ボーダー 二つの世界

監督:アリ・アッバシ
出演:エバ・メランデル、エーロ・ミロノフ、ステーン・ユングレン、ヨルゲン・トーソン、ヴィクトル・オケルブロム、ラーケル・ワームランダー、アン・ペトレン、キェル・ウィルヘルムセン、マッティ・ブーステット
原題:Gräns
制作:スウェーデン、デンマーク/12018
URL:http://border-movie.jp
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町

トーマス・アルフレッドソン監督が撮った『ぼくのエリ 200歳の少女』はストックホルムを舞台とした吸血鬼の映画で、北欧と云えば寒さから来る活動量の少なさがどこか静かな落ち着きを見せるので、その落ち着き払った状態が不気味さや得体の知れなさ、ひいては「死」をも連想させてしまうことから、ヴァンパイアが存在する場所としてはこの上ない舞台設定だった。それに北欧と云えば「指輪物語」や「マイティ・ソー」のベースともなった北欧神話があって、異質なものが存在する世界としてはぴったりの場所だった。

その『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者ヨン・アイビデ・リンドクビストが書いた小説をもとに映画化した『ボーダー 二つの世界』は、もし北欧に伝わる妖精「トロール」が我々の世界に存在しているとして、「トロール」が自然界と共存している動物に近い存在であるとするならば、自然界と人間界の「ボーダー」にいるのが「トロール」だった。だから、そこの「ボーダー」には、自然界にとって驚異となる人間たちを排除しようとする「トロール」がいて、すでに特異能力を買われて人間社会に同化している「トロール」もいて、この二人の「トロール」が出会って、惹かれ合いながらも、人間社会に対する認識の違いから最後には反発し合う様子は、我々の世界を暗喩している映画のようにも見えてしまった。

最近の日本での自然災害は、人間界にとっては災害だけど、自然界にとっては害虫である人間を排除する動きでしかなくて、そこの「ボーダー」に立った時にどのような行動を起こせば良いのか、なんてことをおもいながらこの映画を観てしまった。

→アリ・アッバシ→エバ・メランデル→スウェーデン、デンマーク/12018→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★☆