監督:エミリオ・エステベス
出演:エミリオ・エステベス、アレック・ボールドウィン、クリスチャン・スレーター、ジェフリー・ライト、ジェナ・マローン、テイラー・シリング、ジェイコブ・バルガス、ガブリエル・ユニオン、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、リチャード・T・ジョーンズ
原題:The Public
制作:アメリカ/2018
URL:https://longride.jp/public/
場所:新宿武蔵野館

子供の頃からそんなに本を読む方ではなかったので、図書館にはあまりお世話にはならなかった。ところが、インターネットで著作権の切れた作品を公開するプロジェクトに関わってからは、やたらと図書館へ行くようになった。どこそこにあの本があるとわかれば、東京23区のあちこちの図書館に自転車で出向いたものだった。

そのあちこちの図書館へ行って気づいたことの一つに、新聞や雑誌を読むコーナーにはいつもいろんなタイプの人がくつろいでいるものなんだなあ、と云うことがあった。お年寄りや、何らかの理由で会社に勤めていない人、ちょっとホームレスっぽい人など。図書館は本を借りたり読んだりする場所だけではなくて、自分の居場所として、時間をつぶす場所として機能していたことに驚いた。

それはアメリカのシンシナティでも同じだった。エミリオ・エステベスが主演し監督もした『パブリック 図書館の奇跡』は、お年寄りやホームレスたちが毎朝、図書館の開館を待ちわびるシーンからはじまる。トイレはみんなの身繕いの場でもあり、コミュニケーションの場でもあった。パソコンは時間をつぶすのに最適のツールだし、司書に対して無理難題を質問する楽しみもある。

そして、ホームレスの凍死者が増える真冬のシンシナティで、いつものように図書館に集うおなじみのホームレスたちは、外に出ると死ぬ恐れがあるとして閉館後も図書館に籠城してしまう。過去にホームレスになった経験もある図書館員のエミリオ・エステベスは、彼らと一緒に籠城する覚悟を決める、というストーリーの流れの映画だった。

図書館は公共の場として位置づけられていて、おそらくは法律で融通の効かない状態に守られているのだろうから、そこが市民にとっての最後の牙城にになることはありえないのかもしれない。でも、この「知の集積場所」は、その集積の結果として人権においてもやさしい場所であって欲しいような気がしてしまって、ホームレスが最後の砦として図書館に籠城するのは正しい行為に見えてしまった。

映画としての『パブリック 図書館の奇跡』は、伏線のはり方とか、ステレオタイプの悪役の配置とか、教科書どおりの映画ではあったけれど、図書館のあり方について考えさせられる点においては良い映画だった。

→エミリオ・エステベス→エミリオ・エステベス→アメリカ/2018→★★★☆