アバウト・タイム 愛おしい時間について

監督:リチャード・カーティス
出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、リディア・ウィルソン、リンゼイ・ダンカン、リチャード・コーデリー、ジョシュア・マクガイア、ウィル・メリック、バネッサ・カービー、トム・ヒューズ
原題:About Time
制作:イギリス/2013
URL:http://abouttime-movie.jp
場所:新宿武蔵野館

タイムスリップものの映画を観た時に、何よりもまずタイムスリップのルールが気になってしまう。そこに粗が目立つと一気に映画を見る気が失せてしまう。タイムスリップ映画の大前提としてタイム・パラドックスがあるので必ず矛盾があるわけだけど、その矛盾を意識させないようなキッチリとしたルールを作っている映画か、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような勢いで見せてしまうような映画でなければ、どうしても途中で白けてしまう。

この『アバウト・タイム 愛おしい時間について』はそのルールが適当だった。

タイムスリップのルールとして、以下の事があったとおもう。

・タイムスリップの能力は男系に遺伝する
・暗闇の中で目をつぶって両手のこぶしを握りしめればタイムスリップできる
・未来へはタイムスリップできない
・自分に男系の子供が産まれたら、その時点の年齢以前にはタイムスリップできない

まず、大前提として「未来へはタイムスリップ出来ない」と掲げて置きながら、簡単にそれを破っている。ルールを決めて置きながら、どうしてそんなに簡単に反故にできるんだろう。いや、もしかして、あれは未来へ戻ったわけではなくて、過去へのタイムスリップを取り消したんだろうか。でも、そんなことが出来るなんて聞いてない!

この映画の分岐点とでも云える、妹が事故を起こす重要なシーンにこの矛盾を突きつけられてしまったので、その解釈をめぐって頭の中がフル回転してしまって、主人公の感情の機微にしっかりと感情移入するべきポイントをすっかり逃してしまった。

それから、「自分に男系の子供が産まれたら、その時点の年齢以前にはタイムスリップできない」は最初にキッチリと説明して欲しかった。ラストの感動を盛り上げるためにいきなりそんなことを云われても!

過ぎ去った時間が、それが自分にとって良い事でも悪い事でも、何ものにも代えがたい重要な一瞬であると云うことをタイムスリップを多用することによって明らかにして行く。映画自体の主題はとても共感できるものだっただけに、このルールの矛盾が残念すぎて。

→リチャード・カーティス→ドーナル・グリーソン→イギリス/2013→新宿武蔵野館→★★★