シネマズ木場→★★★☆