アメリカン・スナイパー

監督:クリント・イーストウッド
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、マックス・チャールズ、ルーク・グライムス、カイル・ガルナー、サム・ジェーガー、ジェイク・マクドーマン、コリー・ハードリクト、サミー・シーク
原題:American Sniper
制作:アメリカ/2014
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/
場所:109シネマズ木場

最近のクリント・イーストウッド映画のレベルの高さを考えると、彼への要求が傑作程度の映画では満足し切れなくなってしまって、次回作も同等かそれ以上のレベルを求めてしまうようになってしまった。だからこそ、そんな映画ファンの鼻を明かすような『ジャージー・ボーイズ』と云う変化球を投入してきたクリント・イーストウッドのセンスの良さにはますます脱帽すると同時に、次はどんなことをやってくれるんだろうかとさらにハードルが上がってしまった。

『アメリカン・スナイパー』は、こちらの勝手な期待の高さに答えてくれたかと云うと、なんとも微妙な映画だった。いったいこの映画は、イラク戦争で160人も殺した伝説のスナイパーとしてのクリス・カイルにポイントを置く映画なのか、家族をないがしろにしてまで国に尽くす牧羊犬(シープドッグ)としての内的葛藤や戦闘の経験から来るPTSDに苦しむクリス・カイルに重きを置く映画なのか。もしその両方にスポットを当てているのだとしたら、二つの要素のバランスが中途半端だったんじゃないか、と少なからず不満を募らせてしまった。もちろん、水準レベル以上の映画なんだけど。

クリス・カイルのライバルとしてシリアの元オリンピックメダリストのムスタファを登場させるあたりは、往年のダーティハリーやマカロニ・ウェスタンを彷彿とさせて、そのアクション性がより鮮明になった分、後半のPTSDに苦しむクリス・カイルへの感情移入が随分とぼやけてしまったような気がする。だとしたら、どちらかに比重を極端に絞ったほうが良かったんじゃないかとおもえる。もし『ジャージー・ボーイズ』に続いて、さらに変化球で攻めてきて、ダーティハリーやマカロニ・ウェスタンへと回帰していたとしたら狂い死にしていたところだったのに。まあ、そんな映画はもう作らないだろうけど。

→クリント・イーストウッド→ブラッドリー・クーパー→アメリカ/2014→109シネマズ木場→★★★☆