監督:セリーン・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
原題:Past Lives
制作:アメリカ/2023
URL:https://happinet-phantom.com/pastlives/
場所:MOVIXさいたま

『パスト ライブス/再会』を撮ったセリーン・ソンは韓国系カナダ人の監督で、この映画を観たあとに英語版Wikipediaで彼女の経歴を調べたら、なるほど、自分の生い立ちをベースにこの脚本を書いたんだなあ、と云うことがわかった。

セリーン・ソンは韓国に生まれ、12歳のときにカナダのオンタリオ州マーカムに家族とともに移住した。父親のソン・ヌンハンは映画製作者で、その影響からか高校の時にはじめての戯曲を書き、オンタリオ州のクイーンズ大学で心理学を学んだあと、ニューヨークのコロンビア大学で劇作の修士号を取った。2019年にはマサチューセッツ州ケンブリッジにあるアメリカン・レパートリー・シアターで彼女の戯曲「エンドリングス」が上演されて、2020年3月にはニューヨークシアターワークショップでの上演となり、オフ・ブロードウェイのデビューとなった。私生活では、エドワード・F・アルビー財団が主催するアーティスト・レジデンスで知り合った作家ジャスティン・クリツケスと結婚し、一緒にニューヨーク市に住んでいる。

『パスト ライブス/再会』に出てくるナヨン(のちのノラ、グレタ・リー)の生い立ちはまるっきりセリーン・ソン自身だった。12歳で韓国からカナダに移住し、ニューヨークに出て戯曲を書き、演劇ワークショップで知り合ったアーサー(ジョン・マガロ)と結婚してニューヨークに住んでいる。この自身の境遇をベースとして、12歳で幼なじみで仲良くしていたヘソン(ユ・テオ)との別れ、24歳でオンラインでの再会、さらに36歳(おそらく12歳区切りだったとおもう)でニューヨークで実際に再会すると云うストーリーに仕立てた。

概要だけ聞けば、韓国人の幼なじみとアメリカ人の夫とのあいだで気持ちの揺れる単純なラブ・ストーリーにも見えるけれど、そこは韓国系の監督が書いた脚本なので、日本人にも共通する慎ましさが全体に横たわっていて、はっきりと決めてかかる西欧的なものとは違った静かな映画に仕上がっていた。とくにラストの、韓国に帰ろうとするヘソンを見送るナヨンとのあいだに横たわる距離感を見せるシーンが、キスをするべきではないことを理解している二人の関係性が痛いほど伝わってくるシーンが素晴らしかった。

韓国の映画(今回のは実際にはアメリカ映画だけど)を観ると、日本の映画にもこんな映画が欲しいなあ、とおもうのはもういい加減やめたい。

→セリーン・ソン→グレタ・リー→アメリカ/2023→MOVIXさいたま→★★★★