ジミー、野を駆ける伝説

監督:ケン・ローチ
出演:バリー・ウォード、シモーヌ・カービー、ジム・ノートン、フランシス・マギー、アシュリン・フランシオーシ、アンドリュー・スコット、ブライアン・F・オバーン
原題:Jimmy’s Hall
制作:イギリス/2014
URL:http://www.jimmy-densetsu.jp
場所:早稲田松竹

最近はTwitterがあるために見たい映画を見逃すことがだいぶ減ったのだけれど、なぜか、このケン・ローチの新作はすり抜けてしまった。

『ジミー、野を駆ける伝説』は、『麦の穂をゆらす風』でケン・ローチが描いた1920年のアイルランド独立戦争から10年後のストーリーで、いまだに実質的には大英帝国の自治領のままにとどまっている状態のアイルランドが舞台。とりあえずは今の状態を良しとする穏健派と、完全な独立を勝ち取ろうとする急進派との内戦は続いていて、ただ単純にいろいろなことを学べるコミュニティ・ホールを村の中に再建しようとするジミー・グラルトンが、その政治的混乱に巻き込まれて行く過程が面白い。人を数多く集めるスペースを作ると、そこには自然と何かしらの力が発生して、主催者のおもわくとは裏腹に外野からの羨望や嫉妬の目が向けられてしまうのは現在のサイバースペースも同じこと。それを利用しようとする輩も集まってきて、何のためのスペースなのかわからなくなってしまう。

『麦の穂をゆらす風』の中にこんなセリフがあった。

「誰と闘っているのかはすぐわかる。何のために闘っているのかが重要だ。」

この『ジミー、野を駆ける伝説』もそれを引き継いでいた。

ジミー・グラルトンのコミュニティ・ホールを最初に問題視するのはカソリック教会だった。しかし、そこのシェリダン神父に反発するも、擁護派のシーマス神父よりもそのシェリダン神父を慕う父子のような関係性も面白かった。映画のラスト、国外追放になるジミー・グラルトンに向けられる外野のヤジに対して、「少なくともお前たちよりも勇気と知性がある!」と叫ぶのはシェリダン神父だった。

→ケン・ローチ→バリー・ウォード→イギリス/2014→早稲田松竹→★★★★