山形国際ドキュメンタリー映画祭の3日目は、台風19号の影響で山形新幹線も仙山線もすべて運休。街は閑散としていた。

●バフマン・キアロスタミ 『エクソダス』(イラン/2019/80分)
バフマン・キアロスタミ監督はアッバス・キアロスタミ監督の息子さんだった。この映画を観終わるまで、まったく知らなかった。バフマン・キアロスタミ監督が撮った『エクソダス』はドキュメンタリーではあるけれども、父親の映画と同じように人物に向ける視線はしっかりとしていて、とても面白い映画だった。それにしてもアメリカによるイランへの経済制裁が、アフガニスタンから出稼ぎに来ていた人びとにも影響を与えて、大量の帰国者を出す騒動があったなんて、どうして日本のマスコミは報道しないんだ! と云いたくなるような。(云いません!)

●森井輝雄『白茂線』(日本/1941/21分)※不完全版
●ヴィクトル・トゥーリン『トゥルクシブ』(ソ連/1929/無声/74分)
1929年に作られたソ連のプロパガンダ映画『トゥルクシブ』は、当時のアメリカや日本の映画製作にも大きな影響を与えたそうだ。その『トゥルクシブ』の延長線上にある映画として、同じ鉄道施設という内容から『白茂線』が同時上映された。以前に、自転車に詳しい人が、自転車はすでに1900年ごろには今とほとんど同じ構造を持っていた、と云っていたことをおもい出して、それなら映画もサイレントの時代にすでに映画の技法がすべて確定していたと云っても過言ではないんじゃないかと、そんなことを考えたことがあった。モンタージュ技法のセルゲイ・エイゼンシュテインを生み出したソ連の映画人として、そしてハリウッドでシナリオライターや俳優をしていたと云うヴィクトル・トゥーリン監督の作る映画は、今観てもしっかりとした映画だった。当時の人たちがお手本にしたのもわかるような気がする。

今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭はすっかり台風の影響を受けてしまった。でもそれはそれで深く印象に刻まれたので、今回観た映画は、特に『死霊魂』は台風19号と共に観た映画として忘れないでしょう。