監督:ノア・バームバック
出演:アダム・ドライヴァー、スカーレット・ヨハンソン、アラン・アルダ、ローラ・ダーン、レイ・リオッタ
原題:Marriage Story
制作:アメリカ、イギリス/2019
URL:https://www.netflix.com/title/80223779
場所:シネ・リーブル池袋

動画配信サービスのNetflixが資金を出して映画製作をする機会が多くなってきた。頓挫しそうな良質の企画にお金を出してくれることに対しては感謝すべきことなんだろうけれども、もしもその映画がNetflix独占の配信オンリーになってしまえば、ついに映画館で映画を観る行為が特殊な時代へと突入するんじゃないかと、そんな危機感がじわじわと迫って来ているような気がする。

ノア・バームバック監督の最新作『マリッジ・ストーリー』もNetflix制作・配給の映画だった。まだ少数の映画館で上映しようとする考えが少なからず残っているらしくて、なんとか配信前にシネ・リーブル池袋で観ることができた。期待通りの素晴らしい映画で、アダム・ドライヴァーとスカーレット・ヨハンソンの夫婦が、不本意ながら泥沼の離婚調停に向かわざるを得なくなる心の葛藤が丁寧に描かれていた。

この映画の中での二人の壮絶な言い争いは、大画面で観るからこその大迫力で、言い過ぎたことに対して自己嫌悪に陥ってしまったのか、崩れ落ちるように泣き出すアダム・ドライヴァーの心境におもわず同化していた。テレビ画面では、そこまでは感情移入出来ないんじゃないのかなあ。

離婚調停中のアダム・ドライヴァーとスカーレット・ヨハンソンの夫婦が、それぞれの弁護士と一緒にレストランで食事をするシーンで、注文する料理をなかなか決められないアダム・ドライヴァーに向かって、彼の嗜好を理解しているスカーレット・ヨハンソンがテキパキと決めてあげるところがとても印象的だった。離婚はするんだろうけれど、夫婦の絆が少なからず残っていることを印象づけているこんなシーンがあるからこそ、口汚く罵りあっても、冷酷な弁護士に貶められても、これは良い離婚だなあ、とおもえる映画だった。

→ノア・バームバック→アダム・ドライヴァー→アメリカ、イギリス/2019→シネ・リーブル池袋→★★★★

監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
声:松たか子、神田沙也加、原慎一郎、武内駿輔、松田賢二、吉田羊、前田一世、余貴美子、
原題:Frozen II
制作:アメリカ/2019
URL:https://www.disney.co.jp/movie/anayuki2.html
場所:109シネマズ木場

観客動員数を更新するような大ヒットした映画の続編を作るときに、普段からそんなに映画を観ることのない人たちを映画館に足を運ばせた状態を維持させようと、前作のイメージをなるべく崩さないような保守的な映画作りをする場合が多いとおもう。でも今回の『アナと雪の女王2』はそんな安易な続編を作らなかった。作らなかったどころか、せっかく掴んだ子どものファン層をあえて切り捨てるような、少しばかり難解なストーリーを用意してきたところにディズニー映画の凄さを感じた。

なぜエルサが氷の魔法を使えるようになったのか、その謎を解くための旅が『アナと雪の女王2』のストーリーの中心になっていた。たしかに「1」で残っていた最大の疑問はエルサの魔法だった。そこに続編のストーリーを求めるのも必然だったのかもしれないけれども、ただ単純な解答を用意しても続編としてはまったく面白味がないし、複雑なものを用意しても幅広いファン層にそっぽを向かれてしまうだろうし、難しい選択だったろうとはおもう。

使用している楽曲も、大ヒットした「Let It Go」のような耳に残る曲も無いので、『アナと雪の女王2』が「1」のように誰しもが受け入れる映画ではなくなってしまっていた。それでもこのストーリーに果敢に挑戦して、それなりのクオリティを維持しているものを作ったクリス・バックとジェニファー・リーは素晴らしかった。

「1」を引きずったままでこの映画を観ていた前半は、なんだこりゃ。とはおもっていたけど、観終わったあとで考えてみれば良い映画だったとおもう。

→クリス・バック、ジェニファー・リー→(声)松たか子→アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★☆

ターミネーター:ニュー・フェイト

監督:ティム・ミラー
出演:リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガー、マッケンジー・デイヴィス、ナタリア・レイエス、ガブリエル・ルナ、ディエゴ・ボネータ
原題:Terminator: Dark Fate
制作:アメリカ/2019
URL:http://www.foxmovies-jp.com/terminator/index.html
場所:109シネマズ木場

ジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター2』を作った制作会社カロルコは、当時、日本のパイオニア株式会社と提携していて、そのパイオニアの子会社に勤めていた自分にとっては、やたらと『ターミネーター2』の公開で大騒ぎしていた会社の雰囲気をよく覚えている。とにかくものすごく大ヒットしたので、バブル的な高揚感に支配されていたあのころが懐かしくもあり、馬鹿げた時代だったなあとおもうこともあり。

あれから30年近くも経って、その『ターミネーター2』の正統な続編と云われる『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開された。基本的には『ターミネーター』シリーズのストーリーのベースとなっているタイムパラドックス(未来において自分たちの障害となる人物の祖先を過去にさかのぼって殺しに来ると云うやつ)には納得が行かないので、まあ、いつものとおりゆるりと楽しんで観たわけだけれども、ドラクエのはぐれメタルのような新しいターミネーターがめちゃくちゃ強くなっていたのには、極限にまで来ちゃってるなあ、と云う感想しかなかった。その中でも、そのはぐれメタルを追いかけて討伐に来た未来からの使者を演じているマッケンジー・デイヴィスがめちゃくちゃかっこよくて素晴らしかった。それを観られただけでも満足だった。

→ティム・ミラー→リンダ・ハミルトン→アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★☆

監督:ニテーシュ・アンジャーン
出演:メッテ・ホルム
原題:Dreaming Murakami
制作:デンマーク/2017
URL:https://www.sunny-film.com/dreamingmurakami
場所:新宿武蔵野館

村上春樹作品の翻訳を手がけるデンマーク人翻訳家のメッテ・ホルムを追ったドキュメンタリー。

この映画の予告編を観たときに、日本語を自国語へ翻訳する場合には、すでに英語などに翻訳された本から「重訳」する場合が多いのに、直接日本語と格闘しているメッテ・ホルムの姿に感動を覚えて、デンマーク語への言葉の選び方にどのようなポリシーが存在するんだろうかと、そこにだけ多大なる関心を持ってこの映画が観たくなってしまった。

で、期待して映画を観て、たしかに日本語と格闘するメッテ・ホルムの姿がカメラに収められてはいたんだけど、そこはほんのちょっとで、どちらかと云えば村上春樹の「かえるくん、東京を救う」にインスパイアされたイメージシーンが多用されていて、うーん、そのカエルはいらないなあ、とおもいながら観てしまった。うーん、ちょっと残念だった。

→ニテーシュ・アンジャーン→メッテ・ホルム→デンマーク/2017→新宿武蔵野館→★★★