監督:ケイト・ショートランド
出演:スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、デヴィッド・ハーバー、O・T・ファグベンル、オルガ・キュリレンコ、ウィリアム・ハート、レイ・ウィンストン、レイチェル・ワイズ
原題:Black Widow
制作:アメリカ/2021
URL:https://marvel.disney.co.jp/movie/blackwidow.html
場所:109シネマズ木場

アベンジャーズの中でもとりわけスカーレット・ヨハンソンが演じているナターシャ・ロマノヴァの立ち位置がよくわからなくて、どんな特質を持ってアベンジャーズに加わっているのか、「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズの映画を見ているだけではまったくピンとこなかった。それを解決してくれる映画が『ブラック・ウィドウ』だった。

ケイト・ショートランド監督の『ブラック・ウィドウ』は、今まで「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズの中でさらりと語られてきたロシアのスパイ養成機関「レッドルーム」のことをメインで取り上げている。世界各国から孤児を集めてきて、まるでリュック・ベッソン『ニキータ』のようなスーパー暗殺者に育て上げる組織が「レッドルーム」で、その孤児の中のひとりがナターシャ・ロマノヴァ(コードネーム「ブラック・ウィドウ」)だった。

つまりナターシャは、アベンジャーズの中では普通の人間であって、超人的なパワーを持ち合わせていない生身の人間でしかなかった。ただ彼女は「レッドルーム」でスパイとして厳しく鍛え上げられ、格闘技、射撃、アクロバットなどの様々なトレーニングも受けていて、他のメンバーとはまた違った角度の生身のスーパーヒーローの位置づけだったことがこの映画でよくわかった。

「マーベル・シネマティック・ユニバース」は、ドラマではすでに「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「ロキ」が「フェーズ4」に突入しているけれど、映画ではこの『ブラック・ウィドウ』が初めて。うーん、ちゃんと「フェーズ4」を追っかけるために「Disney+」もサブスク契約しないといけないのか! もうサブスク契約したくない。

→ケイト・ショートランド→スカーレット・ヨハンソン→アメリカ/2021→109シネマズ木場→★★★☆

監督:エメラルド・フェネル
出演:キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー、クランシー・ブラウン、ジェニファー・クーリッジ、コニー・ブリットン、ラバーン・コックス、アダム・ブロディ、マックス・グリーンフィールド、クリストファー・ミンツ=プラッセ、アルフレッド・モリーナ
原題:Promising Young Woman
制作:アメリカ/2020
URL:https://pyw-movie.com
場所:MOVIXさいたま

映画のテッパンのストーリーとして復讐劇がある。昔の西部劇なんて、多くが復讐劇だった。日本の時代劇だって、任侠映画だって、めちゃくちゃ多い。でも、これだけ同じような映画を見せられれば飽きちゃうのかと云えば、たとえ似たような復讐ネタを繰り返されても、ラストに主人公が復讐を果たすとスッとする。復讐相手がクソ野郎であればあるほど痛快だ。だから今でも復讐劇の映画は多い。

が、時代はいろいろと変わってきていて、単純に復讐劇を見せるだけではいかなくて、ひとひねり、ふたひねり、ストーリーに変化球を加えなくてはいけなくなって来ている。

エメラルド・フェネル監督の『プロミシング・ヤング・ウーマン』も単純に云えば復讐劇だった。

キャリー・マリガンが演じているカサンドラ・トーマス(キャシー)が医学部在籍中に、親友のニーナが同級生にレイプされるという事件が起きる。ニーナはその事件の後に心を病んで自殺してしまう。親友の自殺をきっかけに医学部を退学したキャシーはニーナをレイプした同級生に復讐を果たそうとする。

ストーリーを要約するとこんな感じなんだけど、この映画の面白いところは、導入からして、なぜニーナがコーヒーショップの店員に身をやつして、そして夜の顔を持って男たちに復讐を重ねているのか、それはどんな復讐なのか(殺しているのか? あそこをちょん切っているのか?)なんの説明もなしに見せてくるところだった。さらにストーリーの核心に迫っても、ニーナがレイプされるシーンも、ニーナがどのように亡くなったのかも、なぜ亡くなったのかも、まったく出てこない。説明もない。映画を観ていくうちに、おぼろげながらにわかってくるだけだった。

最近の映画はやたらと説明が多い。セリフでベラベラと説明しちゃうような映画もある。ああ、でも、映画は映像で見せてくれるのが一番だ。サイレント映画に近いかたちで映像で見せてくれるのがベストだ。そういった意味ではエメラルド・フェネル監督の『プロミシング・ヤング・ウーマン』は素晴らしかった。

そして、この公正・公平の時代に、復讐する側にも罰を用意しなければならなくなってきている。そういった意味でも『プロミシング・ヤング・ウーマン』は上手くストーリーを展開していた。

同じような復讐劇でも、やりようによっては無限大に広がることを示してくれる映画だった。

→エメラルド・フェネル→キャリー・マリガン→アメリカ/2020→MOVIXさいたま→★★★★

監督:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、キム・セビョク、イ・ユンミ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、ハ・ソングク
原題:도망친 여자
制作:韓国/2020
URL:https://nigetaonna-movie.com
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町

ホン・サンスとキム・ミニのコンビによる7本目の映画。

5年間の結婚生活で一度も離れたことのなかった夫の出張中に初めてひとりになった主人公ガミ(キム・ミニ)は、ソウル郊外の3人の女友だちを訪ね歩いて行く。

女友だちと会う3つのパートを見ていくうちに、タイトルの「逃げた女」とは何を意味するのだろうかと考え始める。主人公のガミ(キム・ミニ)は絶えず夫との仲の良さを強調するので、それがまったくの嘘でないかぎり、夫から「逃げた女」では無いことになる。となると、何から逃げているのか? それとも、それぞれが微妙な立場にいる女友だちのことを指しているのか?

映画のタイトルのことが最後までモヤモヤしていたので、映画を観終わったあとにネットを検索してみた。すると、ホン・サンスへのインタビュー記事があった。

https://www.cinemacafe.net/article/2021/06/21/73453.html

これを読むと「実は誰かは決めていなかったんです(笑)」と云っている。さらに「私が望むのは、どんな意味付けもすることなく、いかに断片を集めてこられるかということ」とも云っている。ああ、なるほど。ホン・サンスの映画って、どの映画でも、断片的に現れる会話シーンを楽しむ映画ばかりで、そこから何を得られるのかは見る側にかかっているような気もする。だから今回の映画でも、主人公のガミ(キム・ミニ)と女友だちとの会話から映画を観る側が「逃げた女」を感じ取れれば良いように作られている。

どんなに満足な状態でも、かえってそれがアダとなって逃げ出したくなる場合もあるわけだし、主人公のガミ(キム・ミニ)と夫との関係もそんなふうに捉えることもできてしまう。ひいてはキム・ミニとホン・サンスの関係だったりして、、、

→ホン・サンス→キム・ミニ→韓国/2020→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★☆

監督:三木孝浩
出演:山﨑賢人、清原果耶、夏菜、眞島秀和、浜野謙太、田口トモロヲ、高梨臨、原田泰造、藤木直人
制作:「夏への扉」製作委員会/2021
URL:https://natsu-eno-tobira.com
場所:109シネマズ木場

一時期、有名なSF小説を立て続けに読んでいたときがあった。そのときにはもちろん、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」も読んだ。でも、ちょうどアーサー・C・クラークの「幼年期の終り」に衝撃を受けた直後のことだったので、それに比べると内容があまりにも軽くて、センチメンタルすぎたので、どこか拍子抜けしてしまった記憶がある。いま改めて読み返せば、もっと面白く感じられるのかなあ。

と云う気持ちで、日本で映画化された『夏への扉 -キミのいる未来へ-』を観た。

考えてみれば、小説の細かい内容をすっかり忘れてしまっていたので、ああそうだ、そんなストーリーだったなあ、と次第におもい出しながら映画を観て行くことになった。で、その内容から受ける印象は、小説を読んだときとまったく変わらなかった。そういった意味では、それなりにうまく小説をコンパクトに映画化していたのかもしれない。ただ、それだったら、日本で映画化する意味をまったく見い出せないので、なにか、もうちょっとプラスアルファが必要だったような気もしてしまう。新海誠のような日本のアニメ映画レベルに、もっとセンチメンタル強めの映画に仕上げても良かったような気もしてしまう。まったくの平均点の映画で、あまりに印象に残らない映画となってしまった。

→三木孝浩→山﨑賢人→「夏への扉」製作委員会/2021→109シネマズ木場→★★★