風立ちぬ

監督:宮崎駿
声:庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
制作:スタジオジブリ/2013
URL:http://kazetachinu.jp
場所:109シネマズ木場

宮崎駿のアニメーションのどこに魅力を感じるかと云えば、高低差を利用したダイナミックな戦闘シーンや躍動感あふれるモブシーンやヒロインの一途な無償の愛を真っ先におもい浮かべてしまうけど、今までの作品をすべて鳥瞰した場合に、そうだ、そんなメインの部分を盛り上げるべく存在している脇役に一番の魅力を感じているんだと云うことがわかって来る。例えば『未来少年コナン』ならモンスリーとか、『風の谷のナウシカ』ならクシャナやクロトワとか、『天空の城ラピュタ』ならドーラとか、『千と千尋の神隠し』なら湯婆婆とか、心根は優しいのに底意地が悪くてシニカルで自己中心的でねじくれて屈折したキャラクターが大好きなのだ。そしてそこに、宮崎駿本人のキャラクターを見ている。インタビューをすれば必ずと云って良いほどへそ曲がりな発言をするヒゲじじいをだ。つまり、そんな宮崎駿本人が好きで好きでたまらないと云うことか。うーん、どうなんだろう。このクソムシめ、と云いながら好きなのかもしれない。屈折してる。

この『風立ちぬ』にはそんな屈折した脇役がまったく登場しない。つまり宮崎駿がいない。宮崎駿の魂がない。だから、本来ならこんな映画を宮崎駿の映画とは認めることができないはずだ。でも、観るタイミングが悪すぎた。いや、良すぎたのか。この16日に一緒に青空文庫をやって来た富田さんが亡くなった後に観る映画としてはベストの映画だった。もしかすると『風立ちぬ』を観るタイミングをわざとここまで引っ張って来た確信犯だったのか。ラストで荒井由実の「ひこうき雲」が流れるところでは涙が止まらなかった。富田さんにも、このクソムシめ、とおもうことが山ほどあったのに。屈折している。

→宮崎駿→(声)庵野秀明→スタジオジブリ/2013→109シネマズ木場→★★★★