銀座化粧

監督:成瀬巳喜男
出演:田中絹代、西久保好汎、花井蘭子、小杉義男、東野英治郎、津路清子、香川京子、春山葉子、明美京子、落合富子、岡龍三、堀雄二、清川玉枝、柳永二郎、三島雅夫、竹中弘正、田中春男
制作:新東宝/1951
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場所:銀座シネパトス

3月31日に銀座シネパトスが閉館すると云うので、その最後の映画として成瀬巳喜男の『銀座化粧』を観てみた。いや別に、銀座シネパトスにとりたてて思い入れがあったわけではなくて、おそらく開館から10回くらいしか足を運んでなくて、映画を観ている最中に地下鉄の音が聞こえてきたりする酷い映画館ではあったのだけれど、その立地場所が不思議なところで、そこだけにはちょっとだけ思い入れがあったので少しだけ惜しんでみた。

銀座シネパトスのあるところは、昔は三十間掘川が流れていて、そこに架かっていた三原橋のちょうど真下の部分にあたるらしい。その川が埋め立てられて地下街が出来て、そこに映画館が出来たらしい。そのことについては以下のページが詳しい。

http://www1.c3-net.ne.jp/hamachan/tetudou-ima-3-1.htm

成瀬巳喜男の『銀座化粧』には、ちょうど埋め立て中の三原橋部分の三十間掘川が出て来る。ほんの一瞬だけど、そのシーンがあるために銀座シネパトスのラストの映画に選ばれたらしい。映画は1950年ごろの銀座のBARが舞台で、そこで働く女給の生活に焦点が当てられているのだけれど、同時に昭和の風俗がふんだんに出て来る。紙芝居、ちんどん屋、流し、子供の花売りなど。他に、金持ちには愛人がいるのがあたりまえだったり、子供はすぐ川に落ちたり、なかなか靴を新調することができなかったりと、ああ、昭和だなあ、とおもえる細かな部分が次から次へと出て来る。現在の銀座シネパトスがある場所は、そんな昭和の香りを残している数少ない場所で、それが映画とシンクロして別れを惜しむにはぴったりの映画だった。戦前は成功して幅を利かせていたのに、戦後は事業も失敗して田中絹代に金の無心に来る三島雅夫が、手ぶらで銀座の街を去って行くしょぼくれた後ろ姿が銀座シネパトスのラストと重なってえも言われぬ気持ちに。

銀座シネパトス

→成瀬巳喜男→田中絹代→新東宝/1951→銀座シネパトス→★★★☆