小豆島の3日目は午前8時半にホテルをチェックアウトして、自転車で坂手港に向かう。
港のコインロッカーに荷物を預けて、今日は寒霞渓(かんかけい)に行くことにする。
寒霞渓とは小豆島の中心部に位置する渓谷で、星ヶ城山山頂は瀬戸内海の最高地点になるらしい。

昨日、自転車屋のおじさんに、小径自転車で寒霞渓まで登るのは無理、と云われたので、ここはきっぱりとあきらめて、バスで行くことにする。草壁港から寒霞渓のふもとの紅雲亭までバスが出ているのだ。
またまた自転車で国道463号を取って返して草壁港へ向かう。いったい国道463号をもう何往復しているんだろう。

国道463号

自転車は港の自転車置き場に置いて、さあバスに乗ろうと、土産物屋のおばさんに紅雲亭行きのバス乗り場はどこですか? と聞くと、今日はバスは無いと云う。紅葉の観光シーズンや土日以外はバスは無いんだそうだ。がーん、そうなのか? 事前にネットで調べた範囲ではそんなことは書いてなかったような気がするけど、はなからバスが無いなんておもってもいなかったので、詳しい注記を見逃したのかも知れない。

バスが無ければ交通手段としてはタクシーしかないので、タクシー会社に電話してみる。で、紅雲亭までいくらですか? と聞くと2300円くらいだと云う。うーん、往復で4600円かあ。それは高いよなあ。どうしよう。そんなにお金を払ってまでして行く所なのか? 自転車で行っちゃおうか、寒霞渓に行くのはやめて違う場所にしちゃうか、などなど、頭の中がぐるぐると回るけど、結局タクシーを頼んでしまう。

タクシーが来るまでにいろいろと思考をめぐらしていると、あ、そうだ、自転車を折り畳んでタクシーに積み込ませてもらおう、と云う名案がおもいついた。そして帰りは自転車に乗って下ってくればいいのだ!

タクシーが来て、運転手のおじさんに、折畳み自転車を載せて良いですか? と聞くと、良いよ、と云ってくれた。
早速、自転車を折り畳んで、後部座席に積み込ませてもらう。

行きがてら、運転手のおじさんと話し込んでいると、平野甲賀さん、公子さん夫婦を知っていると云う。二人は車を持っていないので、タクシーをよく利用するらしい。そして二人の家は、ほら、この辺だよと、草壁港から紅雲亭へ行く途中で教えてくれる。

紅雲亭に着くと、寒霞渓までロープウェイが出ているので、それに乗る。
5分足らずで寒霞渓に着く。

寒霞渓ロープウェイ

さらにそこから2kmくらい登って、小豆島の最高峰、星ヶ城山山頂を目指す。
平日だし、来ている観光客と云えば観光バスで乗りつけてくるおばちゃんばかりなので、山頂を目指す人なんてだ〜れもいない。
観光客のいない山道を一人でもくもくと登って行く。先週の台風の所為か、大きな倒木が行く手を阻むけど、森の中を迂回しながら進む。

寒霞渓

寒霞渓

やっと山頂にたどり着いて、一人でまったりとする。
聞こえるのは鳥の声のみ。
あ〜、気持ちいい。

寒霞渓

ここまで登って来て、はっきりとする。
海と山の小豆島はいいなあ。
ゴミゴミした東京になんて帰りたくない。

寒霞渓

でも、帰らざるを得ない。
自転車で紅雲亭から草壁港まで一気に駆け下りる。
途中、小径自転車で登っている人がいた!
目配せして、挨拶し合ったけど、ごめん、こっちはズルしてタクシーで来たんだ。

寒霞渓

サルもいた!
イノシシやシカで出るよ、と云われたけどなかなか野生動物には会えず、最終日にやっとサルに会えた。

寒霞渓のサル

坂手港から午後3時45分のジャンボフェリーに乗って神戸に向かう。

ジャンボフェリー

そして、神戸港から自転車をひとっ走りで新神戸駅に向かう。
一歩進むごとに、どんどんと人が増えるような感じで、だんだんと現実に引き戻される。
サラリーマンでいっぱいの新幹線は3時間で東京に着いてしまう。
東京からまた自転車に乗って家に向かう。
なんだか寒霞渓からそのまま家まで自転車で走ってきたような錯覚に陥る。
自転車は亀だ。自分は浦島太郎だ。
ただ秋の夢のごとし。