ルビー・スパークス

監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
出演:ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アネット・ベニング、アントニオ・バンデラス、スティーヴ・クーガン、エリオット・グールド、クリス・メッシーナ、アリア・ショウカット、アシフ・マンドゥヴィ、トニ・トラックス、デボラ・アン・ウォール
原題:Ruby Sparks
制作:アメリカ/2012
URL:http://movies.foxjapan.com/rubysparks/
場所:新宿武蔵野館

この映画は、例えばフランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』のように、主人公の苦悩を解消させるために非現実的な状況を作って、その中へと追い込む映画ではあるとおもうのだけれど、そのファンタジーな部分がキャプラの映画とは違って、主人公の利己的な部分にだけ作用するので、まるでホラー映画のような醜悪さが画面を支配して観ていて辛かった。途中から、これはもう、とことんホラー風味にしてもらって、ポール・ダノの小説家がゾーイ・カザンのルビー・スパークスを殺してしまうくらいの残酷な結末にしてしまうほうが映画としては成立するんじゃないかとおもいはじめたくらいだった。

ファンタジーな映画の特異現象の部分をどんどんと怪奇のほうへ寄せて行くとホラー映画へと変貌して行く。ポール・ダノが演じている小説家の自己中心的な考えが爆発してルビー・スパークスの暴走を許すあたりはホラーのほうへと寄ってはいたが、でも、もちろんそのまま突き抜けずにファンタジーへと引き戻している。このあたりの境界線上でふらついている微妙な感覚が自分にはまったく合わなかった。

ハーヴェイ
1950年のヘンリー・コスター監督の映画『ハーヴェイ』がこの映画の中にセリフとして登場する。ジェームズ・スチュワートにしか見えない身長6フィートの“ハーヴェイ”と云う白ウサギを誰彼となく人に紹介していくさまはちょっと不気味ではあったのだけれど、でもしっかりとその加減を抑えてファンタジーな映画として穏やかな優しさを残していた。この『ルビー・スパークス』も『ハーヴェイ』くらいの加減の映画なら良かったのに。
→ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス→ポール・ダノ→アメリカ/2012→新宿武蔵野館→★★☆