監督:ルイス・ブニュエル
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、フェルナンド・レイ、フランコ・ネロ、ロラ・ガオス、アントニオ・カサス
原題:Tristana
制作:フランス/1970
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場所:角川シネマ有楽町

先日のシアター・イメージフォーラムでのルイス・ブニュエル特集上映に続いて、角川シネマ有楽町で開催された「華麗なるフランス映画」特集上映でのラインナップの中にルイス・ブニュエル監督の『哀しみのトリスターナ』があったので、それだけを狙い撃ちで観に行った。

『哀しみのトリスターナ』はシアター・イメージフォーラムで観た『ビリディアナ』に全体的な雰囲気がそっくりだった。それもそのはず、映画の原作者は両方ともベニート・ペレス・ガルドスだった。ベニート・ペレス・ガルドスはスペイン本国では国民的作家と讃えられているそうだけれど、英語圏ではそれほど読まれていない(Wikipediaより)そうで、邦訳された作品は「トラファルガル」(朝日出版社、1975年)、「マリアネラ」(彩流社、1993年)、「フォルトゥナータとハシンタ:二人の妻の物語」(水声社、1998年)、「ドニャ・ペルフェクタ 完璧な婦人」(現代企画室、2015年)くらいだそうだ。

ただ、2つの映画がそっくりに見えたのは、年老いた男が若い女に手を出してしまう部分だけで、その年老いた男を両方ともフェルナンド・レイが演じているからだった。ラストに向かって反宗教的な描写を見せて行く『ビリディアナ』に対して、さらに年老いた男と若い女のあいだの愛憎関係に焦点を当てているのが『哀しみのトリスターナ』だった。年老いたフェルナンド・レイに従属的に支配されていた無垢なカトリーヌ・ドヌーヴが病気で片足を切断することをきっかけに、かえって介護されている女が次第に歳を取って衰えを見せる年上の男を支配して行く逆転現象がとても怖かった。カトリーヌ・ドヌーヴの女優としての資質は、人間としての得体の知れない怖さを見せられるところだなあ。これが中原昌也が云うところのカトリーヌ・ドヌーヴの「うざさ」につながるのか?

→ルイス・ブニュエル→カトリーヌ・ドヌーヴ→フランス/1970→角川シネマ有楽町→★★★☆