チリの闘い 第ニ部:クーデター

監督:パトリシオ・グスマン
出演:サルバドール・アジェンデ
原題:La batalla de Chile
制作:チリ、フランス、キューバ/1976
URL:http://www.ivc-tokyo.co.jp/chile-tatakai/
場所:ユーロスペース

1973年6月29日、チリの軍部と反共勢力が首都サンティアゴの大統領官邸を襲撃する。『チリの闘い 第ニ部:クーデター』はここからはじまる。しかし、まだ時期尚早とみた将校が多かったためかこのクーデターは失敗に終わる。

この最初の小規模なクーデターからピノチェト将軍がCIAの全面的な支援の下にクーデターを起こすのが1973年9月11日。そのあいだの約2ヶ月間の動向がこの『第ニ部:クーデター』に描かれていて、すでに史実としてチリのクーデターが成功することを知っている我々は、この2ヶ月のあいだにアジェンデ大統領が反共勢力に対して何の手だても出来ないままにジリジリと追い込まれて行く様子を暗澹たる気持ちで見て行くことになってしまう。それもはじめのころにはピノチェト将軍がアジェンデ大統領側の要人として加わっていたりするものだから、ますます大統領側の情報収集能力の乏しさに陰鬱な気持ちでもって映画を観ていかなければならない。

ソビエト連邦を代表とする社会主義国家は、社会主義体制を維持して行くための秘密警察が発達してしまって、民衆のための社会主義国家と云うよりも恐怖政治で民衆を従わせようとする全体主義国家のような様相を呈してしまったところが一番の問題だったのだけれども、でも、アジェンデのようにあまりにも社会主義の理想を追い求めてしまうと、秘密警察とまでは行かないまでも様々な情報を収集する機関に予算をつぎ込むことが出来なくて、反共勢力に対する抵抗ができないままに簡単に転覆させられてしまう。

映画のラストに流れるアジェンデ大統領の辞世の句のような最後の演説はその理想に満ちあふれている。

このあと、コスタ=ガヴラス監督の『ミッシング』に描かれているとおりに、左派弾圧の恐怖政治がはじまることがわかっているので、この演説の「歴史は我々のものであり、人民がそれを作るのです」の部分はことさらに辛い。

→パトリシオ・グスマン→サルバドール・アジェンデ→チリ、フランス、キューバ/1975→ユーロスペース→★★★★