監督:ビクトル・エリセ
出演:マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント、ペトラ・マルティネス、マリア・レオン、マリオ・パルド、エレナ・ミケル、アントニオ・デチェント、ホセ・マリア・ポウ、ソレダ・ビジャミル、フアン・マルガージョ、ベネシア・フランスコ
原題:Cerrar los ojos
制作:スペイン/2023
URL:https://gaga.ne.jp/close-your-eyes/
場所:ユナイテッド・シネマウニクス南古谷

日本でビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』が公開されたのは1985年だった。今でもシネ・ヴィヴァン・六本木に観に行ったことをありありとおもい出せる。同時にアナ・トレントの大きな瞳のことも。

『ミツバチのささやき』が作られたのは1973年。それからビクトル・エリセは『エル・スール』(1983年)『マルメロの陽光』(1992年)しか撮ってなくて、今回の『瞳をとじて』で長編映画は4作目。『ミツバチのささやき』が作られてから51年が経っていて、日本公開からもすでに39年が経っている。でも寡作の監督の作品は、作られた間隔が長いわりには、なぜか時間が凝縮して感じられる。『マルメロの陽光』を観たのがもう30年前になるとはとても信じられない。

今回のビクトル・エリセの『瞳をとじて』は、22年前の撮影中に失踪した俳優をめぐるテレビ番組をきっかけに、その番組に出演した映画監督が視聴者からの情報を元に俳優の居場所を突き止めていくストーリーだった。

俳優が失踪したことによって完成しなかった映画のシーンからはじまるこの映画は、映画フィルムと云うものが過去を定着させる意味合いも含んでいることから、そこから受けるノスタルジーな感覚がとても強烈で、さらに失踪した俳優の娘役をアナ・トレントが演じていることからも、ビクトル・エリセが映画を作ってきたゆるやかな時間を同時におもい起こさせるものになっていた。

ノスタルジーは簡単に人の感情を揺さぶることができるので、57歳になったアナ・トレントに「Soy anna」と云わせるところは、それはズルイよ、と感じながらも、どうしたって目がウルウルにならざるを得ない映画だった。

→ビクトル・エリセ→マノロ・ソロ→スペイン/2023→ユナイテッド・シネマウニクス南古谷→★★★★