監督:マーレン・アーデ
出演:ペーター・シモニスチェク、サンドラ・フラー、ミヒャエル・ビッテンボルン、トーマス・ロイブル、トリスタン・ピュッター、ハデビック・ミニス、ルーシー・ラッセル、イングリッド・ビス、ブラド・イバノフ、ビクトリア・コチアシュ
原題:Toni Erdmann
制作:ドイツ、オーストリア/2016
URL:http://www.bitters.co.jp/tonierdmann/
場所:新宿武蔵野館

常識に囚われないおかしな行動をする人間を不快に思いつつも、その行動の所為で常識に縛られすぎている今の自分の境遇に疑問を持ち始める設定は、ドラマの構成においては盤石なパターンだったりする。『ありがとう、トニ・エルドマン』はこれを父娘の関係に生かした設定だった。ただ、これが日本のドラマだったりしたら、おかしな行動に「笑い」を求めすぎてしまって、エキセントリックさが際立ったりしてしまう。『ありがとう、トニ・エルドマン』での父親の行動は、やりすぎちゃうんだけど呆れ返るほどではなくて、大笑いするほどのハズし方でもなくて、この微妙な行動は何? と云っている間にそれが少しずつボディブローのように効いて来る映画だった。上から目線で居丈高に娘を諭そうとしないヘンテコな親父の人物像が素晴らしかった。

それから、もう一つ。ビジネスのコンサルティングをしている娘の派遣先がルーマニアのブカレストだった。EUへの加盟も実現して、経済的に復興しつつあるルーマニアだけど、そこはケン・ローチの描くイングランドと同じように貧富の差はますます拡大するばかり。神経をすり減らしながらルーマニアの石油企業のために仕事をする娘と、ブカレストに住む庶民と交流を深める父親との対比も、この映画での重要なテーマの一つだった。おそらく子供の頃に父親から教わっただろうと思われるホイットニー・ヒューストンの「Greatest Love of All」を娘がブカレストの人たちの前で歌うとところは泣ける!

→マーレン・アーデ→ペーター・シモニスチェク→ドイツ、オーストリア/2016→新宿武蔵野館→★★★☆