監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ、クラレンス・マクリン、ショーン・サン・ホセ、ポール・レイシー、デビッド・“ダップ”・ジローディ、モーシ・イーグル、ショーン・“ディノ”・ジョンソン、コーネル・ネイト・オルストン、ミゲル・バランタン、ジョン=エイドリアン・“JJ”・ベラスケス
原題:Sing Sing
制作:アメリカ/2023
URL:https://gaga.ne.jp/singsing/
場所:ユナイテッド・シネマ浦和

アメリカのニューヨーク州オシニングにあるシンシン刑務所には、舞台演劇を通して収監者の更生を目指すプログラム 「RTA」と云うものがある。グレッグ・クウェダー監督の『シンシン SING SING』は、実際に「RTA」プログラムによって更生した元収監者を使って、その「RTA」がどんなものかを描いた映画だった。

主人公ディヴァインGを演じたコールマン・ドミンゴはさすがに本当の役者だった。でも驚いたのは、刑務所内で札つきの悪党として煙たがられていた通称ディヴァイン・アイを演じているクラレンス・マクリンが、実際の「RTA」プログラムの卒業生として本人を演じていたことだった。おそらくは実体験をそのまま演じていて、それは演じやすいことなんだろうけれど、それにしても巧い演技だった。他にも「RTA」の卒業生が多数本人役を演じていて、エンドクレジットで紹介される役者が次々と「himself」となっていることに驚きの連続だった。

ディヴァイン・アイ役のクラレンス・マクリンは、英語版Wikipediaには、29歳のときに強盗の罪で17年間シンシン刑務所に服役した、と書いてある。ニューヨークにあるマーシー大学で行動心理学の準学士号を取ったとも書かれてあるけれども、その教育が生かされずに犯罪に手を染めてしまった経緯については詳しく書かれてはなかった。おそらく彼の生活していた環境が、少しばかりの教育だけでは大きな変化をもたらすことが出来なかったのかもしれない。としたら、自分とはまったく違った環境にある人物を演じてみることは、自分を変える何かしらの手がかりを得るきっかけになったのかもしれない。「RTA」プログラムが成功している理由はそこにあるとおもう。

アメリカと日本では犯罪が起こる背景がまったく異なるので、一概に簡単なことを云うことはできないけれども、日本の刑務所もこの「RTA」のような更生を手助けするプログラムを多く取り入れるべきではないかとはおもう。

→グレッグ・クウェダー→コールマン・ドミンゴ→アメリカ/2023→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★☆