スポットライト 世紀のスクープ

監督:トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー、スタンリー・トゥッチ、ジェイミー・シェリダン、ビリー・クラダップ、レン・キャリオー
原題:Spotlight
制作:アメリカ/2015
URL:http://spotlight-scoop.com
場所:ユナイテッド・シネマ浦和

アカデミー賞の作品賞を獲った映画に納得がいかない場合が多い。今回の『スポットライト 世紀のスクープ』も、まあ、それなりに楽しめる映画だけれど、この映画が『マネー・ショート 華麗なる大逆転』や『ブリッジ・オブ・スパイ』や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を抑えて作品賞を獲るような映画にはとてもおもえない。

『スポットライト 世紀のスクープ』は「神父の子供への性的虐待」と云うセンセーショナルな題材だけにすべてを負ってしまってる。「神父の子供への性的虐待」をボストン・グローブの記者たちが、いろいろな障害がありながらも、教会側の隠ぺい体質に切り込んで行って、事実を暴いて行く過程はとても面白い。でもそこが面白いのはあたりまえで、さらにそこから一歩踏み込んだ描写がなければ、さすがアカデミー作品賞を獲った作品だけのことはある、にはならないじゃないのかなあ。

その一歩踏み込んだ描写とは、やはり神父側の描写ではないかとおもう。その描写がないと、記者側の熱意が伝わるだけの映画で、「神父の子供への性的虐待」を暴露するスクープが新聞に発表されたときの緊張感や達成感や記者としての「傲り」に対する苦悩などがグッと伝わってこない。このあたりはちょっとアラン・J・パクラの『大統領の陰謀』をおもいだす。

この映画を観ていて一番驚かされたのは「神父の子供への性的虐待」の発生率の高さだ。神父全体の6%にもあたっていて、ボストンだけでも87人もいる! このことは、ある特定の神父の問題だけではなく、またある特定の区域の問題でもなく、全世界に共通した「カトリック教会側のシステム」の問題であることがわかる。映画の中でも、まるで子供がそのまま爺さんになってしまったような、何の衒いも無くペラペラと過去の罪(とはまったくおもっていないけど)をしゃべる神父が登場して、それが「カトリック教会側のシステム」のすべてを代表しているようにも見えるけど、そこをもうちょっと踏み込んでもらえれば映画としてもっと充実感が得られような気がする。

→トム・マッカーシー→マーク・ラファロ→アメリカ/2015→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★☆