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 2010年10月29日
 ゴースト・ライター
Posted by ag at 23:59/ カテゴリー: MOVIE_Database

ゴースト・ライター監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・ハットン、ジョン・バーンサル、デヴィッド・リントール、ロバート・パフ、イーライ・ウォラック、ジェームス・ベルーシ
原題:The Ghost Writer
制作:フランス、ドイツ、イギリス/2010
URL:
場所:THOHOシネマ六本木ヒルズ(東京国際映画祭)

ロマン・ポランスキーの前作『戦場のピアニスト』は、自身の経験とオーバーラップするところがあまりにも多く、それを史実として忠実に伝えることに使命を感じたためか、映画としてはあまり凝った事はせずにストレートな描写に努めていた。その遊びの無さが物凄く不満だったのだけれども、今回の『ゴースト・ライター』は『フランティック』のようなサスペンス・ストーリーを題材としていたために、ポランスキーの遊びがまた復活していた。

まず、『フランティック』のような純粋なサスペンスではなくて、いったい何が起きているのか、その全体像がまったく掴めずにモヤモヤとした気分で映画を観なければならないところが、凝ってる。ユアン・マクレガーが演じるゴースト・ライターの命が狙われているのか、ピアース・ブロスナン扮する元イギリス首相は何をどこまで知っているのか、オリヴィア・ウィリアムズ扮する元イギリス首相夫人やキム・キャトラル扮する元イギリス首相秘書がどこまで根幹に関わっているのか、さっぱりわからない。ほとんど最後までわからない。これは下手をすると、観ていて飽きる。実際に自分の隣に座っていた人は寝ていた。でも、このモヤモヤとした気持ちを持たせながら映画への興味を持続させる工夫はいたるところにあって、そこがポランスキーならではの巧さではあるんだけど。そこを見逃さずに楽しめさえすれば飽きることはないとおもうんだけどなあ。万人向けではないのかな。

それに、映画の中の舞台設定。主に、元イギリス首相が現在住んでいるアメリカの避暑地とおもわれるところが舞台なんだけど、これがまた、モヤッとしている。フェリーを使わなければ行けないような島。その島にある寂れたホテル。ホテルのフロントにはまるでメイド喫茶のような衣装を着たねえちゃん。島の住人のじいさんは『マクベス』に出て来た占い師のように事件の核心を突いたりする。いいなあ、こんな遊び。

調べてみたら、この島のシーンのロケ地はアメリカではなくて、ドイツのズィルト島とデンマークのレム島だった。そうだよなあ、ポランスキーはまだアメリカの地を踏む事が出来ないのだ。アメリカのマサチューセッツでの撮影もあったみたいけど、たぶんそれはアシスタントディレクターに任せたのだろうな。いい加減、赦してあげてもいいんじゃないのかなあ、アメリカ。


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何度も言うんだけど、ロマン・ポランスキーの映画は本当に肌が合う。観ていて楽しい。その楽しさが、すべての人にとって楽しいとは限らないのが映画の難しいところで、『戦場のピアニスト』のようなストレートな映画でない限り、人にロマン・ポランスキーの映画を勧める事はなかなかできない。今回はどなんだろう? 勧められるのかな、どうなのかな。

 2010年10月25日
 神々の男たち
Posted by ag at 23:51/ カテゴリー: MOVIE_Database

神々の男たち監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
出演:ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバック 、ジャック・エルラン、ロイック・ピション、グザヴィエ・マリー、ジャン=マリー・フラン、アブデルハフィド・メタルシ、サブリナ・ウアザニ
原題:Des Hommes Et Des Dieux
制作:フランス/2010
URL:
場所:THOHOシネマ六本木ヒルズ(東京国際映画祭)

今まで東京国際映画祭をそんなに重要視してなかったのだけれども、昨年、おっ、ケン・ローチの新作もやってるのか! と驚いて、すぐさまTHOHOシネマ六本木ヒルズへ駆けつけたらにべもなく、満席です、と断れてしまった。えっ? 東京国際映画祭って満席で断られるほどのものなんだ、と驚いた経験から、今年はチケットぴあのプレリザーブを使ってまでしてチケットを手に入れてしまった。グザヴィエ・ボーヴォワ監督『神々の男たち』とロマン・ポランスキー監督『ゴースト・ライター』の2作品を。今になって冷静に考えてみれば、そこまでする必要はなかったのだけれど。

で、まずはザヴィエ・ボーヴォワ監督の『神々の男たち』を観に行った。今年のカンヌ映画祭グランプリ(最高賞はパルムドールなので次点のようなもの、名称がややこしい)を取った作品。

映画がはじまると、まるで『薔薇の名前』に出て来たような僧院と修行僧が現れ、祈りとともに聖歌が歌われる。風景は、どこか、枯れた土地。次のシーンでは修行僧たちが町の中で現地の人々に声を掛けられる。その人たちの顔だちを見れば場所は北アフリカではないかと想像できる。そして、修行僧たちは彼らの家のパーティに招かれる。パーティへ行けば、そこには北アフリカ系民族、老若男女の人々の顔、顔、顔。読まれるのはコーラン。そのなかのキリスト教徒たち。

この導入部のシーンで、キリスト教徒とイスラム教徒の共存が示されているところは素晴らしかった。全体を通して映像も美しいし、修行僧たちの苦悩を主にクローズアップで捉えるているのも好い。彼らがだんだんと十二使徒に見えてくるカメラの構図があって、チャイコフスキーの「白鳥の湖」を流しながらワインを飲む宴はまさに「最後の晩餐」。

この映画は1996年に起きた「ティベリンの修道僧虐殺事件」を元にしている。アルジェリアのティベリンにあったシトー会修道院の9人の僧のうち7人が武装イスラム集団に誘拐され、2ヶ月後に彼らの頭だけがメデア近くで発見された事件。この事件を、キリスト教とイスラム教、旧宗主国フランスと旧植民地アルジェリア、残虐と静謐などを対比させてコントラスト強く描いている。

修道僧のリーダーがテロリストとイスラム教のコーラン(または他の啓典?)に書かれてある内容について掛け合うシーンが印象的。「われわれの一番の良き隣人はキリスト教徒である」。イスラム教は、本当は、すべてをも包み込む寛大な宗教なのだ。

 2010年10月21日
 ミックマック
Posted by ag at 23:59/ カテゴリー: MOVIE_Database

ミックマック監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ、ニコラ・マリエ、ジャン=ピエール・マリエール、ヨランド・モロー、ジュリー・フェリエ、オマール・シー、ドミニク・ピノン、ミシェル・クレマド、マリー=ジュリー・ボー
原題:Micmacs à tire-larigot
制作:フランス/2009
URL:http://www.micmacs.jp/
場所:シネマスクエアとうきゅう

ジャン=ピエール・ジュネの最初の長編映画『デリカテッセン』を観た時、そこに自分の好きな映像美があるのを気付かされた。ゴチャゴチャとしていながら見ようによっては奇麗に配置されているとも見える赤錆た鉄、鉄、鉄。確かに、赤錆た鉄で作られた美術品にどこかしら昭和的な郷愁を感じることは理解はしていたけれども、それが映像として表現されたとしても好きなんだなあ、と。そう云えば宮崎駿のアニメーションにも、二次元ではあるけど、赤錆た鉄が描き込まれている部分が好きだったりしてる。

この『ミックマック』にもそんな赤錆た景色が出て来る。それに加えて、これもまた好きな要素でもある秘密基地のような景色を含んで。前作の『ロング・エンゲージメント』では叙事詩的な内容の映画であったため、この、ジャン=ピエール・ジュネ特有の映像美が少なくてガッカリしたわけだけれども、今回はそれが全開。ただ、いつも気になるのは、その映像美が映画のストーリーの上を、うわすべり、しないかと云う事。『デリカテッセン』や『アメリ』はそれがぴったりとはまって心地良かったけれども、『エイリアン4』はすべり放題で酷かった。ハリウッドのスタイルに自分たちの映像をはめ込むのに苦労してた。

『ミックマック』は若干、うわすべり、してる。でも、許せる範囲かな。ドミニク・ピノンやヨランド・モローなど、ジャン=ピエール・ジュネ映画常連俳優も出てたから、まあ、良かったかな。

 2010年10月19日
 包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠
Posted by ag at 23:40/ カテゴリー: MOVIE_Database

包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠

包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠監督:リシャール・ブルイエット
出演:ノーム・チョムスキー、イニャシオ・ラモネ、フランソワ・ドゥノール、フィリップ・パルダ、ドナルド・J・ブードロー、マーティン・マッセ、ジャン=リュック・ミゲ、ノルマン・ベラルジョン、スーザン・ジョージ、オンクル・ベルナール、オマル・アクトゥフ、フランソワ・ブリュヌ、マイケル・チョスドフスキー
原題:Encirclement--Neo-Liberalism Ensnares Democracy
制作:カナダ/2008
URL:
場所:ポレポレ東中野

山形ドキュメンタリー映画祭2009の大賞を取った作品。わざわざ山形まで行ったのに、チョイスが悪くて大賞を取った作品を観る事ができなかったので、「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー 山形in東京2010」で観る事にした。

新自由主義(ネオリベラリズム)とは、政府の規制を最小限にとどめて、公共事業は民営化して、経済の流れは市場原理にまかせろ、と云う主義。日本でも、特に小泉純一郎の頃からこの主義に乗っかって来たわけだけれども、まあ、ご覧の通りの世の中になってしまったわけです。とすると、もともとその主義に反対だった人たちの声が大きくなって、今のままで良いのか? みたいなことが云われるわけです。この映画は、そんな内容のドキュメンタリー映画。構成としては、経済学者やジャーナリストの人たちが延々としゃべる、しゃべる、しゃべる。途中、ほんのちょっと写真のカットが入るけど、あとはすべて、しゃべり。それが160分も続くわけです。これはこれでドキュメンタリーの一つの手法で、自分としては好きなタイプの手法。でも、疲れた。部分、部分に、この人が云っていることはどういう意味? と悩むところが出て来て、それを考えている内にまたいろんなことをしゃべり尽くされてしまうわけで、フラフラになりながら映画を追いかけている始末。でも、でも、面白かった。くたくたになるほどの面白さ。出来たら、DVDあたりで、もっとゆっくり、ポーズしながら見たいな。

 2010年10月18日
 狩人の夜
Posted by ag at 23:17/ カテゴリー: MOVIE_Database

狩人の夜監督:チャールズ・ロートン
出演:ロバート・ミッチャム、シェリー・ウィンタース、リリアン・ギッシュ、ビリー・チャピン、サリー・ジェーン・ブルース、ジェームス・グリーソン、イヴリン・ヴァーデン、ピーター・グレイブス、ドン・ベドー、グロリア・カスティロ
原題:The Night of the Hunter
制作:アメリカ/1955
URL:
場所:下高井戸シネマ

チャールズ・ロートンと云うと、やはり真っ先におもい浮かぶのがビリー・ワイルダー監督の『情婦』の、こってり、とした芝居。もともと芝居の“臭さ”では定評のあったチャールズ・ロートンを逆手に取って、それをそのまま、いや、どちらかと云うとさらに輪をかけて大仰に芝居をしてもらって、そんな“臭い”演技を映画の基調としているのはさすがビリー・ワイルダーだった。おおげさな動きで片眼鏡を懐から取り出し、それを大きな動きで目にかけて、こってりと、マレーネ・ディートリッヒを見つめるシーンは、その演技の“臭さ”ゆえに忘れられない名シーンになってる。

そんな映画俳優チャールズ・ロートンの初監督作品がこの『狩人の夜』だった。ところがこの作品が、チャールズ・ロートンの初監督であると同時に最後の監督作品となってしまった。公開時の批評がふるわず、それに失望した彼は再びメガホンを取る意欲を無くしてしまったのだ。でもその後、ヌーヴェルバーグを中心に再評価され、日本でもやっと1990年にケイブルホーグによって公開された。

なんとなくこの作品の噂を聞いてはいたのだけれども、あんまり意欲的に観に行こうとはおもっていなかった。ところが最近になってTwitterでこの映画の話題が出ていて、シネマヴェーラでの公開は逃したのだけれども、下高井戸シネマでの上映があると云う事をこれまたTwitterで知ってしまったので、レイトにもかかわらず自転車を飛ばして観に行ってしまった。

なるほど、当時のハリウッド映画とは毛色の違った映像表現をしているので、その部分をクローズアップすれば映画を再評価したくなるのもわからないでもないけれど、でも映画としては粗いんじゃないかなあ。特に子供の演技が粗かった。細かい仕草がチャールズ・ロートンの演技よろしく“臭い”し、親を亡くした悲しみや殺されるかもしれない不安感を演技にまったく反映させないのは、却って、これは凄い! とおもってしまうほど。それに、シーンの運びも粗い。シェリー・ウィンタースが殺されるシーンや、ロバート・ミッチャムが死刑になるところなど、えっ、そういうカット割り? と驚いてしまった。まあ、そこに味があると云えばあるんだけれども。

観ていてずっとJ・リー・トンプソン監督の『恐怖の岬』(1962)を思い出していた。ああ、この映画の影響を受けていたんだ。まあ、普通に恐怖心を煽るように撮れば『恐怖の岬』のようになるんだよなあ。『狩人の夜』はそんなありきたりな方法を取っていない映画であることは確かだ。

 2010年10月06日
 家庭の事情
Posted by ag at 23:11/ カテゴリー: MOVIE_Database

家庭の事情監督:吉村公三郎
出演:山村聡、若尾文子、叶順子、三条魔子、渋沢詩子、船越英二、藤巻潤、川口浩、川崎敬三、田宮二郎、根上淳、杉村春子、藤間紫 、月岡夢路
制作:大映/1962
URL:
場所:神保町シアター

脚本は新藤兼人。定年退職の父親が退職金を4人の娘たちに分配してから起こるお金にまつわる騒動を、父親も含めた5人分のエピソードとしてきっちり配分して構成しているところが巧い。このような映画が一番、自分の好みなんだけど、最近の映画にはない種類の映画なんだよなあ。後世に名を残さないような映画でも、こんなにかっちりした映画が量産されていた時代に生きていたかった。週末ごとに、近くの町の映画館に足を運んで、何の気なしに観ている映画のクオリティが高い、と云うのは、いいなあ。

それに女優も素晴らしかった。若尾文子の特集なので、もちろん若尾文子を目当てに観に行ったんだけど、三条魔子も良かった。4人姉妹の中で一番控えめな性格の役どころが得してるんだろうけれども。そして、藤間紫! 歳を取ってからの藤間紫しか知らないのは損だった。

神保町シアターの席に座ると、右を向いても左を向いてもおじいさんばっかり。み〜んな、若尾文子を観に来ている。昔の若尾文子はもちろん良いけど、見ようによっては今の若尾文子とあんまり変わらない。松田翔太のように50才の歳の差もOKだ。

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