監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チョン・ジソ、 チョン・ヒョンジュン 、イ・ジョンウン、パク・ミョンフン、パク・ソジュン
原題:기생충
制作:韓国/2019
URL:http://www.parasite-mv.jp
場所:109シネマズ菖蒲

ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』は、昨年の第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルム・ドールを受賞した映画で、公開からTwitter界隈でも絶賛の声しか聞こえてこないほど評価が高い。となると、根っからの天の邪鬼な性分としては身構えて映画を観てしまう。

その『パラサイト 半地下の家族』は、ストーリーの展開に意外性があって、なるほど、これならみんなが面白いって云うはずだ、とはおもったのだけれど、身構えた角度から些細なところを指摘するならば、半地下の貧乏家族が金持ちの家族に取り入って行く過程があまりにもテキパキとしていて、聡明すぎやしねえか、との感想を持てしまった。それだけ状況に応じて的確に判断できる能力を兼ね備えているのならば、その貧乏生活からどっくに抜け出せただろうが、とはちょっとおもってしまった。

それに金持ち家族も、人を自宅に招き入れるセキュリティチェックが甘すぎて、今の時代ならばもうちょっと身辺調査とかするんじゃないのか? と細かなところが気にはなってしまう映画ではあった。

でも、そんなところは些細なところで、いまの韓国映画の勢いを代表する映画だった。まあ、韓国映画の場合、個人的にはナ・ホンジンのほうが好みではあるんだけど。

→ポン・ジュノ→ソン・ガンホ→韓国/2019→109シネマズ菖蒲→★★★☆

監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベチャー
出演:
原題:A Shaun the Sheep Movie: Farmageddon
制作:イギリス、フランス/2019
URL:https://www.aardman-jp.com/shaun-movie//
場所:109シネマズ木場

「ひつじのショーン」シリーズは、ニック・パークの『ウォレスとグルミット、危機一髪』(1995)に登場した羊のショーンを主人公としたスピンオフ作品。「ウォレスとグルミット」シリーズのようなイギリス的なシニカルさはまったくないけれど、そのかわりに人間の登場人物でさえもセリフを排除して、しゃべったとしても意味不明の言葉にして、キャラクターの動きだけでストーリーを理解させようとしているのは、より子供向けの作品にしたことと、グローバルな戦略もあってのことだとおもう。でもそこが、まだサイレント映画だったころの、体の動きだけで表現しようとする映画の原初的な魅力をも兼ね備えているようで、観ていてとても楽しい。

個人的には「ウォレスとグルミット」シリーズのようなテンポの良さやスピード感が好みなのだけれど、観ていてよりほのぼのとした気持ちになるのは「ひつじのショーン」シリーズのほうではないかとおもう。

→リチャード・フェラン、ウィル・ベチャー→→イギリス、フランス/2019→109シネマズ木場→★★★

監督:オリヴィエ・アサイヤス
出演:ギョーム・カネ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・マケーニュ、クリスタ・テレ、パスカル・グレゴリー
原題:Doubles Vies
制作:フランス/2018
URL:http://www.transformer.co.jp/m/Fuyujikan_Paris/
場所:ル・シネマ1

オリヴィエ・アサイヤスの新作は、老舗出版社の編集者と舞台女優の妻、そしてその出版社から私小説(のような小説)を出版している小説家と政治家の秘書をしている妻、この二組の夫婦を中心に、電子書籍やブログ、Twitter、Youtubeなどの流行のデジタルテクノロジーに翻弄されるフランスの出版業界と「互いの関係に新たな意義を見出し、受け入れ合う夫婦を語りたいと思った」(アサイヤス談)とを重なり合わせて描いているところが、まったくの想定外だったのでめちゃくちゃ面白かった。

とくに、従来からあるような私小説的な作品の扱いに苦慮する編集者が自社のデジタル化コンサルタントの若い女性と不倫して、さらにはアメリカ的な新しいテレビシリーズに進出している舞台女優がその私小説的なものを書いている小説家と不倫していると云う、「古いもの」と「新しいもの」が混沌としつつ、結局は既存の枠組みである「出版」や「舞台女優」や「夫婦」から抜け出せないでいる人間たちのドタバタ喜劇を見ているようで、可笑しくも身につまされるストーリーだった。

フランス人の(ちょっと上流の人たちの)生活には、友人知人や仕事関係の人たちと、外でのランチでも家でのディナーでも仕事の打ち合わせでも、集まってあーだこーだと議論を戦わせるのが一般的なのかなあ。そこでの会話劇にもなっているところが楽しかった。

→オリヴィエ・アサイヤス→ギョーム・カネ→フランス/2018→ル・シネマ1→★★★★

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け

監督:J・J・エイブラムス
出演:キャリー・フィッシャー、マーク・ハミル、アダム・ドライバー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、アンソニー・ダニエルズ、ナオミ・アッキー、ドーナル・グリーソン、リチャード・E・グラント、ルピタ・ニョンゴ、ケリー・ラッセル、ヨーナス・スオタモ、ケリー・マリー・トラン、イアン・マクダーミド、ビリー・ディー・ウィリアムズ
原題:Star Wars: The Rise Of Skywalker
制作:アメリカ/2019
URL:https://starwars.disney.co.jp/movie/skywalker.html
場所:109シネマズ木場

1977年に有楽町の日劇で観たジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』から42年が経って、ついに『スター・ウォーズ』シリーズの最終話が公開されることとなった。あれから半世紀近くが経っているとはおもえないほどに、1977年のころの熱狂が昨日のことのようにありありとおもいだされるのはびっくりだ。それほどに『スター・ウォーズ』は映画史のひとつの転換点とも云える大きな出来事だった。

その『スター・ウォーズ』の多大なる功績を、そのまま人びとの大きなおもいでとして留めておけば良かったものを、最初から9部作の構想があったと云い出したジョージ・ルーカスの野望によって作り出された1999年の『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』はまったくの失敗作で、その時点で『スター・ウォーズ』は最初の3部作だけの記憶として留めてしまった人びとが多かったはずだった。

なのに、さらにジョージ・ルーカスの野望を完遂しようとした人たちによって作られた最後の3部作は、ジョージ・ルーカスへの敬意からなのか、第1作のストーリー構成と同じパータンをなぞってばかりで、今回の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』もまた同じパターンの繰り返しだった。

この繰り返しの意義をまったく見い出せずにいるのだけれど、それでもキャリー・フィッシャーやマーク・ハミルやハリソン・フォードが登場すればおのずと目頭が熱くなり、ラスト、惑星タトゥイーンの二つの太陽が登場するに至っては感動してしまうのであった。

めでたしめでたし。

→J・J・エイブラムス→キャリー・フィッシャー→アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★

カツベン!

監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、徳井優、田口浩正、正名僕蔵、成河、森田甘路、酒井美紀、シャーロット・ケイト・フォックス、上白石萌音、城田優、草刈民代、山本耕史、池松壮亮、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊
制作:「カツベン!」製作委員会/2019
URL:https://www.katsuben.jp
場所:Movixさいたま

シネコンにしては年齢層高めのスクリーンで観た周防正行監督の『カツベン!』は、正月にふさわしい楽しい映画ではあったけのだれど、「カツベン」とタイトルを付けておきながら、サイレント映画時代の活動弁士の魅力をじゅうぶんに伝えることが出来ていないんじゃないのかなあ、と云う感想がまっさきに立ってしまった。それは名弁士「山岡秋声」役の永瀬正敏にまったく弁士としての魅力を感じられないことからはじまって、声だけで女性を卒倒させる高良健吾の弁士にもどうしてそんなに人気があるのかさっぱりわからなかったし、ああ、成田凌にも主演俳優としての魅力を感じられなかった。

当時の活動弁士の魅力とは、かろうじて知識としてある徳川夢声をイメージすれば、そこには必ず巧みな話術があって、活動写真にシンクロさせた言葉の選び方とそのハーモニーに当時の人々は魅力を感じていたんじゃなかろうかと推測できる。でも『カツベン!』では、ドタバタばかりが先行してしまっていて、その肝心な活弁士による弁舌のテクニックに対する執念みたいなものが置き去りにされてしまっていた。もうちょっと活動弁士の魅力を掘り下げてほしかったなあ。

→周防正行→成田凌→「カツベン!」製作委員会/2019→Movixさいたま→★★★

今年良かった映画2019

今年、映画館で観た映画は、山形国際ドキュメンタリー映画祭で観た映画8作品も含めて全部で69本。
その中で良かった映画を10本に絞ると以下の通り。

ファースト・マン(デイミアン・チャゼル)
ドント・ウォーリー(ガス・ヴァン・サント)
アベンジャーズ/エンドゲーム(アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ)
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(クエンティン・タランティーノ)
サタンタンゴ(タル・ベーラ)
死霊魂(王兵(ワン・ビン))
ジョーカー(トッド・フィリップス)
マリッジ・ストーリー(ノア・バームバック)
アイリッシュマン(マーティン・スコセッシ)
家族を想うとき(ケン・ローチ)

以上、観た順。

今年一番印象に残ったことはやはり台風19号が山形へ迫るなかに観た王兵(ワン・ビン)監督の『死霊魂』だった。山形市内の被害はたいしたことはなかったけれど、自分にとって台風19号の記憶はそのまま『死霊魂』の記憶となった日だった。

家族を想うとき

監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェンズ、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター、ロス・ブリュースター
原題:Sorry We Missed You
制作:イギリス、フランス、ベルギー/2019
URL:https://longride.jp/kazoku/
場所:新宿武蔵野館

『家族を想うとき』の主人公リッキーは個人事業主の宅配ドライバー。配達量が多ければ多いほど大金が稼げるとの謳い文句に乗って大手の配送業者のフランチャイズに入って、介護業を行っている妻の車を売ってまでしてトラックも調達してしまう。さあ、あとは働くだけだ! と云っても、簡単に計画通りにことが運ぶわけもなく、車の無くなった妻はバス移動を余儀なくされて今まで以上に仕事に時間を取られてしまうし、息子は万引きを働くし、娘は不眠症になるし、息子の学校に呼び出されたことで仕事に穴を空けてペナルティを払う騒ぎにもなってしまう。結果、夫婦間はギクシャクしてしまって、子どもたちとの関係も最悪。なにひとつ上手く行かなくなってしまう。

個人事業主にとって大手企業のフランチャイズ傘下に入ることのメリットはもちろんあるのだろうけれど、そのフランチャイズの縛りが強ければ強いほどデメリットが上回ってしまって、それとともに起こる問題が負のスパイラルとなって襲いかかり、簡単に破綻へと追い込まれてしまう。まさに『家族を想うとき』は負の連鎖の映画だった。

最近の日本でも、セブンイレブンがフランチャイズ店に24時間営業を強要する問題があったり、「amazonのデリバリープロバイダがみんなを激怒させている」はドライバーが『家族を想うとき』のリッキーのような状況に陥っているんじゃないかと察することができたり、イギリスと状況はまったく同じだった。

今の状況から逃げ出すようにトラックを走らせるリッキーの悲壮な横顔で映画は暗転してエンドクレジットが流れるのだけれど、下から上へと流れるアルファベットの字面を眺めながら、リッキーの今後におもいを巡らせていた。ハッピーな方向に向かうはずもないのに、ハッピーになることを願って。

→ケン・ローチ→クリス・ヒッチェンズ→イギリス、フランス、ベルギー/2019→新宿武蔵野館→★★★★

コタンの口笛

コタンの口笛

監督:成瀬巳喜男
出演:幸田良子、久保賢、宝田明、水野久美、大塚国男、久保明、山茶花究、土屋嘉男、左卜全、中北千枝子、三好栄子、志村喬、森雅之
制作:東宝/1957
URL:
場所:神保町シアター

前回の『五平とお国』は、結局は成瀬巳喜男の映画だったなあ、に落ち着いたのだけれど、さすがにこの『コタンの口笛』はアイヌ差別がメインのテーマなので、いつもの成瀬巳喜男、と云うわけにはいかなかった。

訴えるべきテーマがはっきりしている場合に、それを伝える手段として映画ほど適しているものはないとおもう。でも、それだったらドキュメンタリーで良いわけで、ノンフィクションのドラマにする意味は、そこにエンターテインメントを加味して、さらに人の心に響かせるプラスアルファを期待するからなんだとおもう。

としたときに、『コタンの口笛』はエンターテインメントの部分がありきたりだった。もっとアイヌの文化や歴史のことを掘り下げてほしかったし、ひとりひとりの善意ではどうにもならない日本のムラ社会へのツッコミも足りなかったような気もしてしまった。あ、でも、山茶花究のダメ叔父さんぶりは良かった。

→成瀬巳喜男→幸田良子→東宝/1957→神保町シアター→★★★

監督:成瀬巳喜男
出演:木暮実千代、大谷友右衛門、山村聡、田崎潤、三好栄子、柳谷寛、藤原釜足
制作:東宝/1952
URL:
場所:神保町シアター

神保町シアターで成瀬巳喜男の特集が組まれたので、まだ観ていない作品を拾って行こうと、まずは谷崎潤一郎の戯曲が原作の『お国と五平』。

『お国と五平』は「闇討ちされた夫の敵討ち」がストーリーの中心なので、今まで観てきた成瀬巳喜男の映画とはだいぶイメージが違うなあとはおもったのだけれど、でも結局は芯のある強い女性が主人公で、とりまく男たちは甲斐性がなくて弱々しいので、そしてお金の話しも出てくるので、ああ、これはまさしく成瀬巳喜男の映画だなあ、と納得してしまった。とくに、木暮実千代に敵討ちされてしまう山村聡は、いままでの成瀬巳喜男の中でも大好きな部類に入るダメ男だった。『流れる』の宮口精二、『銀座化粧』の三島雅夫に加えて、大好きなダメ男ベスト3にしたいとおもう。

→成瀬巳喜男→木暮実千代→東宝/1952→神保町シアター→★★★☆

アイリッシュマン

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、アンナ・パキン、ボビー・カナヴェイル、ハーヴェイ・カイテル、レイ・ロマーノ、ジェシー・プレモンス
原題:The Irishman
制作:アメリカ/2019
URL:https://www.netflix.com/title/80175798
場所:シネ・リーブル池袋

前回の『マリッジ・ストーリー』に続いてNetflix制作の映画を映画館で観ることになった。そのマーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』はすでにNetflixでの配信が始まっているので、わざわざお金を出して映画館に観に来ることはないんだけれど、やっぱり映画館で観たいなあ、と云うことで、あえて前から3列目の大画面で観てやった!

『アイリッシュマン』は、全米トラック運転手組合「チームスターズ」の委員長ジミー・ホッファを軸としたアメリカ近代史を描いていて、ジミー・ホッファをアル・パチーノが、そのジミー・ホッファの用心棒だったフランク・シーランをロバート・デ・ニーロが演じている。この二人の共演だけで映画ファンにとっては大興奮だけど、アメリカ人ならば誰もが知っているようなジミー・ホッファの名前は日本人にとってはまったく馴染みがないので、グローバルな展開ありきの大きなバジェットの映画にお金を出すような制作会社は、現在では勢いのあるNetflixあたりしかなくなってしまっているんだろうなあ。

原作はチャールズ・ブラントが2004年に発表したノンフィクション「I Heard You Paint Houses」で、それがどこまで事実に迫っているのかはわからないのだけれど、ケネディが暗殺された理由をかすかに匂わせていたりとか、ロバート・ケネディ:やマフィア「ジェノヴェーゼ一家」のトニー・プロとの確執とか、そしてもちろんジミー・ホッファが失踪した原因を明確にしているところなど、アメリカの裏歴史を網羅的に見て行くのはとても楽しかった。すでに「映画」のことをすべて知り尽くしているマーティン・スコセッシ監督の完璧な映画の3時間30分はあっと云う間だった。

→マーティン・スコセッシ→ロバート・デ・ニーロ→アメリカ/2019→シネ・リーブル池袋→★★★★