チリの闘い 第三部:民衆の力

監督:パトリシオ・グスマン
出演:サルバドール・アジェンデ
原題:La batalla de Chile
制作:チリ、フランス、キューバ/1976
URL:http://www.ivc-tokyo.co.jp/chile-tatakai/
場所:ユーロスペース

『チリの闘い』の「第三部:民衆の力」は、「第一部:ブルジョワジーの叛乱」や「第ニ部:クーデター」でも描かれていた労働者側の運動の部分だけを再構成してまとめたかたちをとっている。

1972年10月にアメリカが主導した右派の策謀によるトラック業者のストライキによってチリ国内の物流がマヒし、さらに商店の多くが商品を流通させない右派の策略に加担することによって、日用品や食料品が手に入らなくなった一般大衆の生活は大混乱に陥ってしまう。しかし、このことによってチリ各地の労働者たちに組織化する機運が高まり、地域労働者連絡会や地域部隊が結成されて行く民衆の労働運動がこの「第三部:民衆の力」の主題で、この労働者の運動の部分だけを切り取って見ると、アジェンデ政権とリンクした彼らの労働運動がチリを社会主義国家として成長させて行く過程のように見えてしまう。

ところが、実際にはそうならなかった。

そこには「軍部のコントロール」と云った労働運動とはかけ離れた次元の部分があって、その大きな力によって大上段から押さえつけられると大衆の労働運動なんてものは簡単に消し飛んでしまう。そのような空しい事実は史実としてわかってはいるけれども、でも、パトリシオ・グスマンが「第三部:民衆の力」として大衆の労働運動の部分だけをまとめたのは、やはり、そのような希望の萌芽が1973年のチリには実際にあったのだと強調したかった所為だとおもう。『チリの闘い』を観終える余韻としてはこれで正解だったとおもう。

→パトリシオ・グスマン→サルバドール・アジェンデ→チリ、フランス、キューバ/1975→ユーロスペース→★★★★