リアリティのダンス

監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、イェレミアス・ハースコヴィッツ、アレハンドロ・ホドロフスキー、アクセル・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキー
原題:La danza de la realidad
制作:チリ、フランス/2013
URL:http://www.uplink.co.jp/dance/
場所:新宿シネマカリテ

東京国際ファンタスティック映画祭’86で観たアレハンドロ・ホドロフスキーの『エル・トポ』は衝撃的だった。1985年に第1回目が開催された東京国際ファンタスティック映画祭の興奮を再び体験できるんだと云う高揚感もあったのだろうけれど、アングラな前衛芸術に慣れていないウブな人間に『エル・トポ』の映像は、まるでカーニバルでのフリークショーを見ているような、日本だったらお祭りでのバケモノ屋敷を見るような、見てはイケないものをのぞき穴から覗いているような後ろめたさいっぱいの異様な興奮に支配された映像体験だった。

1970年に作られた『エル・トポ』から43年が経って撮られた『リアリティのダンス』は、この長い年月の隔たりを考えずにそのまま60年代、70年代のアングラ的なイメージが展開されることをアレハンドロ・ホドロフスキーに期待して見てしまったら、導入部からクリアな美しい現代アートのような映画になってしまっているのにちょっと裏切られた感じがしてしまった。でも、よくよく考えてみると、どんな映像もネットによってあからさまに公開されている現在、手足の無い男たちの集団が暴れるシーンも、妻が夫に跨がって小便をするシーンも、数ある現代的なパフォーマンスの一つに見えてしまうのはあたりまえで、時代の空気がその時に作られる映像のトーンをも決定してしまうんだなあと改めておもい知らされた。もうすでに60年代、70年代の前衛演劇など存在していなかったのだ。とすれば、もし寺山修司が生きていたとしたら、今の時代にどんな映画を撮っていたんだろう? この対談を読んで、遠い目になってしまった。

→アレハンドロ・ホドロフスキー→ブロンティス・ホドロフスキー→チリ、フランス/2013→新宿シネマカリテ→★★★☆