世界にひとつのプレイブック

監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:ブラッドレイ・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー、クリス・タッカー、ジュリア・スタイルズ、アヌパム・カー、ブレア・ビー、シェー・ウィガム、ジョン・オーティス、ポール・ハーマン、ダッシュ・ミホク
原題:Silver Linings Playbook
制作:アメリカ/2012
URL:http://playbook.gaga.ne.jp/
場所:新宿武蔵野館

精神的に病んでいる人を描いたとしても、全体的なトーンが明るくて、前向きなメッセージが映画を支配しているところがハリウッド映画の良いところで、妻の浮気現場を目の当たりにして人間性を見失ってしまった男の再起物語をとても小気味よく、痛い部分はほどほどに、爽やかなハッピーエンドの映画に仕立てていた。でもそれは、精神的に病むことが単なる題材として軽く扱われてしまっていると云うか、病状を改善するのはそんなに生やさしいものではないと云うか、ちょっと浅はかなイメージが出てしまうのも仕方のないところで、そこのデリケートな部分の描き方をすんなりと許容できるかどうかで、この映画をどこまで楽しめるかのバロメーターになってしまっていた。まあ、そんな固いことを云わずに、単なるハリウッド映画として楽しめば、ブラッドレイ・クーパーもジェニファー・ローレンも素晴らしいし、ロバート・デ・ニーロをはじめとする脇役陣も魅力的だし、話しの持って行きかたも巧いので悪い映画ではけっしてないんだけど。

世界にひとつのプレイブックいや本当は、そんなところにゴタゴタと文句を云うよりも、一番面白かったのは父親役のロバート・デ・ニーロが、アメリカン・フットボールのフィラデルフィア・イーグルスの熱狂的なファン(66番ビル・バージェイのジャージなんて着ているのは筋金入りだ)なことだった。息子役のブラッドレイ・クーパーもその影響を受けて、デショーン・ジャクソンのレプリカ・ジャージを着ていたりしていた。この映画の原題の「Silver Linings Playbook」の「Silver」はイーグルスのチーム・カラー(鷲のマークがSilver)でもあって、「Silver Linings」の意味するところの「銀の裏地」とは、地区優勝はするもののなかなかスーパーボウルで優勝することのできないイーグルスのこととも掛けていたのではないかとおもう。「どんなに分厚い雲で覆われていてもその上には太陽が輝いている」と。原作本の初版の時のカバーは、このことをそのものずばりで現していた。そして映画の中では、父親と息子との結びつきにこのフィラデルフィア・イーグルスが使われているんだけど、どこか中途半端な感じは否めないので、原作本をしっかりと読んでみたい気がしてしまった。おそらくは、プロスポーツのチームを子供の頃から親子で応援していることの意味がもっと重要視されていて、ラストのイーグルスがダラス・カウボーイズに勝つことへのカタルシスがもっと半端ないことになっているんじゃないかと期待して。

→デヴィッド・O・ラッセル→ブラッドレイ・クーパー→アメリカ/2012→新宿武蔵野館→★★★☆