オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

監督:ジム・ジャームッシュ
出演:トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチン
原題:Only Lovers Left Alive
制作:アメリカ/2013
URL:http://onlylovers.jp
場所:新宿武蔵野館

ヴァンパイアの出てくる映画がどれもこれも退廃的でアンニュイで耽美なイメージになってしまうのは、ヴァンパイアの特徴である、不老不死、吸血、弱日光、があるからどうしてもそうならざるを得ないのかもしれないけれど、いくらなんでも同じイメージばかりで厭きが来てしまっているのは否めない。でも、ヴァンパイア好きを公言してはばからない私は、他のヴァンパイア映画との小さな差異を目ざとく見つけて、そこに面白さを見出す、たゆまない努力を常に心がけている。

まずは、ティルダ・スウィントンの“イヴ”のビジュアルが良かった。最近のヴァンパイア映画には子どもやティーンエイジを主人公としているものが多かったので、トニー・スコット監督『ハンガー』のカトリーヌ・ドヌーヴ以来の久しぶりの美しい女性ヴァンパイアが出てきたんじゃないかとおもっている。(ヴァンパイア・ハンターものを除く)

次に、ヴァンパイアには欠かせない血液を輸血用血液製剤で賄っているところが面白かった。問題は、どうやって入手ルートを確保するかだろうけど、トム・ヒドルストンの“アダム”はミュージシャンとして成功していて、お金がふんだんに有り余っているのでそれはどうにでもなることだった。“アダム”がシューベルトの時代からミュージシャンとしての才能を発揮している設定は、ジョン・ハートの“マーロー”がシェークスピアの時代から文学的才能を発揮させている設定と共に、例えヴァンパイアになって不老不死を獲得したとしても、生き長らえるにはやはりそれなりの才覚や世渡り、時代への適応力が必要であることを匂わせているところも良かった。

“アダム”がアントン・イェルチンに木製の銃弾を作らせるシーンも斬新だった。 ヴァンパイアと云えば銀の銃弾をまずは発想するんだろうけど、そこは「狼男」と微妙に混ざってしまっている。ヴァンパイアならば木の杭で、それを心臓に突き刺すことによって不死に終わりを迎えることが出来るので、そこから来ている木製の銃弾なのだろう。

最近のヴァンパイア映画では『モールス』に次ぐ面白さだったが、はたしてヴァンパイア好きではない人の目にこの世界がどう映るのか。たぶん、退屈なんじゃないかとおもう。

→ジム・ジャームッシュ→トム・ヒドルストン→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★☆