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 2011年10月31日
 パブリック・ハウジング
Posted by ag at 23:25/ カテゴリー: MOVIE_Database

パブリック・ハウジング監督:フレデリック・ワイズマン
出演:シカゴの公共住宅の人びと
原題:Public Housing
制作:アメリカ/1997
URL:
場所:ユーロスペース2

フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリーが面白いのは、カメラが向けられている被写体である人間が面白いからだとおもう。この『パブリック・ハウジング』でも、シカゴ郊外の公共住宅に住む貧しい黒人たちが何とも魅力的だ。でも、そこに映し出される人たちは、何か特別なことをしているわけはない。電話の相手に向かってまくしたてている中年女性だったり、ドラッグを止めようとカウンセリングを受けている中年男性だったり、延々と青菜を包丁で切っている老婆の手元を追いかけているだけだったりする。ところがそれが面白い。『州議会』の時の州議員や『パリ・オペラ座のすべて』の時のバレリーナが面白いのは何となくわかる。自分たちの知らない世界を垣間見る面白さがそこにはあったからだ。ところがこの『パブリック・ハウジング』の人たちは、黒人のカルチャーやドラッグ問題はあるものの、日本で言えば高島平や多摩ニュータウンに住む人たちにカメラを向けているのと何ら変わりはなかった。それが面白い。おそらく、どんな人間でも面白い生き物なんだとおもう。その生態をしっかりとカメラに収めれば、まるで希少動物のドキュメンタリーがごとく面白いんだとおもう。そこにはもちろん、被写体のしぐさを逃さず、外さす、タイミング良くカメラで捉えるフレデリック・ワイズマンのようなテクニックは必要なんだけど。

この映画の中でもう一つ面白いとおもうことがあった。それは、アメリカは個人主義で日本は和の社会だなんて言われているのに、このシカゴの公共住宅でのコミュニティが驚くほどしっかりとしていると感じたことだった。みんな絶えず集まって話し合っている。住宅の補修の問題はもちろんのこと、女性の就職問題のこと、ドラッグから身を守ること、若くして子供を産む人が多いことから避妊の教育など、これらの話し合いがこの映画の根幹と云っても良いくらいだ。日本って、たしかに団地のコミュニティとかあるんだろうけど、どこかよそよそしい。アメリカの黒人のコミュニティのほうが人間味があふれていた。

フレデリック・ワイズマンの特集上映は11月25日まであるようだ。なんとか時間を見つけてもう何本か観ないと。6時間の『臨死』も観たいけど、まあ、それは無理だろうなあ。

 2011年10月24日
 スリーデイズ
Posted by ag at 23:10/ カテゴリー: MOVIE_Database

スリーデイズ監督:ポール・ハギス
出演:ラッセル・クロウ、エリザベス・バンクス、ジェイソン・ベギー、アイシャ・ハインズ、オリヴィア・ワイルド、ダニエル・スターン、ブライアン・デネヒー、リーアム・ニーソン、RZA、ケヴィン・コリガン、レニー・ジェームズ、アラン・スティール
原題:The Next Three Days
制作:アメリカ/2010
URL:http://threedays.gaga.ne.jp/
場所:シネマスクエアとうきゅう

初監督作品の『クラッシュ』が良かったポール・ハギス監督の3作目。2008年のフランス映画『すべて彼女のために』のリメイク。

サスペンス映画としては良く出来てるとおもう。ラッセル・クロウとエリザベス・バンクスが警察の追っ手から逃げおおせるかどうかの単純なサスペンスにも主人公たちに対して感情移入が出来るし。ただ、映画の序盤で、どちらかと云うと意気軒昂な妻をなだめる役割だったラッセル・クロウのおとなしい性格をもっと強調出来ていたら、リーアム・ニーソン(チョイ役だけど凄く良い!)の助言を受けてからの常軌を逸した変貌ぶりにコントラストが出てたんだろうけど。ラッセル・クロウって、ただ単純に撮っただけでも常軌を逸している人間に見えてしまうからね。それに、おもった以上に緻密な計画を立てていることが明らかにされるところは、後出しじゃんけんな感じに見えてしまうのも、いまひとつ。もうちょっと伏線があったら良かったのに。

ポール・ハギスはもともと脚本家で、クリント・イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』などの脚本を手がけている。初監督作品の『クラッシュ』も自分の脚本で撮っているし、この作品もリメイクながら自分の名前がクレジットされている。脚本家としての特徴は、ちょっと複雑な構成にするんだよね。この映画も、しょっぱなにクライマックス近くの逃走シーンを持って来ている。それも誰かの死を予感させながら。そして、ばーんと3年前に戻す。でも、この死んで行く奴って、あんまりストーリーに関係ないんだよね。なんだよ、って感じ。こんなに複雑な構成にする必要はなかったんじゃないのかなあ。元の映画の『すべて彼女のために』はどうなんだろう。

 2011年10月19日
 ザ・ウォード/監禁病棟
Posted by ag at 23:02/ カテゴリー: MOVIE_Database

ザ・ウォード/監禁病棟監督:ジョン・カーペンター
出演:アンバー・ハード、メイミー・ガマー、リンジー・フォンセカ、ダニエル・パナベイカー、ローラ=リー、ミカ・ブーレム、ジャレッド・ハリス
原題:The Ward
制作:アメリカ/2010
URL:http://ja-jp.facebook.com/kankinmovie.jc
場所:銀座シネパトス

ジョン・カーペンターの監督作品は『ニューヨーク1997』(1981)以来ずっと劇場公開時に観てきたけど『光る眼』(1995)を最後に途絶えてしまった。なぜ大好きな『ニューヨーク1997』の続編である『エスケープ・フロム・L.A.』を観なかったのか不思議でならないのだけれど、そこでプッツり途絶えて以降カーペンター作品は観ることがなくなってしまった。でもなぜか、またTwitterの後押しか、新作を観る気持ちが盛り上がってしまった。

ジョン・カーペンターの映画の魅力は、どんなに製作費をかけようとも見た目のチープさを保ち続けるところだ。あれ? それって魅力なんだろうか? いや、魅力だ! なんでもマイケル・ベイのように派手にすれば良いってもんじゃない。それから、情報を詰め込み過ぎない、ごちゃごちゃさせない、無理な繋ぎ方をしない等々も魅力だ。そんなにこじんまりさせないでもっと派手にすれば良いのに、とおもったりする時もあるけど、いやいや、それが彼のスタイルで、絶対にそこから逸脱させない信念が貫かれている映画は見ていて気持ちいい。この『ザ・ウォード/監禁病棟』もまったく自分のペースで作っている。CG全盛の時代にも、そんなものにはまったく左右されずに、ゾンビメイクやショック演出で人を驚かせようとしている健気さ。ファンタスティック映画祭とかだったら、目に鋭利な刃物が突き刺さるシーンなんて拍手喝采だ。でも、そんなカーペンターのスタイルを知らなきゃ、つまんない映画だろうなあ。

 2011年10月10日
 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 第3日目
Posted by ag at 23:35/ カテゴリー: MOVIE

『密告者とその家族』(アメリカ、イスラエル、フランス/2009/ルーシー・シャツ、アディ・バラシュ監督)
密告者としてイスラエルに通じていた男の家族の苦悩を描く。観ていて、なぜ男はイスラエルに通じてしまったのかが気になってしかたがなかった。でも、そこはわざと仄めかす程度(イスラエルの子どもたちを救うとか、何とか、、)だったので、映画を観ている我々も男の行動に共感するわけでもなく、妻や子どもたちが置かれる理不尽な状況にイライラさせられるだけの映画だった。

以上、3日間で合計8本の映画を観ました。良かったのは、『アルマジロ』『失われた町のかたち』『何をなすべきか?』あたりかなあ。良い、と云っても三者三様、良い、の意味合いがそれぞれ違うのがドキュメンタリー映画の面白いところ。ただ、2年前の時と比べて、扱う題材のバラエティさがなくなったと云うか、明るいものが無くなって、どんより暗いものが多くなってしまったのが残念。『何をなすべきか?』で描かれていたエジプトでも、映画祭の期間中にコプト教徒らのデモ鎮圧が起こったりして、映画の中に登場していた貧乏でも明るいアレキサンドリアの人たちは今現在、この民主化デモの中どんな暮らしをしているんだろうかとおもいを馳せたり。

 2011年10月09日
 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 第2日目
Posted by ag at 23:48/ カテゴリー: MOVIE

『5頭の象と生きる女』(スイス、ドイツ/2009/ヴァディム・イェンドレイコ監督)
第二次大戦時にウクライナからドイツへと移住した老女性翻訳家のはなし。「5頭の象」と言われるドストエフスキーの長編5作をドイツ語へと翻訳する仕事を通じて自らの過酷な人生をあぶり出して行く映像は良かったけど、移住後はじめて訪れるウクライナへの旅の映像が中途半端だった。ウクライナ時代の過去を具体化するための映像がもうちょっと必要だったんじゃないのかなあ。

『何をなすべきか?』(フランス/2010/エマニュエル・ドゥモーリス監督)
エジプトのアレキサンドリアに暮らす人びとをまっすぐに追いかける映像は素晴らしい。何の飾りもないストレートな映像は、そのままその暮らしの中に入り込んでいるようなイメージさえ覚えてしまう。中でも、イスラム女性がどのように海水浴を行っているかなんてまったくの異文化体験だった。でも何故か観ていてぐったりと疲れてしまう。カルチャーショックなのか。

『川の抱擁』(ベルギー、コロンビア/2010/ニコラス・リンコン・ギル監督)
コロンビアのマグダレナ川に暮らす人びとをこれまたまっすぐに追いかける映像は素晴らしい。ただ、川の精霊モアンの話しが、民兵による住民虐殺への話しへと展開して行くところでどこに視点を置くべきなのか見失ってしまう。“川”と云うキーワードで括れば良いってもんでもないような気がするんだけど。

『失われた町のかたち』(アメリカ、ポルトガル/2011/ジョン・ジョスト監督)
ポルトガルのリスボンの街角を固定カメラで捉えた映像は一見何の変哲もないようにも見える。ところがその大胆なカメラの構図から見える映像になぜか不思議な魅力を感じてしまう。狙っているようなスタイリッシュな構図とはまったく違う、どちらかと云うと調和を乱しているような構図にアーティスティックな心地良さを感じてしまう映像が面白い。これはいったい何と表現すれば良いんだろう。面白い映画だった。

 2011年10月08日
 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 第1日目
Posted by ag at 23:12/ カテゴリー: MOVIE

今年もまた山形国際ドキュメンタリー映画祭に来てしまった。朝3時に東京を出発したので寝不足ぎみだったけど、初日になんとか3本観ることができました。

『永遠のハバナ』(キューバ/2003/フェルナンド・ペレス監督)
今回の審査員に名を連ねるフェルナンド・ペレス監督作品。映画が終わったあとの質疑応答で、この『永遠のハバナ』の原題が“Suite Hbana”であると云うことを改めて聞いて、なんだ、原題の直訳の“ハバナ組曲”のほうがこの映画を端的に表してんじゃん、と文句を言いたくなってしまった。ハバナに暮らす人びとの1日の生活をカメラに納め、それをいったんバラバラに解体して、街の喧騒のSE(そのものの音ではなくて、作った音らしい)やキューバ音楽に合わせて映像を組み立て直した映画なので、組曲、と言うのがまさにぴったりな内容の映画だった。でも、これが純粋なドキュメンタリーかと言うと、うーん、それぞれのパーツの映像はノンフィクションでも、組み上げられたものがフィクションのような意味合いを持つ映画となっているような気がしてしまった。まあ、それはそれで、良い映画ではあるとはおもうのだけれども。

『アルマジロ』(デンマーク/2010/ヤヌス・メッツ監督)
これまた、これがドキュメンタリー映画? とおもわせるような映画だった。アフガニスタンに派兵されたデンマーク軍に密着したカメラの映像を、まるでシナリオがあるようなカット割りで構成し直した映画で、こうなるとどこまでがドキュメンタリー映画で、どこからが劇映画なのか境目がわからなくなってしまった。ドキュメンタリー映画って、劇映画以上に何でもありなんだな、とおもってしまった。個人的には好きな映画であるけれど。

『阿仆大(アプダ)』(中国/2010/和淵(ホー・ユェン)監督)
『永遠のハバナ』や『アルマジロ』とは真反対に位置するドキュメンタリー映画。中国雲南省北部の森深い土地に暮らす年老いた父親とその父親を介護する息子の生活を、カメラはフィクス、ワンシーンワンカットで描いた映画。ああ、まさにこれが真のドキュメンタリーだ。退屈だけれど。リズム良く編集し直されたドキュメンタリー映画が良いのか、リズムは無くとも被写体そのものをカメラ回しっぱなしで追いかけたドキュメンタリーが良いのか。どっちが良いのかはわからない。

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