ゼロ・ダーク・サーティ

監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、マーク・ストロング、クリス・プラット、カイル・チャンドラー、テイラー・キニー、マーク・デュプラス、フランク・グリロ、スティーヴン・ディレイン、エドガー・ラミレス、ハロルド・ペリノー・ジュニア、レダ・カテブ、ジェニファー・イーリー、ジェームズ・ギャンドルフィーニ、スコット・アドキンス、マーク・バレー、リッキー・セコン
原題:Zero Dark Thirty
制作:アメリカ/2012
URL:http://zdt.gaga.ne.jp/
場所:シネマスクエアとうきゅう

キャスリン・ビグロー監督の前作『ハート・ロッカー』は、世間の評価とは裏腹にあまり面白い映画とはおもえなかった。その原因はいろいろとあるのだけれど、一つに主人公の行動がまったく理解できなくて、だからストーリーに入り込むことがまったくできなかった。それに比べればこの『ゼロ・ダーク・サーティ』は、主人公が高卒のノンキャリアで、しかも自分たちのことを恥ずかしげもなく“切れ者”と云ってのけるCIA分析官の中にあって頼りなさ気に見える女性であるところが、どうぞ感情移入してくださいと云っているようなものだった。案の定、製作者側のおもいどおりに、ころりと、若い女性のCIA分析官ジェシカ・チャステインに感情移入してしまった。

ただ、このように基本的なストーリーラインを楽しむのではなくて、ここでまた『ハート・ロッカー』の時と同じように、視点をもっと引いて全体を眺めてしまえばアメリカの傲慢さが鼻についてしまうのかもしれないのだろうけれど、少なくともこの映画は9.11を引き起こしたビン・ラーディン身柄確保と云う大義名分が前提としてあるから、かろうじてそのことから目をそらせてくれている。でも、あとからよくよく考えると、してもいないことを吐かせる拷問シーン(ケン・ローチ監督の『ルート・アイリッシュ』にも出てきたwaterboardingという拷問方法がひどい)や他国の一般民家への奇襲作戦などはやっぱりアメリカの高慢な態度が見て取れてしまうよなあ。いやいや、でも、純粋に映画を楽しむのならば良くできた映画だった。

→キャスリン・ビグロー→ジェシカ・チャステイン→アメリカ/2012→シネマスクエアとうきゅう→★★★★