LEGO® ムービー(2D、日本語吹替え版)

監督:フィル・ロード&クリストファー・ミラー
出演:ウィル・フェレル、ジャドン・サンド
原題:The Lego Movie
制作:アメリカ、オーストラリア、デンマーク/2014
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/lego/
場所:ユナイテッドシネマ豊洲

LEGOの映画と聞いて、おお見よう! なんてことは絶対になくて、誰からも勧められなければ簡単にスルーしていた映画なのに、またこれがTwitterなどで話題になっていたのでおもわず最終日に駆け込んでしまった。

ファーストシーンからの情報量の多さとギャグのノリ(そして日本語吹替えのノリ)にこのまま最後まで付いて行けるのかととても不安な出だしだったのだけれど、『トイ・ストーリー』などの折り目正しいピクサーのCGアニメーションを徹底的におちょくっているような、そして、「アンチヒーロー」と云う体裁をとことんまでこねくり回して、解体したり、再構成したりして、まるでLEGOブロック自体を遊んでいる(遊んだことないけど)ような映画にしているところがとても面白かった。

この、おもちゃ箱をひっくり返したような、いや、LEGOのBrick Boxをひっくり返したような渾沌の映画をもっと楽しむにはもう一度見ないとダメだ。それから、フィル・ロード&クリストファー・ミラーの他の映画も追いかけないと。

→フィル・ロード&クリストファー・ミラー→ウィル・フェレル→アメリカ、オーストラリア、デンマーク/2014→ユナイテッドシネマ豊洲→★★★☆

それでも夜は明ける

監督:スティーヴ・マックイーン
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ポール・ジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、サラ・ポールソン、ブラッド・ピット
原題:12 Years a Slave
制作:イギリス、アメリカ/2013
URL:http://yo-akeru.gaga.ne.jp
場所:新宿武蔵野館

今までのアカデミー作品賞を獲った映画ならば、その時代のアカデミー会員の勝手な盛り上がりで獲ってしまったようなぬるい映画でも、アカデミー作品賞と云う威光が絶大なる効力を発揮して、日本での興行もそれなりに客が入ったような気がするけど、もうそう云う時代ではないんだなあと、この『それでも夜は明ける』が証明してしまった。

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.153】「それでも夜は明ける」、アカデミー賞効果の現在

それなのに、そういう時勢を映画会社は読み切れずに、未だにアカデミー作品賞と云う冠にあぐらをかいただけの宣伝での興行結果がこれだった。おそらく、これじゃダメだろうとスティーヴ・マックイーン監督を日本に呼び寄せたけど、公開から一ヶ月以上も経ってから呼んだって効果が出るわけがない。

スティーブ・マックイーン監督来日 “同郷”木村佳乃とロンドントーク?

『アナと雪の女王』が大ヒットしているわけだから洋画マーケットが急激に縮小しているとはおもえないけど、でも、今まで通りの宣伝方法では客が入らなくなってしまっているのは確かだとおもう。

『それでも夜は明ける』の映画自体は、誠実な、端正な映画だった。アカデミー作品賞を獲るような映画にそのような真面目なものが多いのはわかっているので、まあ、そんなもんだろうとおもって観ていたら、そのままの通りだった。でも、真面目で誠実なものなんて、たいがいが面白くもなんともない。この映画の「狂気」担当のマイケル・ファスベンダーあたりにもっと異常性を見せて欲しかった。

→スティーヴ・マックイーン→キウェテル・イジョフォー→アメリカ/2013→新宿武蔵野館→★★★

Life!

監督:ベン・スティラー
出演:ベン・スティラー、クリステン・ウィグ、シャーリー・マクレーン、アダム・スコット、キャスリン・ハーン、パットン・オズワルト、ショーン・ペン
原題:The Secret Life of Walter Mitty
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.foxmovies.jp/life/
場所:T・ジョイ 大泉

ダニー・ケイの『虹を掴む男』をベン・スティラーがリメイクすると聞いた時に、ダニー・ケイのボケた感じをそのままベン・スティラーがなぞって大暴れすることをストレートに期待してしまったが、いざふたを開けたら、何とも大まじめに「あなたの人生はそれで良いんですか?」みたいな素直に語りかけられる映画だった。まあ、映画としては、これはこれで良いとはおもうけど、ベン・スティラーに期待するのは、そこじゃない、と云うおもいは強くてがっかりしてしまった。原作を読んでないので、ジェームズ・サーバーのストーリーがどういうものかわからないけど、ダニー・ケイの『虹を掴む男』のリメイクと宣伝を打っている以上、これじゃダメなんじゃないのかなあ。少なくともダニー・ケイの『虹を掴む男』のリメイクを謳う必要性をまったくない感じられない。

ベン・スティラー監督作品をこれまですべて見て来たわけだけど、これだったら『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』のほうがどれほど愛おしいことか!

→ベン・スティラー→ベン・スティラー→アメリカ/2013→T・ジョイ 大泉→★★☆

ロボコップ

監督:ジョゼ・パジーリャ
出演:ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、アビー・コーニッシュ、ジャッキー・アール・ヘイリー、サミュエル・L・ジャクソン
原題:RoboCop
制作:アメリカ/2014
URL:http://www.robocop-movie.jp
場所:新宿ミラノ3

ポール・バーホーベン監督の『ロボコップ』を観た時に、そのグロテスクな描写に今までのハリウッド映画には無いテイストを感じて、それが好きか嫌いかには関わらず、いや、どちらかと云うと好きなテイストではなかったものの、その後のポール・バーホーベン監督の映画をずっと追い続けてしまった。ヨーロッパの監督がハリウッドの色に染まって自分を見失う場合が多いのに、自分の色を失わずに変態性を爆走させるポール・バーホーベンに好感を持ったんじゃないかとおもう。

そのポール・バーホーベン版『ロボコップ』が公開されてから27年もの歳月を経てわざわざリメイクするのだから、そして同じように非ハリウッドの監督を持って来て映画化するのだから、また同じような驚きをもたらしてくれるんじゃないかと期待したわけだけど、ジョゼ・パジーリャと云うブラジル人監督にそれほど特異なスタイルを感じられなかった。すっかり、すっきりと普通のSFアクション映画になっていた。どうやらジョゼ・パジーリャ監督のおもい通りには撮らせてもらえなかったらしく、同じブラジル人監督のフェルナンド・メイレレスに語ったところによると「10個アイデアを出したら9個が却下される」状態だったらしい。ポール・バーホーベン版ロボコップの流れを汲む映画を作るのだとしたら、もっと監督に自由に撮らせるべきだった。自由に撮らせるつもりがないなら、わざわざ海外から監督を呼んで来る事もなかったろうに。

→ジョゼ・パジーリャ→ジョエル・キナマン→アメリカ/2014→新宿ミラノ3→★★★

ホビット 竜に奪われた王国(IMAX 3D)

監督:ピーター・ジャクソン
出演:マーティン・フリーマン、イアン・マッケラン、リチャード・アーミティッジ、オーランド・ブルーム、エヴァンジェリン・リリー、ルーク・エヴァンズ、リー・ペイス、スティーヴン・フライ、グレアム・マクタヴィッシュ、ケン・ストット、エイダン・ターナー、ディーン・オゴーマン、マーク・ハドロウ、ジェド・ブロフィー、アダム・ブラウン、ジョン・カレン、ピーター・ハンブルトン、ウィリアム・キルシャー、ジェームズ・ネスビット、ケイト・ブランシェット
原題:The Hobbit:The Desolation of Smaug
制作:アメリカ/2013
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitdesolationofsmaug/
場所:ユナイテッドシネマとしまえん

3部作中の2作目になる『ホビット 竜に奪われた王国』は、ドワーフの王子トーリン・オーケンシールドたちが自分たちの王国エレボールにて邪悪な竜スマウグと対決するパートと、中つ国に忍び寄る邪悪な気配を調査するべくドル・グルドゥアに向かうガンダルフのパートに別れてしまって、それが二つとも3作目に向かうための下地作りでしかないので見終わったあとの中途半端さは否めない。でも、いつも云っていることではあるのだけれども、ピーター・ジャクソンが作り出すトールキンの世界が大好きなので、161分と云う長尺のこの映画がまったく厭きない。3作目の『ホビット ゆきて帰りし物語』が公開されてDVDにでもなったら、『ホビット』シリーズと『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを一気に、1日で見てもいいくらいだ。

スマウグとも、ネクロマンサー(死人占い師)とも、その決着がお預けとなったこの映画の最大のハイライトは、もしかすると、アゾグらオークたちに追われたドワーフ+ビルボ・バギンスたちの樽による川下りだったんじゃないのかなあ。最近のCG映画に飽きているとは云え、このシーンのカメラの視点移動はダイナミックで素晴らしかった。ピーター・ジャクソンの良さは、動的イメージの豊富さにあるんだとおもう。

ケイト・ブランシェットが演じるガラドリエル様のファンとしては、今回の映画ではガンダルフとのテレパシー(?)のイメージ・シーンでしか登場がなかったのは残念だったが、ガンダルフとラダガストとの会話から次作の『ホビット ゆきて帰りし物語』では大活躍が予想出来て、早く、その大団円で感動したい!

→ピーター・ジャクソン→マーティン・フリーマン→アメリカ/2013→ユナイテッドシネマとしまえん→★★★★

ダラス・バイヤーズ・クラブ

監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:マシュー・マコノヒー、ジェニファー・ガーナー、ジャレッド・レト、スティーヴ・ザーン、ダラス・ロバーツ、マイケル・オニール、デニス・オヘア、グリフィン・ダン
原題:Dallas Buyers Club
制作:アメリカ/2013
URL:http://www.finefilms.co.jp/dallas/
場所:新宿シネマカリテ

映画館での予告編を観たかぎりでは、エイズになってしまったマシュー・マコノヒーが余命30日を宣告されながらも残りの人生を謳歌させて死ぬ、のようなイメージしか受け取れなかったのだけれど、まあ、ある意味、それはそうなんだろうけど、この映画の大切な要素としての「医者の処方するいい加減な薬」と云う部分がまったく抜け落ちていた。病院から渡される薬に何の疑いもなく全幅の信頼を寄せることに常日ごろから疑問を感じているので、マシュー・マコノヒーがその事に対して真っ向から対決する部分は見ていて楽しかった。結局のところ、経済性ばかりを優先させた今の時代では、病院やFDA(アメリカ食品医薬品局)も経済的な利潤を追い求める仕組みの中で動かざるを得なくて、患者の治癒なんてものは二の次になるのはあたりまえなわけで、その薬を疑いもなくほいほい飲んでしまうのは危険このうえないことをこの映画は見せてくれる。

医者が処方する薬のでたらめさに加えて、何年もかかる新薬の認可制度も問題視する。もうすでに死のうとしている人に対して有効とおもわれる薬に対する臨床試験の用意周到さはまったく患者の気持ちを度外視している。不治の病になった時点で大きなリスクを負ってしまっているわけだから、それに対抗するにはリスク以外に何もないのに、リスクを冒すのは危険すぎると云うのはいったい何なんだろう。もうすでに危険なんだ!

自分の医者嫌い、薬嫌いを決定させたのは、もしかするとミロシュ・フォアマンの『カッコーの巣の上で』を見たあたりなのかもしれない、と気付いた。この映画を見てますますそれが増長してしまう。映画は、商業映画もドキュメンタリー映画も、それが真実かどうかは見極めが難しいけれど不正を衝く映画が多いので、嫌いなものがどんどん増えてしまう。

→ジャン=マルク・ヴァレ→マシュー・マコノヒー→アメリカ/2013→新宿シネマカリテ→★★★☆