今年、映画館で観た映画は、短編映画も1本と数えると44本。去年よりもちょっと微増。ただ、配信で見る機会は増えている。Amazon Promeで見る古い映画とかも。

その44本の中で良かった映画を10本に絞ると以下の通り。

哀れなるものたち(ヨルゴス・ランティモス)
デューン 砂の惑星 PART2(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
オッペンハイマー(クリストファー・ノーラン)
青春(ワン・ビン)
悪は存在しない(濱口竜介)
マッドマックス:フュリオサ(ジョージ・ミラー)
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(アレクサンダー・ペイン)
WALK UP(ホン・サンス)
シビル・ウォー アメリカ最後の日(アレックス・ガーランド)
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(リドリー・スコット)

以上、観た順。
とくに『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が面白かった。
これらにプラスして、U-NEXTの配信で見たクリント・イーストウッドの『陪審員2番』も素晴らしかった。

監督:神山健治
声:ブライアン・コックス、ガイア・ワイス、ルーク・パスクァリーノ、マイケル・ワイルドマン、ロレイン・アシュボーン、ローレンス・ウボング・ウィリアムズ、ベンジャミン・ウェインライト、ヤズダン・カフーリ、ショーン・ドゥーリー
原題:The Lord of the Rings: The War of the Rohirrim
制作:アメリカ/2024
URL:https://wwws.warnerbros.co.jp/lotr-movie/
場所:MOVIXさいたま

ローハンの王セオデンがJ・R・R・トールキンの小説「指輪物語」に登場するのは第二部「二つの塔」で、堕落した魔法使いサルマンとの角笛城の合戦でローハン軍を勝利に導く。そして第三部「王の帰還」では、ペレンノール野の合戦でローハン軍を率いてゴンドールを救援するが自身は戦死する。この2つの戦いは、ピーター・ジャクソンの映画『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』にも登場する。

そのセオデン王の時代から遡ること200年ほど前に起こった伝説の戦いを描いたアニメーションがこの神山健治の『ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い』で、小説「指輪物語 追補編」に書かれたローハン最強の王ヘルムについての記述をふくらませたオリジナル・ストーリーだった。

ピーター・ジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リング』3部作からのスピンオフ作品が出るのは嬉しくて、しかも監督に神山健治が採用されているのだから見逃すわけにはいかなかった。でも、なぜアニメーション? の疑問は最後まで残ってしまった。もしアニメーションを使う意義があるのだとしたら、ピーター・ジャクソンがホビット庄やロスローリエンの美しさに力を注いだように、ローハンの土地と文化を絵画のような美しさで見せることが、まあ、それなりの描写はあったのだけれど、もっともっと必要だったとおもう。3Dアニメではなくて、わざわざ手書きアニメにしたのだから、なおさらだった。もっと時間をかけて作ることができたら良かったのに。

→神山健治→(声)ブライアン・コックス→アメリカ/2024→MOVIXさいたま→★★★☆

監督:山崎エマ
出演:世田谷区立塚戸小学校の子どもたち、先生たち
制作:日本、アメリカ、フィンランド、フランス/2023
URL:https://shogakko-film.com
場所:シネスイッチ銀座

2020年10月ごろからプログラミング授業のサポートで文京区の小学校へ行っている。文京区の小学校は全部で20校あって、そのうちの16校は、6年生の総合学習の4時間を使ってロボットのプログラミング授業を行っている。そのほか、20校のうちの4校くらいも3年生、4年生、5年生で総合学習の2時間を使ってScratchを使ったプログラミング授業を行っている。それらの授業のサポートをしているのだ。

これだけ多くの学校の、そしていろんな学年のクラスへじかに足を踏み入れてみると、東京都23区のど真ん中にある文京区の小学校で起きていることがすべてとは云えないけれど、いまの小学校の子どもたちのことがよくわかって来る。ASD(自閉スペクトラム症)を持つ子どもたち、学校には行けるけれど教室には入れない子どもたち、学校に行けなくて教育センターへ来てプログラミング学習をする子どもたち。文京区の小学校にも礼儀正しくて、前向きで、活発な子どもたちはたくさんいるのだけれど、どうしても目が行ってしまうのはそのような特殊な事情を持つ子どもたちのことばかり。自分の小学生のころとくらべても、そうした子どもたちは増えているのかなあ。それはよくわからない。

そうした目を持ってしまった人間が山崎エマ監督のドキュメンタリー映画『小学校 〜それは小さな社会〜』を観ると、ああ、これは世田谷区立塚戸小学校の持つ良い面を綺麗に描いているなあ、とまずはおもってしまう。そう、どこの学校にもしっかりと課題に取り組む子どもたちはいて、失敗して泣きながらも先生のサポートを得ながら目標をクリアする姿は美しい。そこへ焦点を合わせたドキュメンタリーとしてこの映画は面白かった。そして、この映画の謳い文句にもなった「6歳児は世界のどこでも同じようだけれど、12歳になる頃には、日本の子どもは“日本人”になっている」に表されるような、海外から見ると特異な日本の教育方法をあらためて見つめ直すのには良い映画だとおもう。

でも、おそらくこの塚戸小学校にも、いろいろと複雑な問題を抱えた子どもたちはいて、その方面からのドキュメンタリーもこの映画と一緒に2本立てで観たいともおもってしまった。

→山崎エマ→世田谷区立塚戸小学校の子どもたち、先生たち→日本、アメリカ、フィンランド、フランス/2023→シネスイッチ銀座→★★★☆

エンプティ・スーツケース
監督:ベット・ゴードン
出演:ローズマリー・ホックシールド、ロン・ヴォーター、ヴィヴィアン・ディック、ナン・ゴールディン、ヤニカ・ヨーダー、ジェイミー・マクブレイディ、ベット・ゴードン/声:リン・ティルマン、カリン・ケイ、アネット・ブレインデル、ドロシー・ザイドマン、マーク・ハイドリッヒ
原題:Empty Suitcases
制作:アメリカ/1980

エニバディズ・ウーマン
監督:ベット・ゴードン
出演:ナンシー・レイリー、スポルディング・グレイ、マーク・ハイドリッヒ、トム・ライト/ナレーション:カリン・ケイ
原題:Anybody’s Woman
制作:アメリカ/1981

URL:https://punkte00.com/gordon-newyork/
場所:シアター・イメージフォーラム

ベット・ゴードンの名前はまったく知らなかった。彼女は1970年代末から80年代にニューヨークのアンダーグラウンドで起きた音楽やアートのムーブメント「ノー・ウェイブ」周辺で活動した映画作家らしい。今年、日本でも公開されたドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて』で焦点が当てられた写真家ナン・ゴールディンとの関わりもあって、彼女の長編映画第1作目の『ヴァラエティ』(1983)にもナン・ゴールディンが登場するらしい。

その『ヴァラエティ』の前に撮られた52分の中編映画『エンプティ・スーツケース』と24分の短編映画『エニバディズ・ウーマン』を観てみた。

2つとも長編映画を撮るための習作的な映画で、コラージュのように並べられたシーンの羅列から意味を汲み取るには、もっと彼女の背景や活動のことや問題提起を知らなければ理解することは難しかった。まあ、でも、これでベット・ゴードンのことを調べて、ちょっとでも知識を蓄えて、長編映画『ヴァラエティ』を観に行くのは良い流れだとおもう。

→ベット・ゴードン→→アメリカ/1980 、1981→シアター・イメージフォーラム→★★★