監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、スティーブン・ディレイン、ロナルド・ピックアップ、ベン・メンデルソーン、ニコラス・ジョーンズ、サミュエル・ウェスト、デビッド・バンバー
原題:Darkest Hour
制作:イギリス/2017
URL:http://www.churchill-movie.jp
場所:角川シネマ新宿

誰もが知っている歴史的な著名人にどのような功績があったのかはびっくりするほど知らない。日本史でもそうなんだから世界史ならなおさらだ。ウィンストン・チャーチルもそうだった。日本人がチャーチルの名前を聞いた時に真っ先におもい浮かべるのは葉巻をくわえた太ったおっさんの写真くらいで、イギリスの首相として第二次世界大戦中にどんなことをしたのかなんてまったく知りもしない。

ジョー・ライト監督の『ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男』を観て、第二次世界大戦の序盤でのイギリスの窮地が驚くほどギリギリだったことにはびっくりした。昨年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』で描かれた「ダイナモ作戦」での戦況は、それを失敗すればヒットラーにひれ伏さざるをえない微妙な状況だったのだ。

そこを救ったのがチャーチルだった。同じ保守党内での人気はまったく無く、馬鹿だ、変人だ、って云われて続けていた男が、戦時の挙国一致内閣を作る条件として野党の労働党が推したために首相にこそなったが、元首相のチェンバレンやハリファックス外相をコントロールするのは難しく、彼らが主張するナチスドイツとの和平交渉(をすればナチスの傀儡政権になる可能性大)をせざるを得ない状況に追い込まれていた。が、そこをガラリと一変させたのがチャーチルの「言葉」だった。日本での状況を見てもわかる通り、政治家の発する「言葉」は普通の人間の発する「言葉」よりもとても重く、選ぶひとつひとつの「言葉」が大きな意味を持ってしまう。特に戦時のような特殊な状況下で発する「言葉」はさらに人心掌握をする力があって、それは平凡な政治家ではとても出来ない芸当だった。

ジョー・ライト監督は、この、近代史の中でもとても重要な時期を切り出して、映像テクニックを駆使して上手く描いていた。ゲイリー・オールドマンもその憎まれっ子のウィンストン・チャーチルを巧く演じていた。

が、これだけ特殊メイクが話題になると、どうしてもそこに目が行ってしまうのが辛かった。無名の役者で、特殊メイクが話題にものぼらずに、観たあとから、えっ!マジ! って気が付くのが理想なんだろうけどなあ。

→ジョー・ライト→ゲイリー・オールドマン→イギリス/2017→角川シネマ新宿→★★★★