ニンフォマニアック Vol.1

監督:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレーター、ユマ・サーマン、ソフィー・ケネディクラーク、コニー・ニールセン、ジェームズ・ノースコート、チャーリー・G・ホーキンス、イェンス・アルビヌス、フェリシティ·ギルバート、イェスパー·クリステンセン、ヒューゴ・シュペーア、サイロン・メルヴィル、サスキア・リーヴス、ニコラス・ブロ、クリスチャン·ガーデビヨ
原題:NYMPH()MANIAC
制作:デンマーク/2013
URL:http://www.nymphomaniac.jp
場所:新宿武蔵野館

ラース・フォン・トリアーの前作『メランコリア』は、映画館で観た時にはそんなに気にも止める映画でもなく、ラース・フォン・トリアーにしては不快さが足りないな、と云う感想しか持たなかったのだけれど、その後なぜかジワジワと『メランコリア』への愛着が募り、WOWOWで再見した時にはその映画がすっかり好きなっていた。でもそれは、ラース・フォン・トリアーへの期待がしっかりと映像化された結果に対する愛着ではなく、映画の中で描かれる絶望のイメージが自分の中でおもい描いていたイメージとぴったりと合致していたことが時が経つにつれて次第に鮮明になって来たにすぎなかった。自分にとってラース・フォン・トリアーに対する期待とは絶えず『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラストシーンなんだとおもう。あのラストシーンは私が見てきた映画史上最低だった。最低の最低の最低映画だった。だからこそ素晴らしかった。

今回はそんなラース・フォン・トリアーの最低映画に久しぶりに会えるのかな、と期待したけど、またちょっとはぐらかされてしまった気がする。特に「第3章ミセスH」は何なんだろう? 笑えるのだ。ラース・フォン・トリアーの映画で笑えるとはおもっていなかった。それもしっかりと笑わす工夫をしているコントのようだった。ユマ・サーマンに復讐劇をやらせるなんて、タランティーノのパロディなのか!

パロディの兆候は「第1章コンプリートアングラー」からあった。アイザック ウォルトンの名著「釣魚大全」を引き合いに出した色情狂成長記録は、フライ・フィッシングの作法とセックスするために男をピックアップする手法を重ね合わせたパロディのような体裁で、そこかしこに笑わせるような仕掛けを用意していた。この段階からして今回のラース・フォン・トリアーの映画に対して?マークが付いたのだけれど、それが「第3章ミセスH」ではっきりしたわけだった。うーん、ラース・フォン・トリアーに対して求めているのはこれではまったくない。どうしてこんな映画を撮ることになったのだろう。はたしてこんな気持ちでVol.2も観るべきか。どうしよう。

→ラース・フォン・トリアー→シャルロット・ゲンズブール→デンマーク/2013→新宿武蔵野館→★★★

雲晴れて愛は輝く

監督:ハワード・ホークス
出演:ジョージ・オブライエン、ヴァージニア・ヴァリ、ウィリアム・パウエル、トーマス・ジェファーソン、J・ファーレル・マクドナルド、フランシス・マクドナルド、ハンク・マン
原題:Paid to Love
制作:アメリカ/1927
URL:
場所:東京国立近代美術館フィルムセンター大ホール

今年の東京国際映画祭の一環として企画された「N.Y.近代美術館映画コレクション」には観たい映画がいっぱいあったけど、結局は体調を崩したこともあってこのハワード・ホークスのサイレント映画だけしか観ることができなかった。でも、そのたった1本の映画のピアノ伴奏が新垣隆と云う豪華さで、想像していたよりも生ピアノの心地良さにびっくり。最近よく生ピアノ伴奏付きのサイレント映画があちこちで上映されていたけど、これはもっと体験しておくべきだったと反省しきり。

このハワード・ホークスの監督としての4作目は、まるで教科書のような映画だった。物語の構成や場面展開、笑わせるツボを押さえた演出のどれをとっても基本となるような映画で、ハワード・ホークスのその後の綺羅星のごとく輝く映画群のスタートラインに立つ映画としても納得のできる映画だった。人物の動きで説明する必要のあるサイレント映画で培った演出術のベースがあるからこそ、例えば『リオ・ブラボー』での寡黙なジョン・ウェインの存在感を引き立たせることができるのだ。

自分の隣に座った学生とおぼしき人が暗闇の中で器用に、しきりにノートを取っていた。いつもなら映画を楽しんでいないそんな行為に憤慨するところだけど、このお手本となるような映画ならノートを取るのも当たり前だなと変に納得してしまった。

→ハワード・ホークス→ジョージ・オブライエン→アメリカ/1927→東京国立近代美術館フィルムセンター大ホール→★★★★

アバウト・タイム 愛おしい時間について

監督:リチャード・カーティス
出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、リディア・ウィルソン、リンゼイ・ダンカン、リチャード・コーデリー、ジョシュア・マクガイア、ウィル・メリック、バネッサ・カービー、トム・ヒューズ
原題:About Time
制作:イギリス/2013
URL:http://abouttime-movie.jp
場所:新宿武蔵野館

タイムスリップものの映画を観た時に、何よりもまずタイムスリップのルールが気になってしまう。そこに粗が目立つと一気に映画を見る気が失せてしまう。タイムスリップ映画の大前提としてタイム・パラドックスがあるので必ず矛盾があるわけだけど、その矛盾を意識させないようなキッチリとしたルールを作っている映画か、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような勢いで見せてしまうような映画でなければ、どうしても途中で白けてしまう。

この『アバウト・タイム 愛おしい時間について』はそのルールが適当だった。

タイムスリップのルールとして、以下の事があったとおもう。

・タイムスリップの能力は男系に遺伝する
・暗闇の中で目をつぶって両手のこぶしを握りしめればタイムスリップできる
・未来へはタイムスリップできない
・自分に男系の子供が産まれたら、その時点の年齢以前にはタイムスリップできない

まず、大前提として「未来へはタイムスリップ出来ない」と掲げて置きながら、簡単にそれを破っている。ルールを決めて置きながら、どうしてそんなに簡単に反故にできるんだろう。いや、もしかして、あれは未来へ戻ったわけではなくて、過去へのタイムスリップを取り消したんだろうか。でも、そんなことが出来るなんて聞いてない!

この映画の分岐点とでも云える、妹が事故を起こす重要なシーンにこの矛盾を突きつけられてしまったので、その解釈をめぐって頭の中がフル回転してしまって、主人公の感情の機微にしっかりと感情移入するべきポイントをすっかり逃してしまった。

それから、「自分に男系の子供が産まれたら、その時点の年齢以前にはタイムスリップできない」は最初にキッチリと説明して欲しかった。ラストの感動を盛り上げるためにいきなりそんなことを云われても!

過ぎ去った時間が、それが自分にとって良い事でも悪い事でも、何ものにも代えがたい重要な一瞬であると云うことをタイムスリップを多用することによって明らかにして行く。映画自体の主題はとても共感できるものだっただけに、このルールの矛盾が残念すぎて。

→リチャード・カーティス→ドーナル・グリーソン→イギリス/2013→新宿武蔵野館→★★★

猿の惑星: 新世紀

監督:マット・リーヴス
出演:アンディ・サーキス、ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン、ケリー・ラッセル、トビー・ケベル、ジュディ・グリア、コディ・スミット=マクフィー
原題:Dawn of the Planet of the Apes
制作:アメリカ/2014
URL:http://www.foxmovies-jp.com/saruwaku-r/
場所:新宿ミラノ

スウェーデン映画の『ぼくのエリ 200歳の少女』をハリウッドでリメイクした『モールス』が素晴らしかったマット・リーヴスが、今度は「猿の惑星」の新シリーズを撮った。

ドラマの構造としては往年の西部劇をおもい出した。エイプをインディアンに代えれば、1950年のデルマー・デイビス監督の『折れた矢』のストーリーとそっくりだった。ジェイソン・クラークがジェームズ・スチュアートで、エイプのシーザーがアパッチ族の大酋長コチーズで、シーザーに反旗を翻すコバが若いインディアンのジェロニモだ。まあ、このあたりの構造のドラマは、元を辿ればシェークスピアの「ロミオとジュリエット」になるのだろうけど、映画の原作になるピエール・ブールの「猿の惑星」が、第二次世界大戦中に日本軍の捕虜となった経験から書かれたのではないか(ピエール・ブールがそのことに言及したことはないらしい)と前作の『猿の惑星: 創世記』の公開時に話題になったことから、なんとなく、同じ有色人種であるインディアンのストーリーをおもい浮かべたのだった。

二つの対立軸があって、その中に穏健派と強硬派がいて、対立軸の双方に通じ合う人物がいるような構造のドラマが絶えず作られるのは、そこに映画を観ているもののエモーションを呼び起こしやすい構造があるからなんだとおもう。とは云え、そのような構造を持ってしても面白くない映画はいっぱいあるのだけれど、マット・リーヴスはさすがに巧かった。特にエイプたちのキャラクターをキッチリと描き分けて、それがストーリーにしっかりと効いているのが良かった。無残に殺されるアッシュがちょっと可愛そうだったけど。

→マット・リーヴス→アンディ・サーキス→アメリカ/2014→新宿ミラノ→★★★☆

レッド・ファミリー

監督:イ・ジュヒョン
出演:キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホ、パク・ソヨン、パク・ビョンウン、カン・ウンジン、オ・ジェム、パク・ミョンシン、キム・ジェロク
原題:붉은 가족
制作:韓国/2013
URL:http://redfamily.gaga.ne.jp
場所:新宿武蔵野館

韓国で疑似家族を演じている北朝鮮の工作員たちと、その隣の家に住む資本主義にどっぷりとつかってケンカばかりしている韓国のどうしようもない家族を対比させて、そこから真の家族のあり方が見えてくるような構成にしている映画は面白いとおもったけれども、ことあるごとに北朝鮮に残してきた家族への愛情が引き合いに出されて、感傷的な感情を煽るだけなのはちょっと退屈してしまった。もうちょっとシニカルな、アイロニーたっぷりな描写も必要だったんじゃないのかなあ。そして、もっと笑えたら良かった。予告編では笑いながら泣ける映画をイメージさせていたので、あまりにも笑えなかったので肩透かしを食ってしまった。キム・ギドクの脚本に笑いを求めるのは無理だったのかなあ。だったら、ラストはもっと辛辣でも良かったのに。

→イ・ジュヒョン→キム・ユミ→韓国/2013→新宿武蔵野館→★★★

ジャージー・ボーイズ

監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーガン、ヴィンセント・ピアッツァ、マイケル・ラマンダ、クリストファー・ウォーケン、キャサリン・ナルドゥッチ、フレイヤ・ティングレイ、マイク・ドイル、ジョニー・カニツァロ、ドニー・カー、ジョーイ・ルッソ
原題:Jersey Boys
制作:アメリカ/2014
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/
場所:109シネマズ木場

フォー・シーズンズの「シェリー(Sherry)」を聞いたのはいつごろだったのだろう。『アメリカン・グラフティ』のサントラに入っていたとおもったけれどまったくの勘違いだった(公開当時、なぜ1962年の最大のヒット曲「シェリー(Sherry)」が入っていないのかと話題になったらしい)。60’sのコンピレーションCDをたくさん買っていた時期もあったので、その中に入っていたのではないかとおもってiTunesを検索したら取り込まれていなかった。まあ、おそらく、何かの映画の挿入歌として聞いたのだとおもう。

時を同じくして、いや、それより前かもしれない。1979年に『ディア・ハンター』が公開されて、そこで使われていた「君の瞳に恋してる(Can’t Take My Eyes Off You )」に、ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・サベージ、ジョン・カザールらと一緒に合唱したくなるほど心ときめいた。

Can’t Take My Eyes Off You from Fabio V on Vimeo.

そして、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に使われていた10ccの「I’m not in love」を聞いた時に、走馬灯のようにおもい出したアメリカのFM曲をエアチェックしただけのカセットテープをなんとか発掘して来て確認したところ、やっぱり「瞳の面影(My Eyes Adored You)」が入っている! この曲は何度も何度も聞いたんだよなあ。(でも、10ccの「I’m not in love」が入っていない! 同じようなアメリカのFM曲をエアチェックしただけのカセットテープをさらにダビングさせてもらったテープも一緒に出て来たので、おそらくそこに入っているに違いない。もうすでにカセットテープを再生できる環境が何もないので確認できないけど)

エアチェックテープ
(ただ、タイトルが「MY EYES GEORGEA」になっている。「My Eyes Adored You」とそのオリジナル・タイトル「Blue Eyes in Georgia」が合体してしまったのか?)

私のようにそんなに音楽を聞いてこなかった人間でも、このようにフォー・シーズンズやフランキー・ヴァリの曲は自分の中に記憶としてこびりついていて、その曲が流れてくるだけで、ぞわーっと鳥肌が立ってくる。伝説的なミュージシャンを題材にした映画は、ヒット曲が生まれる過程の彼らの生きざまと、その曲と出会った自分の過去とがシンクロして、イントロが流れるだけでゾクゾクとしてしまって、映画の出来なんてどうでもよくなる。あ、でも、クリント・イーストウッドはすごい。なんでこの人は歳を取っても老成しないで、こんな職人気質の映画を撮れるんだろう! 素晴らしい。

→クリント・イーストウッド→ジョン・ロイド・ヤング→アメリカ/2014→109シネマズ木場→★★★★

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

監督:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット、クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デビッド・バウティスタ、ブラッドレイ・クーパー、ヴィン・ディーゼル、リー・ペイス、マイケル・ルーカー、カレン・ギラン、ジャイモン・フンスー、ジョン・C・ライリー、グレン・クローズ、ベニチオ・デル・トロ
原題:Guardians of the Galaxy
制作:アメリカ/2014
URL:http://studio.marvel-japan.com/blog/movie/category/gog
場所:シネマスクエアとうきゅう

映画を観たことをきっかけとして、またマーベル・シネマティック・ユニバースの世界をネットで勉強する。

マーベルコミックスの最初の「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー(Guardians of the Galaxy)」は、別世界(Earth-691)の31世紀において、バドゥーン(Badoon)に抵抗するために結成されたチーム。初期メンバーとしては、

メジャーヴィクトリー(Major Victory)/ ヴァンス・アストロ(Vance Astro):元アメリカの宇宙飛行士。
チャーリー-27(Charlie-27):木星人。
マーティネックス(Martinex):冥王星人。
ヨンドゥ(Yondu):ケンタウリ人。
スターホーク (Starhawk):アークトゥリアン。
ニッキー(Nikki ):水星人。

らがいる。

そして、第二期のチームは正史世界(Earth-616)において、アナイアラスの襲撃、ファランクスの侵略と宇宙規模の危機が立て続けに起こった後、新たな危機に対抗するため結成されたチーム。メンバーとしては、

スターロード(Star-Lord):地球人とスパルタクスとのハーフ。
アダム・ウォーロック (Adam Warlock):遺伝子操作で造られた生命体。
ドラックス・ザ・デストロイヤー (Drax the Destroyer):地球人。サノスによって殺されるが、クロノスによって新たな強靭な肉体となって蘇る。
ガモーラ(Gamora):サノスの養女。肉体を強化されている。
クエーサー(Quasar)/マーター(Martyr):エターナルズのDNAを模して創られた女性とクリー人のハーフ。
ロケット・ラクーン(Rocket Raccoon):高い知能を持った擬人化アライグマ。
グルート(Groot):強大な腕力と知性を兼ね備えた植物型知的生命体。
マンティス(Mantis):強力なテレパスであり予言者。
メジャー・ヴィクトリー(Major Victory):平行世界(Earth-691)のガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーのメンバーでもある。
バグ(Bug)
ジャック・フラッグ(Jack Flag)
コスモ・ザ・スペースドッグ(Cosmo the Spacedog)
ムーンドラゴン(Moondragon)

らがいる。

映画版『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、この第二期のチームの、スターロード、ドラックス・ザ・デストロイヤー、ガモーラ、ロケット・ラクーン、グルートのキャラクターを使って映画化している。

で、それぞれのキャラクター設定は、コミックと映画版では微妙に違っていて、例えば主人公となるピーター・クイルでは、http://amecomimovienews.blog.fc2.com/blog-category-8.html を参照すると以下のようになる。

(原作設定)
・地球人のメレディスと宇宙人のスパルタクスとの間の子。
・地球の孤児院で育った後はNASAの飛行訓練士になる。宇宙ステーションにマスター・オブ・ザ・サンという宇宙人と知り合い、銀河警察“スターロード”のマントを授かってヒーローになる。
・映画版とは異なり、盗賊(トレジャーハンター)ではない。
・武器は映画と同じ。宇宙の文化や人種の知識も豊富であり、戦略家としても活躍する。
・コーヒーが好き。
・GoGを結成したのは、ファランクス戦争と呼ばれる戦いで率いた囚人部隊を基に、次なる脅威に備えようと考えたから。

(映画設定)
・1988年に母を亡くし、直後にヨンドゥ率いるラヴェジャーズに地球から宇宙へ拉致される。以降はラヴェジャーズの一員として宇宙盗賊となる。
・右耳の裏に機械を装着しており、ヘルメットマスクを起動する基となる。また、首には翻訳機が埋め込まれており、多数の宇宙言語に対応できると考えられる。
・武器は二丁のエネルギー銃。

他のキャラクターは、http://amecomimovienews.blog.fc2.com/blog-category-8.html を参照。

映画の設定では、まずは母親の死のシーンから始まる。その時ピーター・クイルは、おそらくは母親が好きだった70年代の曲をミックスしたカセットテープを聞いている。最後のプレゼントとしても、すぐにはその紙包みを明けないけど、新たにミックスしたカセットテープをもらう。

映画版『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が素晴らしいのは、映画的な効果を重視するために70年代のポップスを持って来たことだ。もしかすると、まずは70年代のポップスありきで、そこから映画の設定を考えて行ったんじゃないかとおもえるくらいに重要なアイテムとなっている。以下、この映画のサウンドトラック。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: 最強 Mix Vol. 1
1.「Hooked on a Feeling」ブルー・スウェード
2.「Go All the Way」ラズベリーズ
3.「Spirit in the Sky」ノーマン・グリーンバウム
4.「Moonage Daydream」デヴィッド・ボウイ
5.「Fooled Around and Fell in Love」 エルヴィン・ビショップ
6.「I’m Not in Love」 10cc
7.「I Want You Back」ジャクソン5
8.「Come and Get Your Love」レッドボーン
9.「Cherry Bomb」ザ・ランナウェイズ
10.「Escape (The Piña Colada Song)」ルパート・ホルムズ
11.「O-o-h Child」ファイヴ・ステアステップス
12.「Ain’t No Mountain High Enough」マーヴィン・ゲイ & タミー・テレル

映画化する際にコミックの設定を重視しないことは、映画化の成功の一つなんだとおもう。コミックでの面白さは必ずしも映画の面白さには繋がらないわけで、映画でのアクションを盛り上げるための音響効果を最大限に発揮するための設定変更は特に重要だったりする。

1990年ごろだったか、渋谷のアメリカ雑貨の店にアメリカのFM曲をただエアチェックしただけのカセットテープが売られていて、なぜかそれを買って何度も何度も繰り返し聞いていた。その中に10ccの「I’m Not in Love」が入っていたので、自分の個人的な経験からもいきなりピーター・クイルと同調してしまった。映画に使われている音楽が自分の聴いてきた音楽とシンクロすると鳥肌が立つくらいに共振する。

サノスのインフィニティ・ガントレットだけど、マーベル・シネマティック・ユニバースの世界ではインフィニティ・ジェムではなく、

①四次元キューブ(テセラクト)
『キャプテン・アメリカ:ファースト・アベンジャー』『アベンジャーズ』に登場
②ロキの杖の青い石
『アベンジャーズ』に登場
③エーテル
『マイティ・ソー:ダーク・ワールド』に登場
④オーブ
『ガーディアンズ オブ ギャラクシー』に登場する球状のお宝

と、インフィニティ・ストーンに置き換えられているらしい。だから、あと2つインフィニティ・ストーンを集めれば、サノスはインフィニティ・ガントレットを作り出せるはずだ。

→ジェームズ・ガン→クリス・プラット→アメリカ/2014→シネマスクエアとうきゅう→★★★★

鳥の道を越えて

監督:今井友樹
出演:今井友樹、今井照夫
制作:工房ギャレット/2014
URL:http://www.torinomichi.com
場所:飯田橋しごとセンター

民族映像文化研究所の関係で以前から知っている今井友樹さんの初監督作品『鳥の道を越えて』は、岐阜の東濃地方を中心に関東から関西にかけて行われていた「カスミ網」猟についてのドキュメンタリー作品だった。「カスミ網」猟とは、渡り鳥の通り道(「鳥の道」)に「カスミ網」を掛けて鳥を捕獲する猟のことで、古くは江戸時代の文献にその猟が行われていた記録が残っているそうだ。中部地方の貧しい山間部の人たちにとって鳥を食べることは、たんぱく質源を確保するための欠かせない猟だった。

今井監督の出身が岐阜県東白川村であることから、祖父から「カスミ網」のことやその網を張る猟場「トヤ」のことを小さい頃に聞かされていたことがこのドキュメンタリーを撮るきっかけとなったらしい。その今井さんの祖父には見える、山の稜線にある「鳥の道」を求めてこの映画は進んで行く。

「カスミ網」猟は、すでに戦後にGHQ主導によって禁止されてしまっているので、今ではその猟を見ることはできない。なので、渡り鳥の生態を研究するため、鳥に足輪を付けるために「カスミ網」を使って鳥を捕獲している福井県にある山階鳥類研究所の調査所の映像が紹介される。その映像によって、実際に鳥が「カスミ網」にかかるしくみがよくわかる。

この猟の一番のポイントは、鳥をおびき寄せるための囮の鳥がいることだった。今では鳴き声の録音をスピーカーで流すだけだけど、昔は実際の鳥を使用していたらしい。それも単純に捕まえた鳥を鳴かせれば良いわけではなくて、1年をかけて鳥を調教して、猟の時季に他の鳥をおびき寄せるための鳴き声を出すように訓練するらしい。それがうまく行けば、鳥によってはその一声でたくさんの鳥が集まって来て、入れ食い状態で捕獲することが可能になるらしい。

初監督作品らしく、とても律義に構成してあるので、この「カスミ網」猟のことがしっかりとわかるような映画になっている。今井さんナレーションと同じように、最初は見えなかった「鳥の道」が映画の最後には見えるようになって行くのが嬉しかった。

今回の上映が終わった後の監督との質疑応答で、しゃべっている人の方言が聞き取りにくくて何を云っているのかさっぱりわからなかった、との不満があった。うーん、そうかなあ。まったくそうはおもえなかった。もちろん聞き取りにくいところはあったけど、前後の文脈のニュアンスで補える程度なんじゃないのかなあ。テレビの影響で、何でもかんでもテロップを入れてはっきりさせる傾向があるけど、そういうのは大嫌い。もちろんドキュメンタリーなんだから、見ている人にしっかりと伝える努力は必要だけど、なんでもかんでも、子供から老人まですべての人にわかるような至れり尽くせりの映画って、おそらくとてつもなくつまらない映画だ。

→今井友樹→今井友樹→工房ギャレット/2014→飯田橋しごとセンター→★★★☆

ヘウォンの恋愛日記

監督:ホン・サンス
出演:チョン・ウンチェ、イ・ソンギュン、ユ・ジュンサン、イェ・ジウォン、ジェーン・バーキン
原題:누구의 딸도 아닌 해원
制作:韓国/2013
URL:http://www.bitters.co.jp/h_s/
場所:シネマート新宿

『ソニはご機嫌ななめ』に続いてのホン・サンスの映画。

ホン・サンスのスタイルは、カメラをフィックスさせたワンシーン、ワンカットの会話劇だけではなくて、小道具の使い方や音楽の使い方、ソウルやソウル近郊の名所でのロケーションなど、まるで小津安二郎のように一貫した様式美があって、そこに酔ってしまうような気がする。さらに『ヘウォンの恋愛日記』は『ソニはご機嫌ななめ』よりも夢と現実が交錯した複雑な構成となっているので、ヘウォンの微妙な精神状態をもスタイリッシュな中に取り込まれて、まるでテーブルに突っ伏して眠るヘウォンと同じような夢心地となって気持ち良い。

ヘウォンから別れ話を持ち出されてむせび泣く不倫相手のソンジュンのシーンも特徴的で、そこに流れるベートーベン交響曲第7番第2楽章がこのシーンに合っているとはとてもおもえない。でも、そのぶしつけな楽曲の使い方もおかしなものでホン・サンスのスタイルに見えてくる。

ヘウォンの恋愛日記

このシーンのロケ地となった南漢山城はソウルの南東の京畿道広州市にあって、その歴史は古く、百済の王都漢城がここにあったと云う説がある。今年、韓国で11番目(自然遺産を含めて)のユネスコ世界遺産に登録されたらしい。

→ホン・サンス→チョン・ウンチェ→韓国/2013→シネマート新宿→★★★★

LUCY/ルーシー

監督:リュック・ベッソン
出演:スカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン、チェ・ミンシク、アムール・ワケド、ジュリアン・リンド=タット、ピルウ・アスベック、アナリー・ティプトン
原題:LUCY
制作:フランス/2014
URL:http://lucymovie.jp
場所:新宿ミラノ1

リュック・ベッソンを追いかけなくなって久しいが、今回の映画にはちょっと食指が動いたので観てみた。

映画への入り方は良かった。ヒッチコックよろしく巻き込まれ型で、スカーレット・ヨハンソンが得体の知れない組織の麻薬らしきモノの運び屋にされてしまって、お腹の中に青い錠剤が詰まった袋を埋め込まれるところまでのスピーディな展開にはワクワクした。でも、そこからのストーリー展開は、ただ単にスカーレット・ヨハンソンが超人化して行く過程を見せているだけで、敵対する韓国マフィアもスカーレット・ヨハンソンの超人パワーに対してはまったくの役不足なので、だったら人間の脳を研究する教授として登場させるモーガン・フリーマンをもっとストーリーに絡ませて、超人スカーレット・ヨハンソンと対決するくらいの展開が欲しかった。

スカーレット・ヨハンソンのお腹の中に埋め込まれた袋が破裂して、その中にあった青い錠剤によって脳が覚醒化されて、今まで10%しか使われていなかった人間の脳が100%フル稼働して行くイメージも、今までさんざん映像化されて来たようなエスパーとしての超能力を発揮するだけではまったく面白くない。せっかく人間の脳の使われていない領域を研究している学究の徒としてモーガン・フリーマンを登場させているわけだから、もっとリアルな実際の脳研究の成果をイメージ化させて欲しかった。おそらく人間の脳が100%フル稼働したとしても超能力者になるわけじゃなくて、五感が鋭くなるだけなんじゃないのかなあ。『レインマン』の自閉症であるダスティン・ホフマンが、ぶちまけられた楊枝の本数を一発で当ててしまうような感じの。

→リュック・ベッソン→スカーレット・ヨハンソン→フランス/2014→新宿ミラノ1→★★★