フラッシュバックメモリーズ 3D

監督:松江哲明
出演:GOMA
制作:SPACE SHOWER NETWORKS INC./2012
URL:http://flashbackmemories.jp/
場所:吉祥寺バウスシアター

オーストラリアの先住民アボリジニが使うディジュリドゥと云う楽器を見た事はあってもそれが何と云う名称かも知りもしなかった。だから、その楽器を使った日本人アーティストがいるなんてことはまったく知る由もなかった。そして、その日本人ディジュリドゥ奏者のGOMAが、2009年11月26日に首都高速で追突事故に遭って、記憶の一部が消えてしまったり新しいことを覚えづらくなるという高次脳機能障害の症状に見舞われていたことももちろん知りもしなかった。ドキュメンタリー映画の醍醐味の一つは、自分とはまったく接点のない人たちが、何かしらの問題にぶつかって、そこで一生懸命にもがいている事実を見せつけてくれることだ。この映画は、そのような基本的なドキュメンタリーを表現するにあたって、さらに昨今のブームの3D技術を使っている。

ドキュメンタリー映画に3D技術は必要なんだろうか? もちろん、それが効果的に作用するのなら必要だ。安易な3D化はただ、ただ観るものに苦痛を与えるだけなんだけど、3D化することによって伝えようとするメッセージがより明確になるのならドキュメンタリー映画と云えども使っても良いとおもう。

この『フラッシュバックメモリーズ 3D』は、驚くべきことにその3Dが効果的に働いていた。GOMAによるディジュリドゥの演奏シーンは、まるでスクリーンのすぐそこでパフォーマンスをしているような臨場感があって、それはとりもなおさず不明瞭な記憶しか持たないGOMA自身の本来あるべき姿のような、くっきりとした鮮やかな記憶を表現しているようにさえ見えてしまった。細長いディジュリドゥと云う楽器も、奥行きを表現するのに適している3D化にぴったりの楽器だった。

今まで3D映画を観て良かった思えたのは『ヒューゴの不思議な発明』と『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』だけだったけど、なんとこの日本のドキュメンタリー映画が3本目となった。

→松江哲明→GOMA→SPACE SHOWER NETWORKS INC./2012→吉祥寺バウスシアター→★★★☆